「影」

 日の照る真昼時
 人は南に向かって進む
 影を長く引いて
 黒い影は身の丈より
  高く
  広く
  そして深い
 どんなに口で喚こうと
 影は何も語らない
 どんなに表情筋を豊かにしても
 影は顔を覗かせない
 暗がりの中ぼうと佇む
 あの能面の白い姿を思わせる
 道端の白妙菊を思わせる
 光ある所に影よあれ
 影ある所に心あれ
 情の涙よ涸れるなかれ

「影」

「影」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-10-08

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