雨やどり
ざーざーざー
ぽつりとしたたる、雨に比例して、僕は、だんだんと息あらくなる。
濡れたTシャツ。濡れたズボン。
雨水を大量に含んだ前髪が、まぶたを覆う。
ああ。。。
僕は、今も、こうしてポストのある、文房具屋の前にいる。
子供の頃から、この店には、週刊誌が並ぶのを楽しみに、足しげく通っていた。
店の前に珍しくショーウインドウが置かれ、通りから、今日入った新刊を眺めながら学校へ向かう。
そして、週刊誌が入荷してると、急いで、帰宅し、母からお駄賃をもらって、ジャンプを買って、校庭の階段で、ひとり漫画にあけくれる。
母は、よく、200円でも一か月だと800円。コロコロも合わせると、1300円にもなるわよ。と、僕にお金の大切さを何かあるごとに教えてくれた。
雨の、降った日は、ジャンプが、歩きながら読めなくて。
急いで、傘の中で、今週号の内容に、胸うつろいながら、歩いた日々。
赤いポストに気づいたのは、僕が大学生になってからだった。
あ。そういえば、なんて、文房具屋の前に、こんなに堂々とポストがあったのに、気づく。
ハガキここで出したらいいじゃん。なんて。
わざわざ下の郵便局まで行ってた。
今は、ショーウインドウに週刊誌は置いてないけども、あの頃の気持ちに、
雨が降って、学校の前を通ると、
その文房具屋のショーウインドウを眺めながら、また、僕は雨宿りをして、歩いていくのだった。
雨やどり