自由と朝の施餓鬼

紙を失くした

記された文字を失った

昨日を失くした

そこにいた人々を

受けてきた想いを失った




大切な残り香は

車の後部座席に佇む

箱の中の写真は

知らない棚に眠る




鼠は息絶えて

壁の噛み跡は消えていた

さようなら、全面の識者

良い夢を見よう




良い夢を見よう。




心地よい夢の中でまた

努力と精一杯の人生を帯びた

体を取り巻く温い毛布が

失った熱を取り戻す

人熱を思い起こす

君の寝相も海に浮かんだ

象が地面を鳴らしている

ラッパ隊のお出ましだ




おめでとう!




君は確かに存在した

理想に根差す一輪の




見てよ

高い空

雲ひとつない

あの頃と同じ

あの頃と同じ。

自由と朝の施餓鬼

自由と朝の施餓鬼

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-10-17

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