秋桜の夕影に/新作短歌30首
戦火に喘ぐ人々を想うと心が重く、歌心も滞りがちになりますね。
心に重くのしかかる事件の続発に、歌心も滞りがち、花鳥風月どころか・・・。
老いし妻に申し訳なし 我が性(さが)のせいで
働かせるめに あわせしまいて
日毎夜毎 ニュースの画面に耐え切れず
妻共に言葉を失う食事のひと時
灼熱の 夏乗り切りぬと思いきや
秋の半ばの この暑さよな
我が家の前の 畑地消え去り秋の虫
その鳴く声も何処かに去り
今のところ 病を持ちし近隣の
友皆揃い 安堵の毎日
友の庭 若木の伊予柑は鈴成りに
こう色づきては摘心しがたしと
罪もなきに 重き瓦礫の下敷きに
幼き子らの何と痛まし
慈悲深き仏よ 願わくばこの子らを
平和な来世へと導き給え
祈るほか 手立ては無きとは情けなや
苦しむ人をば救えぬ虚しさ
なあカラス この人の世をどう思う
食うに困りて知らぬは人など
朝夕の 暑さ収まり見回せば
無残に痛んだ鉢の木々たち
ある友の 元気になるは嬉しくも
その気ぜわしさは昼寝妨げ
後始末 生きてるうちにと我が妻は
日がな一日二階に籠もり
病い故 散歩の友は今はもう
ついて行けぬと ただ一人行く
近隣の若妻可愛や 秋風の中
鉢花の世話に我を忘れて
次々と建つ家 その速さに惑わされ
昔の景色が思い出せぬほど
自治会の存続危ぶむも無理はなし
隣の人をも 知らぬ今日
柿食うは今はクマなり親子ずれ
食うに困るは人だけにあらず
秋風に揺れるコスモス華やかなれど
人の心に吹く風は今
世の中も 人の心も移りゆく
枯葉の浮かぶこの流れの如くに
太古より 群れで暮らせし我が種なれば
他を受け入れるは難きことかも
色恋の 艶を離れては味気なや
せめて心に佳人を抱かん
一人故に 酒酌み交わしたやと思うても
見つからぬわさと テレビを相手に
近隣の 誰一人失いたくはない友なれど
その時を想えば 我如何にせん
何事も なく語り合えるこの時を
無上の幸と嚙み締めて さあ友よ明日も
今は秋 風はそよぎて誘うれど
夏の体は動こうとせじ
風爽やかに 晴し朝
元気に響く 子供たちの声
旅の歌 乙女の澄しその声は
わが重き心に吹く秋風のよう
キンモクセイの 香りに酔うたか
コスモスの花 風にゆうらり ついに歌いぬ
秋の日差しはカーテンに優しく
頬杖をつく僕の耳に遊覧飛行の音
隣人の妻 病癒えたか 止め置きし
自転車見当たらぬ 月曜の朝
☆今日やっと気を取り直して鉢の土を入れ替えましたが、
もう11月なのにまだ夏日が続くとか、皆さんも体調を
崩さないように気を付けてくださいね。(いずみ)
秋桜の夕影に/新作短歌30首