17 - 1 - 許。

全て終えることを決めた。
大事なのは、まず即座に、決めたその瞬間から、後戻りの出来ぬよう消していくことだった。
歩いた道を消していく。
思えば、いつも捨て切れなかった。消し切れなかった。
大切が過ぎたのだ。
心から全てを引き剥がすことは不可能だった。
どれだけ諦めた後も、今も、思い出として閲覧出来る範囲は残していた。
そう。それらを動かすことはきっと出来ない。
だから、ただただ現実的で消極的で、何ものも、厭世すら持ち込まれない原初的なものの消却をしていく。
いくつもある、摩擦に屈する慣性とは異なる、破られぬ確固たる決め事を消すのだ。
今までの常たる前提を。
一度始めれば、それは同等量に反転し破られぬ免罪符となり、それと同時に、強く強く、私を縛ってくれるだろう。
死を遂げる為の、決め事を破り作った決め事だ。
私はそれを守ることが出来る。
幾重にも複雑に不要に、けれども確定される為に大切な手順で、そうすることでしか選べなかった。
生きられなかった。
逆説を繰り返し、これが最後だ。
もう迷わなくていい。
迷っても許される。
選び、決まった。
歩き始めた。


何も残せない。
何も叶えないことが決定した。
けれど、けれどと、
幾つかのことに揺らいだ。
そうなることはわかっていた。
今まで何度繰り返したことか。
きっと本当は、いつも少しだけ曳かれているのだ。
多くの正しさがあるだろう場所へ。
知識が選択肢となる場面に幾度と遭遇した。
明暗は、いつもとは逆であろうと、私はいつもそうだ。
どこまでも中途半端。
ひとりでは何も選べない。
故に。
残りの手順は遅々となるだろう。
けれど大丈夫だ。
許せる。
ゆける。
誰へも寄らず、確実に歩ける。
もう戻れないのだから。

17 - 1 - 許。

17 - 1 - 許。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-29

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