無菌室

雑音さえない無味無臭の檻に
囚われて
間近で見てもなにもない
強制的な余生となった
単為生殖する
藻やクラゲやプランクトンたち
みんな生きる意味なんてない
何度目のデジャブか
また彼女は泣いている
以前にも
どこかで見捨てた子猫に似ている
バラバラになって
心を盗んだ
身体欠損の蟻たちも列をなして
配食を心待ちにしている
それは食べるたびに
何かを失わせるように
薬の作用でぼんやりと満たされる
水の中で吐いた
泡だけが残された僕らしさだった

無菌室

無菌室

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-10-12

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