号外
ほとんど同じ顔にしか見えないこどもたちに
僕は何かを教えていた
架空の都市にいて
だけど教えていることはちゃんと真実
希望の持ち方とか
勇気の使い方とか
教えるべきことは本当に山ほどあったから
しゃがんでいる時間がいちばん幸せ
言った言わないの話が頭上を飛び去っていく
いつしか声だけになってしまったこどもたちを
憐れむ必要は特にないと思う
順番だからそうなっただけのこと
白紙の号外が宙を舞っている
この街の人間は全員ミニマリストでリアリストだから
誰ひとりそれを手に取ろうとしない
仲がよかったはずのミラーボールですらどこかよそよそしく
光りながら「ごめん」って謝ってくる
雨がミラーボールの表面を滑って落ちていくのは
この上なく美しい
許すための舌を僕は持ち合わせていない
生きるのが下手くそなままでいいなんて
僕はどうしても思えない
他人に厳しい僕を
誰か視ていてくれ
号外