15 - 1 - 同じことを言う。
殺意は夢中で処理する手筈になっている。
勢いをつけた包丁は肥えて弛む頭の皮を滑る。
数度の殺傷行為はただ傷を付けるだけに終わった。
瞳の形に裂けた空からは、何も流れ出ては来ない。
赤く黒い怖ろしい色が覗くだけ。
私はそれをただ傍観している。
生き方は物語からでしか得なかった。
そう、ずっと昔にその境界線は越していたのだ。
足場がないことにも気付けず、まだ生活を夢見てた。
ほんの数カ月で閉じた春を偲びながら、
変化も忘却も拒めと揺らぎ続け、
思い出せる範囲の規則に浅い息を繰り返した。
―――いつまで句読点を付けているのだろうか。
已めたものを再び手にすることを許せず、
壊したものを更に破壊し、
紛い物だろうと、手元に残ったものに縋った。
それなのに一体何を望めると思っていたのだろうか。
何かを、少しでも正しいと思っていたのなら、
それはどれほどの過ちなのか。
思い出を口にすると堪えられないお前は生きられない。
正しい時間に生きてこなかった。
あの日に死んだお前は、ずっと生きていなかった。
言葉にし直すという回りくどい侮辱行為。
擦り切れた言葉で水増ししているようだ。
それでも言い続け、それだけに満たされたい。
詩を書けない敗残者の、雪がれない醜い呪詛で、
私だけの、私だけの為のもので、
誰をも想えないまま、それに安心した。
君は君でしかないということを、私は書けない。
15 - 1 - 同じことを言う。