僕が生まれたとき、両親はとても喜んだそうだ。

僕の名前は父親がつけてくれた。


生まれたときは身体が小さくて、夜泣きもひどかったという。

よく母親が夜に散歩にいったそうだ。

たまに両親一緒に散歩したそうだ。


両親が共働きだった僕は保育園に通っていた。

迎えはいつも父だった。

車の中で、お気に入りのB'zの曲を流している父をいつもみていた。


小学生になった。

縁に恵まれて、友達もたくさんできた。

その頃からの将来の夢は

「お父さんになる」

だった。


小学生の僕にとって父は自慢の存在だった。

父は欲しいゲームを買ってくれて一緒にプレイしたり、キャッチボールをしたりした。

わがままをいっても嫌な顔をしたことがなかった。

母が厳しい人で、成績が悪かったりすると怒られた。

泣き虫ですぐ泣く子だった僕。

いつも父が僕のことをかばってくれた。

慰めてくれた。

「お前はがんばってるよ」

その言葉を聞くたびに僕は元気を取り戻していた。


この頃の僕はすごく母が嫌いだった。

わがままで怒ってばかり。 

父が怒られているところを見ると自分が怒られているときよりも腹が立った。

僕をかばったせいで父が怒られているのを見ると、とにかく悔しくて。

悔しくて、悔しくて。 また涙を流していた。

なんで僕の親は仲良くできないのかと毎日毎日思っていた。


一度だけ、小学生のときに喧嘩をしたことがある。

将来の夢がお父さんって書いているだからだろう。

「将来の夢がお父さんなんてくだらねー」

たぶん軽い気持ちでいったんだろう。

けど、僕はそいつのことを許せなかった。

父を馬鹿にされた気がしたからだ。

正直、殺してやろうかと思うくらいムカついた。

気づいたら殴っていた。

そいつは抵抗したが、殴り続けた。


結局先生が止めにきて、喧嘩は終わった。

こちらが悪いと僕の両親と僕は相手の家にいって謝罪をした。

向こうも事情を知ってか、あまり文句もいってこなかった。

その日、初めて父に怒られた。

なんだか、少し裏切られた気持ちになった。

けれど、父は最後にいった。

「俺のことはいいから。喧嘩をして一番つらくなるのはお前なんだから。」

父が泣きながらいってるのを僕は黙って頷いてた。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2013-01-10

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted