マツケン奮闘記・・?!⑦
ほんとなら、真っ直ぐ家帰って飯に有りつけるはずの俺たちは、帰り途中、偶然にも坂井先輩と出会った。
まっそれはいいんだけど、なんとも先輩の強引とも言える誘いに、俺はどうにも断わる口実が見つかんなくて、
何思ってか物好きにも俺は、西田を先に帰して先輩に付き合うことにしたんだ。
(何やってんだかなぁ俺・・)
そして更にそこからが最悪で、何の腐れ縁なんだか俺は、よりにもよって馴染みのカフェなんぞに、一日の内に、二度までも
来る羽目になって、何かも最悪って感じだよ・・。
けど、どうみても飯とは無縁のこの店ご自慢のコーヒーとやらを、何気に惜しげもなく頼んじゃってる先輩は、なんか
満足げな顔しちゃって、何考えてんだか椅子にソックリ返ったままで押し黙っちゃってるんだよな・・。
(どうしちゃったんだか?まったく、意味っ分かんねぇよ・・)
「あのー?先輩?・・」
と、声掛けた途端、何を思ったんだか急に体を起した先輩が、俺の顔をマジマジと見て二ヤッと笑った・・・。
(な、なんだよ、急にー?気もいなー?・・・)
とか思いきや・・・。
「なあマツケン?お前・・俺と一緒に、東京行く気ないかぁ?」
「はぁっ?なに突然?って言うか先輩、小池と行くんじゃなかったですかぁ?」
って聞くと、これもまた何か、そっけない返事で・・・・。
「ああ、それかぁ?それなら小池には断わったんだ、別に問題ないだろ、なぁ?それよりどうよ、お前にその気が有るなら俺んとこ
の仕事手伝えるようにしてやってもいいんだぞ?まあ今すぐ決めろってのは、ちょっと無理だろうから、そうだなぁ、俺も向うに
帰んのがちょっと伸びそうなんだ、だから来週辺りにでもまた会うか?なぁマツ?そん時までに考えといてくれよ、なっ?」
(なって言われてもなぁ、そういやぁ小池の奴、断わられたって言ってなかったろ、ってあいつ嘘、言ってたのかぁ?あ、まいいや・・)
「まあ、とりあえず考えときます、そんじゃそう言う事で先輩?俺そろそろ帰っていいですか?ああぁお代は俺が出しときますんで、
そんじゃすんませんけど、お先に失礼しまーす?!」
とまあ、俺は先輩の返事も聞かず、そそくさと店の勘定済ませてとっとと店を出た。
もう脇見なんかとんでもない話しで、我が家へとまっしぐらだ・・・。
その頃、我が家へと先に帰り着いてた真子は、帰った早々から、もう携帯片手に長電話の真っ最中みたいだ・・・。
『あっねぇ真子?奈津美さんってさぁ?お兄さんと付き合ってたりする?』
「ええっ?それはどうかなぁ?あたしはそこまでは知らないのよねぇ?でも奈津美さん、他に居るんじゃないのかなぁ?多分」
『はぁ?なにそれ、随分曖昧じゃないよー?まっ別にいいけどね・・でも奈津美さん、ちょっと気になるよねぇ?』
「あぁんん、そうねぇ?でも美穂?やっぱりお兄ちゃんは、辞めた方がいいんじゃないのー?」
『えーっ何でー?いいじゃん、凄い楽しい人だしさぁ?それに優しいじゃん、あっ言っちゃった・・とにかくー?いいの?!
あたしはもう決めたんだからぁ!でも真子?前にも言ったと思うけど絶対この事は誰にも内緒だよ?もう約束だからねぇ?』
「それはもち、分かってるわよ、誓って誰にも言いません!お兄ちゃんにもね?!それでいい?」
『よし!何てね?まっいいわ?それじゃまた明日学校でね?じゃぁね?』
「うん、それじゃ明日、おやすみー?!」
(それにしても、美穂がお兄ちゃんだなんて驚きだなぁ?あっそう言えば、奈津美さん大丈夫かなぁ?ああもう、こんな時
お兄ちゃん早く帰ってくれたらいいのにー?こう言う時に限って遅いんだからぁ?!お兄ちゃんのバカ!)
とまあ、なんかやたら一人事をぶつぶつとぼやきながら布団に潜り込んでた・・。
そして翌日の夕刻、仕事帰りなのか兄貴は、何気に一人カフェに来てた・・・。
(まっ居る訳無いのは分かっっちゃいたけど、やっぱり俺とは無縁の人なのかなぁ・・まっいいさ・・・さてと帰るか・・)
と、30分たらず、コーヒー飲みながら居坐ってた兄貴は、レジへと歩き出した。
と、丁度その時、奈津美と姉の美由紀は、祖母の見舞いの帰りなのか、二人揃って店へと入ってきた・・・。
そしてレジに居た兄貴に気づいた奈津美は・・・。
「ああ、お兄さん?!あっあの、松岡君のお兄さん、ですよねぇ?あ、あのあたし前にお会いした藤田奈津美って、あの
マツケン、あっいえ松岡君の同級生なんですけど、覚えてますかぁ?」
そんな奈津美に兄貴は、面喰ったのか素っ頓狂な声で・・・。
「ええっと・・・あ、ああー?あの時のー?ああっそうだよねぇ兼太の・・ほんと偶然だなぁ?・・あ、あれ?今日は・・」
とかって奈津美のすぐ後ろに居た美由紀さんに目が入ったら、何故か兄貴は目を丸くして、言葉に詰まってた。
すると美由紀さんは・・・
「あのー?もし宜しかったらご一緒しませんか?こんな処じゃなんですし、ねぇ奈津美?いいわよねぇ?」
「ああ、そうよね?あの好かったら、少しお話ししていきませんか?あたしもお話ししたい事が有るんですけど、急いでます?」
「ああ、いや、別に急ぎの要は無いいんだ・・あっそれじゃ遠慮なくご一緒させて貰おうかな、それじゃお先にどうぞ?」
と、その時兄貴・・・。
(夢じゃない、これは夢じゃない、現実だよな・・やっと会えた、兼太?お前が仏様に見えるよ、サンキュな?)
とか、なんか俺を仏さんにして、あがめちゃってる兄貴は、なんとも鼻の下が数センチは延びてしまったようだ・・。
《ってか、俺を仏になんかすんなっての?!まだ死んでねぇよ・・》
何気に会計済ませてた兄貴は、再度、舞い戻って奈津美たちと隅のテーブル席に着いた。
すると奈津美は・・・
「あ、あの?昨日の事、彼から聞いてると思いますけど、えっと、あの、ありがとうございました。本当は彼に会って、ちゃんと
お礼しなきゃいけないんですけど、中々会う切っ掛けが掴めなくて・・マツケン、っじゃなくて松岡君には、ほんと迷惑かけちゃって、
あたし・・すみませんでした・・」
(はっ?何の事だ・・あいつなんかしたのか・・まっいいか・・)
「ああ、悪い、昨日は、俺はあいつと顔を合わせてなくて、何も聞いてないんだよ、悪いね?なんたってあいつ昨夜は遅かったようで、
でも、あいつでもそれなりにお役に立てたんなら、俺はそれで十分ですよ、それにあいつ・・ああ、まっそれはどうでもいいかな・・」
(なに言ってんだよ俺はー?なに焦ってんだか、落ち着けー!落ち着け俺ー?!・・)
けど、そんな兄貴に何処か驚いた顔した美由紀さんは・・・
「あの?違ってたらごめんなさい?あの貴方、このカフェによく来てませんでした?ええっと、あの頃は確か、まだあたしも高校の時で
あぁっそうよ、あの頃よくここ、ここのテーブル席で、そうこの時間帯に決って独りで来てたわ・・そうでしょ?」
と、なんか興奮気味に乗りだした美由紀さんに、奈津美が割り込んだ・・。
「あっもうお姉ちゃんたらー?!失礼でしょう?!急になに言い出してるのよー?」
「ああっ、そうよね、すみません、勝手な決め付けしちゃって、でもよく似てらっしゃるから、つい、ねぇ?・・あっほんとすみません?
あたしの勘違いですよね、すみません忘れてください?」
そん時、何気に内心動揺しまくってる兄貴は・・・。
「ああ、いえっ?勘違いなんかじゃありませんよ?でもよく覚えててくれましたねぇ?正直嬉しいです。でもあの?お二人は姉妹?ですか?」
「あっはい?!ああでも、ほんとにあの時の面影、変わってないですよねぇ?ちょっと驚きました、あの聞いてもいいかしら?もうご結婚は
されてるんですかぁ?」
「ああ言えっ?まだ独身ですよ、それに相手も居ませんから、あっいや余計な事でしたすみません?それでそちらはもう・・」
「ええっ?あたしですかぁ?あいにくあたしもまだいなんです、いいお相手がねぇ・・あら嫌だ、ごめんなさいねぇ?・・」
とまあ、何か知んないけど、お二人の世界に入ってしまったようだ。
けど、そんな二人に圧倒されてか、奈津美は・・・。
(まったく何二人で盛り上がっちゃってるのよぉ?もうお姉ちゃんがいると、いっつもこうなっちゃうんだもんねぇ?でもお姉ちゃん、
彼氏ほんとに居なかったんだ?まっいいけどね、それにしても意外と広いようで狭いわよねぇこの街って・・)
その頃、俺はバイトが終わってやっと我が家に着いたとこだ・・・。
何気に今日は、久しぶりに自分の時間が持てそうな予感ってのが、たまんなくワクワクするよ。
なんかもうバタバタし過ぎちゃって、ちょい俺の頭ん中、パニクってるからな・・・。
とか思いつつ・・・。
「ただいまー?!」と、俺が靴を脱ぎかけ寸前、またしても駆けだして来たのが真子だ・・。
「お帰りー?今日は早かったねぇ?」
「ああ、たまには早く帰んないとな、俺の身が持たねえしさ、ああ、昨日は悪かったなぁ?まっまた今度機会あったら行こうなっ真子?」
って言うと真子は・・・。
「うん、楽しみにしてるよ、あっ処で奈津美さん、大丈夫だったの?」
「ああ、心配ないよ、それに奈津美じゃなくて祖母の方だったからさ?まあ命には別条問題なさそうだし、ほんと一安心ってとこだな」
って言いながら俺は、部屋へと向かってるはいいんだけど、何故か俺のうしろから真子の奴、一緒になってくっ付いてくんだよな。
(なんでー?何処までくっ付いてくんだぁ?)
「おい真子?お前何処までくっ付いて来るつもりなんだよ?いい加減自分の部屋戻れ?俺これから着替えんだからさぁ?分かったか?」
って言うと、なんか、いかにも困ったって顔して俺の顔睨んでやんの・・。
(何なんだよまったくー?勘弁してくれよなぁ)
すると真子・・・。
「ねぇ?あとでいいからさぁ?ちょっとお話ししない?」
「はぁ?何で?何かあんのかぁ?ああ、まいいや、じゃぁ後でな?」
「うん!ありがと?それじゃぁ後でね?」
とか言っちゃって、訳わかんないんだけど、真子の奴スキップしながら自分の部屋に入ってった。
(何なんだよあいつはー?可笑しな奴・・まっいいけど・・)
そんな俺とは無関係なご様子の真子は・・・。
(よしっと!聞いてみよっかな、美穂のことちょっとはお応援してやらなきゃ、大分お熱上げてるようだしね、それに奈津美さんの
事も聞いてみなきゃ、あたしが困るんだもんね、しょうがないか?・・)
その頃兄貴達は、まだカフェで盛り上がってた・・。
けど緊張気味の兄貴は・・・。
(まだ名前聞いてなかったなぁ、でもなんて聞きゃあいいんだぁ?参ったなぁこういう時、兼太がいてくれりゃあ・・)
と、その時、店の扉にぶら下がった鈴がカランとなってお客が入ってきた。
すると・・。
「あれ、奈津美ー?ああ、どうも?あっ悪いな?処でお前、小池何処行ってるか知らねえかな?」
とかって声掛けて来たのは、桜井だ・・・。
「ええっ?なに美香がどうかしたの?」
「ああいやぁどうもさ?昨日から家に帰ってないらしいんだよなぁ、あ、まっいいや悪いな?どうもすみませんね?じゃな?」
「ああ、ちょっちょっと待ってよ、桜井君ー?あっもう、何なのよー?ちゃんと説明しなさいよねぇまったく・・」
(何よ美香、どうしちゃったのよ・・、何か有った訳?ああもうどうしたら・・あっそうだマツケン・・あっでも・・)
すると兄貴は・・・。
「あの奈津美さん?心配なんじゃないのかな?もし何なら、弟に、あっいや兼太に電話入れてみようか?あいつならなんかしら
知恵貸してくれるだろしさ?あいつバカだけど、頼りにはなると思うよ?」
《誰がバカだよ、誰がー?まったく余計なお世話だよ・・》
すると奈津美は・・・。
「ああそうですね、すみません?余計な気い遣わせちゃって、それじゃぁお言葉に甘えちゃおうかな?」
で、その頃俺はと言えば、真子のなんの話しだか知んない話しに付き合いだしてるとこだ・・。
「で?何なんだよ、話したい事ってさぁ?」
「そんな、つんけんな言い方しなくてもいいじゃない、何かそんな言い方されちゃったら何も言えないじゃないよー?」
(ああもう面度くせぇなぁ?まったく細かすぎだっつうの・・)
「分かったよ?それじゃー?ああもう面度くせえ、なに?なんか有ったのかぁ?美穂ちゃんと喧嘩したとかさ?ああ待てよ?
何、西田・・」
と、まだ言いかけなのに真子の奴が怒りだした。
「もうお兄ちゃんっ?!もうなんでそうなるのよー?まったくー?訳わかんない?!」
「だからさぁ?何なんだよー?お前が言わないからだろー?まったくさぁ俺の方が訳分かんねぇっつうの・・」
と、そん時、携帯が鳴りだした・・・。
プルルル・・プルルル・・・
「誰だよー?今取り込み中ーな訳ないか・・まいいや」
(はぁっ?兄貴・・・?)
「はい?なんだよ、電話するより・・」
『こっちの方が早いんだよ?!それよりお前、今家かぁ?』
(なに即効かよ?あ、まいいけど・・)
「あっああ?そうだけど、なんだよー?何か有るのかー?」
するといきなり・・・
『ああマツケン?ごめんね、今、何時ものとこに来てるんだけど、如何しても相談したい事が有るのよ、今から来て貰えないかな?』
(げっ?奈津美だ・・)
「今からか?あっああまあ、いいけど・・」
(って、何、いきなし変わってんだよ、まったく?!)
すると・・・。
『ほんと?じゃ待ってるから、すぐ来て?すぐね?それじゃ待ってるから絶対来て?じゃぁね・・』
プーッ・・プーッ・・プーッ・・・
「何なんだよまったくよー?!はぁ疲れた・・」
「ねぇお兄ちゃん?もしかして今の奈津美さんだったの?」
「ああ、大事な話しがあんだとさ?・・まっいいや、俺ちょっと行ってくるわ・・」
「ええっ?帰ってきたばっかりなのに、また行っちゃうんだ?お兄ちゃんも何かと大変なんだねー?しょうがないか、それじゃ今度
ゆっくり話し聞いて貰おうかな?ねっお兄ちゃん?!」
「あ、ああそうな、そのうちな?」
「ええっ?その内じゃお兄ちゃん忘れるじゃない、今度って言ったら二三日内の事言うんだよ?分かったー?それじゃね?
奈津美さんによおろしく?」
「ああ、わかった・・そんじゃお前出ってくれるか?俺着替えんだからさ、じゃあな?真子・・」
とまあ、さっさと真子追い出して、俺は急いでとまでは行かないけど、とりあえず支度を済ませて家を出た・・。
マツケン奮闘記・・?!⑦