「陰陽」

 脳髄から地面まで
 汲み上げポンプのように体貫く軸がある
 柳の根本のような
 正直な軸
 その軸から発光される
 ぞわぞわとした疼き
 たちまちに軸は切なく喘ぎ
 星は明滅を繰りくりかへしては
 熱い吐息を拳に吐いた
 吐息は 炎
 かなしい手を爛れさせる
 歯がみの痕残し
 その人の手は黒い炭にされてしまった
 なおも飽き足らずもがけるひとは
 黒ずみの手にすり寄り
 その腕を両脚で挟む
 やさしき檻の感触
 包み込む牢獄のにほひ
 鎖の冷たさ
 いずれも泉の撫でるさま
 その人は思わずもう片方の手に水結ぶ
 もがける人がそれを喰った…
 やさしき牢獄、首締めの銀鎖
 耳の奥が鋭く痛み
 脳は溶けて呑みほされよう
 もはや陽光は
 寒き夜の支配者に非ず

「陰陽」

「陰陽」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-27

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