概念戦闘篇、第陀話『ばっさり3歳児』
ともしび(これちか2)
ただいま、お兄ちゃん、はじめまして
「元就…」
「ごめん、真白が睡眠不足となると生粋概念としての存在が危うくなるから、
それでこれ、『どんだけ寝るんだお前は君』でちょっと寝ててもらった」
「…で、その子は」
俺は連れ帰って来たその子にと言う。
「初めて逢う人には、どういう対応をするんだっけ?」
「んーと、あ、はじめまして」
「そう、それから?」
「うん、じこしょうかい。
俺はつつごうれっかという名前です」
真白が青ざめている。
「烈火、真白に分かる言葉で話してみよう、
真白はこの新しい世界の始まりの人、
だから」
「そっか」
烈火がぺこり、と頭を下げる。
「はじめまして、俺の名前は筒香烈火といいます。
そして、ただいま、お兄ちゃん」
何が起きているか意味不明で頭がごっちゃな兄
「元就、何で烈火がこんな昔の頃の姿にとなっている」
「事情だよ、個人的事情。
それに生粋概念であるはずの真白も理解をし始めている。
『まるで人間のような感情を持っていた』という烈火に影響をされたんだろう、
だから烈火が戦いを拒む、平和的思考がそうさせている、
と知ったから、友情錫杖をと渡したんだ。
言ったじゃないか、言葉にしないと、相手には伝わらないよって。
それを今、ここですべきだよ」
真白が小さな男の子、という姿になっているという烈火にと手を伸ばす。
でも烈火がそれから逃げて、俺の後ろにと回る。
本能的にまだ、記憶をしているんだろう。
烈火が恐れていたのは、真白に自分の虚言でもってロックを掛けていたという、
自分の本来の存在意義と消滅意義を察知され、
それを不都合なるもの、として排除されてしまうということ。
その第一段階として、真白が干渉覇を使う真偽論者、
ということを、記憶していなくても、
でも本能的に自分の身が危険だ、という判断をしている。
でもそれこそが、
まさに人間のするようなことだ。
誰かから攻撃をされるんじゃないか、
そしていつか自分が怪我をさせられるのではないか、
という自己防衛的なる思考。
「僕は弟相手に攻撃などしない」
それでも烈火は怖いという感情を優先としている。
「僕は烈火に怪我をさせない」
烈火がまだ不信感を優先としている。
「僕がどうして烈火を攻撃し、怪我をさせたりする」
烈火が怖い、そして不信感というものを抱く。
しょうがない、と俺は後ろにと回った烈火にと聞こえるようにと、
その目線の高さを合わせ、
しゃがみこんでの話を、とする。
真白、こういうのが人間に対する対応としてベストだよ。
「ねえ烈火、せっかく初めてと出逢えた君の大切なお兄ちゃんと、
烈火がしたいっていう遊びを一緒にしてもらうっていうのはどう?」
「俺がしたい遊び?」
「そう、烈火はどういう遊び方が好き?
そうだなあ、例えば、鬼ごっことか、かくれんぼとか、
砂でお城を作るとか」
「じゃ、じゃあ俺、砂でお城を作りたいの」
「それは俺とじゃなくて、君のお兄ちゃんとできそう?」
「…」
烈火が真白を見上げる。
そこで取るべき対応がベストなら、
真白はお兄ちゃんとして合格。
「…僕が砂で城を作る?」
あ、ああ、駄目、不正解!
「やだ、お兄ちゃんとじゃなくてもとなりとする、
砂場は外にあるんだ、
もとなり、行こ」
うわあ、と俺はがっくりとする。
烈火が使用言語を変えるまでにと警戒レベルをマックスにとした。
「へえ、烈火は砂場でお城を作るのが好きなんだね」
「そうだよー、お父さんとお母さんと一緒によく作ったんだもん」
「あれ、このお城には天井がないのかな」
「ないんだ、だって天井ができちゃうと、
中身が見えないもん」
「でもかなりの大きいお城なのに、
どうして3つしか部屋がないのかな」
俺は砂場でと烈火とお城を作っています。
真白はそれを傍観、というカタチで見ています。
ちなみに烈火は元の居場所でと両親と使用していた言語で話しているので、
真白には意味不明というところです。
「ここがね、お父さんとお母さんの部屋。
親は寝室っていう共通のお部屋があるの、
だからちょっと広め」
「そうなんだ」
「でこっちの小さい部屋が俺の部屋。
俺は子供だから、子供部屋」
「なるほど」
「そんでこの3つ目の部屋はね、
お友達と遊ぶための部屋。
俺ね、お父さんとお母さんが寝室で寝てる時とか、
内緒でお友達を連れてきて、
そのお部屋でよく遊んでたから、
だからその子と楽しく遊ぶ部屋が3つ目の部屋」
「お父さんたちに内緒でお友達を連れて来てたの」
「うん、
バレちゃいけないんだよ。
もしお父さんたちにバレたら、
もうその子と遊んじゃいけませんって怒られる。
でも俺は怒られるのは平気、
ただお友達が気を悪くするっていう方がやだ」
「そうなのかあ、で、そのお友達っていうのはどういう子?
烈火みたいな子?」
「うん、同い年でとっても仲良しの子。
その子と俺はその部屋でお人形遊びとか、
そう、あやとりもその子から教わった。
何でも知ってて、すごいんだよ。
鬼ごっこもかくれんぼもするけど、
その子が得意なのはお人形遊びとか、あやとりとか、
それとね、そのお人形さんが着る服も手作りしたりするんだ」
もしかしたらその子って、女の子か?
「もしかしてさ、烈火と遊んでくれたそのお友達は、
女の子?」
「そうだよー、同い年の子はその子しかいなかったから、
年上の人とか年下の人とかもいるよ、
でもその子と遊ぶのが好きだったなあ、
でもその子は夜しか動けないから、
だからお父さんたちが寝た後にって呼んでたの」
「病気だったの?」
「うん、流行り病っていうやつで、
昼間の太陽の光に長い時間当たると、
紫外線で身体が壊れちゃうの。
だから夜しか動けないから、
そんで」
「流行り病っていうのは酷かったの」
「そう、俺が生まれたのが8月8日でね、
でも10月に入って、
すぐにその流行り病っていうのが来たの、
そんで12月になったらもう殆どのみんながそれにかかっちゃって、
そんで2月に、俺以外のみんながそれで、死んだ」
「お父さんとお母さんも」
「うん、最期に残ったのが俺とお父さんとお母さんだけ、
でも2月14日、
いきなりだったんだ、
空に大きな文字がばばばばって出てね、
何かなあって思ったら、
もう遅かった。
だからもうこの3つ目の部屋も意味がないし、
俺の部屋もお父さんたちの部屋も意味がなくなった。
最初にお父さんたちがその大きな文字に殺された。
そして大きな音がした。
俺の家にと大きな石が当たった音だよ、
すっごく大きな音で怖かった。
でもその石は1つじゃなかった。
俺の家も壊れた、
でも俺がいたというその場所まで、
たくさんの空から降る石で壊された。
もうそこからは何も覚えてない。
気が付いたら、すごい寒い場所にといた」
烈火が手でぐしゃっとお城を崩した。
「その寒い場所で見たんだ、
隣に人がいる、その人が空を見上げてるってとこ。
俺も見たよ、
同じ大きな文字だった。
そしてその隣にいた人が喋ったんだ。
俺が知らない言語だったから、
俺は考えた。
でも眠くなっちゃって、
そんで起きた時に、何を喋っていたのかが分かった。
『これで僕に世界を造ってそれを示せと言うのか』って、
そう言ってた。
だから俺は思った。
俺のいた場所を壊した大きな文字を操っているのはこの人、
だから俺の家族を殺したのもこの人、
お友達も流行り病をこじらせて死んだのもこの人のせい、
俺が持っていた全部を奪ったのはこの人だって。
でもそんなのはすぐに消えちゃったんだ。
寒すぎたから、それで俺はくしゃみして、
もうそこからは前の事が思い出せなくなって、
でもこの人をどう呼べばいいのか分からないから、
とりあえず『お兄ちゃん』と呼んだ」
「どうして?」
「俺と遊んでくれたお友達にお兄ちゃんがいたから」
「そうなんだ」
「俺はそのお友達といつか結婚をするっていう約束をしてたの。
そのお兄ちゃんがしろしろって笑うからだよ。
でもそのお兄ちゃんも流行り病で12月に死んじゃった。
その前に10月にとそのお友達も死んじゃった。
流行り病がどうして起こったのかという研究をしていた人がいた。
その人が言ってた。
何かの前触れでしょうって」
「でもどうして烈火はその流行り病っていうのにはかからなかったんだろう」
俺は砂場を整地しながら聞いてみた。
「かかったんだよ、ちゃんと。
でも俺の理論で、流行り病にかかる前にと自分の身体を変異させてたんだ。
お父さんたちにもそれをした。
でもお友達もそのお兄ちゃんにもっていう力が俺にはなかった。
だから最期の生き残りの俺達3人を大きな文字と、
空から降るたくさんの石が殺そうとした。
お父さんは強かったの。
武器を使って石を何とかしようとした。
お母さんも武器を使って応戦した。
でも大きな文字からたくさんの光の矢が降って来て、
お父さんとお母さんは刺されて死んじゃった。
俺は守護結界を自分にしか張れなかった。
でもそれにもヒビが入った、
というところまでしか覚えてない」
一応、烈火には気づかれないようにと俺は言語理解レベルというものを発動させている。
つまり、
烈火が何を言っているのか、というのが傍観している真白に筒抜け、
という状況だ。
「お父さんは言った、
誰も恨むことなく行けと。
お母さんは言った、
相手の幸福を心から喜べと。
そうして俺はお父さんとお母さんとお別れした。
そんで、気が付いたらすっごく寒いところにといた」
「烈火がいたっていう最初の場所は、
家があったっていう場所は、
名前とかあるの?」
「うんあるよー。
みんなが言ってた。
『始まりの場所』っていう名前。
でもそういうことまで俺は思い出せなくなってた。
でも思い出した。
あの武器を貰った日。
ぜつえんしゃくじょうっていう武器」
「それは、大切な誰かとお別れをしたっていう思い出を、
烈火にと思い出させてくれたんだ?」
「うん、お父さんとお母さんとお別れをしたあの日のこと。
2月14日のこと。
でももう1個、それはちょっと嬉しいという気持ち」
「嬉しい気持ち?」
「うん、お兄ちゃんがくれたんだからっていう、
嬉しい気持ち。
俺は嬉しかった、
お兄ちゃんが、二度とお兄ちゃんと呼ぶなって、
そう言ってくれた。
だから俺は嬉しかった」
自分の居場所を失わせたという真偽論者誕生に伴う干渉覇、
それによって壊されたという『始まりの場所』と、
その場所の住人。
そして真白が真偽論をすぐにと理解して世界創造、
となった時に、烈火の失った記憶が、もっと失われたということか。
始まりの場所から外へ
「お仕事をすることになって、お兄ちゃんから、
式神を使えって言われた。
それで俺は前から知っていた白いもこもこにと再会して、
それで式神契約をするってことになって、
でもそれは違うって思って、
だから式神契約は式神契約だけれど、
それは一応しましたよーっていうことで、
俺としては『お友達宣言』というものをしたの。
でもお兄ちゃんにバレると怒られるから、
報告としてはちゃんと式神契約をしましたって伝えたの。
でももうその時は初めてのお友達のうさを失った後で、
それからはずっと、
式神契約なんかしないってことで、
自分が強くなればいいだけだって、
それで自分1人だけの戦闘を続けた。
お兄ちゃんが寝てる時間は俺にとっては戦闘訓練に明け暮れるという日々だった。
武器を造ったり、それを試験段階でと試したりして、
敵という敵を倒しまくるという日々だった。
うさが俺にと戦闘方法を思い出させてくれた。
生粋概念は後天的にと誕生した存在だから、
先天的に誕生して生きていたという俺と違う。
具現化、実体化をすることは後天的なる生粋概念には持てないという能力。
先にと生まれたものは、後から生まれたものに殺される。
先にと存在していた知識や常識、正義やそれに反するという意識まで、
後からと存在することになったものから新しく塗り替えられてしまう。
でも先にと生まれたものにしかできないことがある。
それが俺にとっての具現化と実体化、
そして消滅する時にとできる概念消滅化。
俺はいつかそれをするという未来を見た。
その日が来るまで、俺はまだ思い出せないという記憶を、
総て蘇らせるためにと訓練を続けた。
平和だった俺達の始まりの場所を一瞬でと壊した、
敵が誰かを思い出すために。
でもどうしても思い出せなかった。
けど、思い出した。
俺が見ていた俺という概念消滅、それに伴う概念消滅化を果たすその日までに、
それを思い出せて俺はとても嬉しかった」
「そして烈火は総ての記憶を取り戻して、
本当の目的を果たすためにと行動を開始したんだね」
「うん、
第一段階はクリアしていた、
第二段階もクリアしていた、
そして最終段階もあの日、クリアとなった。
戻って来てくれたうさを、
敵ではなかったものが殺したと知ったあの日、
墓標の場という場所で」
筒香烈火は始まりなる既存概念、筒香真白も始まりなる生粋概念
「ところで烈火、
イチゴパフェは烈火にとってはどういうものだったの」
俺は聞く。
真白、ちゃんと聞いているんだよ。
「とても懐かしいと思わせる、本当においしいと思える食べ物だった。
みんなが同じものを食べていて、
すごく笑顔で、会話内容も平和そのものだった。
今日は学校に遅刻しちゃったーとかっていう話、
その理由が寝ぐせをただ直すために1時間かかっちゃった、
というだけの普通の会話。
それに、これおいしいね、やっぱりこのお店で一番のお勧めだよね、
と楽しそうに話す人たち。
その中に違う2人がいた。
このお店は特別注文をすると誕生日ケーキを作ってくれるんだよっていう話。
予約制だから誕生日の3か月前に予約をしないといけないっていう話。
そこで俺は思い出した。
どうして目の前のイチゴパフェがこんなにもおいしくて、
甘すぎて、懐かしいと思うのか。
お父さんとお母さんが俺の誕生をお祝いして作ってくれたケーキと同じ味だったからだ。
甘いんだ。
甘すぎるんだ。
だからかな、
俺は懐かしくて、そしてそれと同時に、
もう戻れない、
もう帰れない、
もう逢えない、
もう分からない、
と思って泣きながら食べた。
そして願った。
もう一度、家に帰りたいって。
偽りの家じゃなくて、
俺が平和なる始まりの場所という世界で過ごしていたという、
俺の本当の家に」
「でもそれはできない、と烈火は分かっていたんだよね」
「うん、もう帰ろうと思っても帰れないよ、
壊されたんだ、失ったんだ。
でもせめて8月8日の自分の誕生日の3か月前に予約くらいはしようって、
それで5月中にとそれを果たそうとした。
けれどできなかった。
お店がどこにあるのかが分からなかった。
やっとの思いでお店にたどり着いた時には、
とっくに5月を通り越していて、8月も通り越していて、
2月になっていた。
そして極めつけが、そのお店が、貸店舗となっていたことだった。
きっと営業成績面で傾いたのかな、
それとも人手不足で営業が続けられなくなったのかなと、
それで俺はそのお店の前で茫然とした。
でもすぐ横をと通り過ぎる人が言った。
そのお店がそうなっていたのは、
そのお店の専属パティシエが死亡してしまったから、
その人しか作れないメニューばかりだったから、
他の人では同じ味が出せないからとなって、
それで客足が遠のいたという話だった。
でも同時にと知った。
その専属パティシエが死亡したという理由。
俺が終焉銃で排除したという敵だった。
有害認定と俺の意志が判断して、即時にと呪縛を与え、
それに抗ったから俺が瞬殺した敵だった。
俺は自分がしているという仕事というもので、
俺の唯一の残り少ないという平和思想まで、
自分の、この手で壊してしまったのかと思って、
だからもう俺は主義を変えた。
二度と、従うかと」
俺は言う。
「烈火、次は何の遊びをしようか」
「うーんと、じゃあ、おにごっこ」
「分かった。
じゃあ鬼は烈火だよ、逃げるのは俺。
捕まえて」
「分かったよ」
筒香烈火のおにごっこ
「出でよ、俺の体内にと眠る、終焉絶滅銃」
「絶望生死論にリミッター設定、輪廻再生論のみを発動、
俺にと理論守護結界レベル30で展開」
という前提があっての、おにごっこです。
見てて、真白。
「対接近戦、対遠距離戦、両戦闘用にと造り出した武器だよ、
もとなり、逃げても無駄、捕まえたら終焉弾を全弾撃ちこむ」
「オッケー、ささ、俺は逃げるよー」
「まてー」
さすが烈火、終焉弾を全弾命中で撃ってくる。
でも俺は体力お化けなのさ、まず銃口が向けられるというところから、
さささっとずらかる。
「もとなりは足が速いよー、じゃあ速度を上げて30秒で片づける」
がちゃんと音がして終焉絶滅銃が形を変える。
「俺の意志に沿い、その形を俺の望むものとせよ」
うおー、対接近戦。
さてさて、真白、
君ならどうする?
「わー、烈火の終焉絶滅銃が剣にと変わったー、
おまけに槍の矛先ってやつが俺の喉にー」
「もとなりの負けだよー」
「でも俺にとどめをさすまでがおにごっこだよ」
「そう、だからこれで終わりだよもとなり」
がっちーんという音がする。
烈火の終焉絶滅剣+槍が俺の理論守護結界に邪魔をされて、
俺にとどめをさせない。
「しょうがないなあ、形態変化、
レベル最大でもとなりの身体を切り裂く刃の嵐となれ」
「やりすぎだ」
あ、真白、動いてくれたー!
真白が干渉覇を使う。
「もう既に理解し終えている、
真偽論者の展開する干渉覇など、
この俺には傷1つつけられるはずがない」
真白の干渉覇が烈火の視線、というものだけでばらばらとなる。
「もとなりー、とどめー」
「うわー、どうしよー、やられるー」
真白、干渉覇レベルを上げるんだよ!
烈火のためにってレベルを上げられないのは分かる、
でもそれは烈火のためにも、
そして真白のためにもならないんだよ。
「干渉覇、『世界改編』」
「もとなり、お兄ちゃんが邪魔するよー」
「じゃあ烈火、
まずはその遊びを邪魔をするというお兄ちゃんを何とかしないと」
「んー、そうだよね、しょうがないや」
一応、『世界改編』という干渉覇は無効化されている。
烈火からのまたあの視線、『冷たい視線』みたいなやつでなかったことにとされている。
真白、本気を出さないと!
筒香真白、対筒香烈火戦
「ばかだなあお兄ちゃん、干渉覇のレベルを最大にとまで上げても、
もう俺にはその対処方法が理解できてる。
いくら何をしても俺には勝てないよ」
「何故断言する」
「じゃあやってみなよ、何でも」
そういうことで、第一論者、筒香真白が『第一種戦闘配備』にまで追い詰められるという状況となった。
つまり、真白が本気。
一応段階として第二種から行った真白が、
総ての干渉覇を無効化されてしまっているので、
それでの第一種、となっている。
「先天的なる既存概念である俺に、後天的なる生粋概念が何故勝てないんだろう」
真白が息を切らしている。
いや、初めて見た!
「あの大きな文字での干渉まですればいい、
『世界終焉覇』と『世界再始動覇』を両方展開すれば、
さすがの俺でも耐えられるはずがない」
兄として弟を想う気持ち、というものが真白にそれをさせない。
「どうしてしないの?かんたんにできるよね、お兄ちゃんは」
「どうしてできる」
「んー、ごめん、言葉、通じない」
ああー、烈火が俺の言語理解レベルっていうやつを解除しちゃったー!
「烈火!自分が何を言っているのかが相手に分からないと、
ほら、あれやれこれやれって伝わらないよ!」
「だって、ほんき出さないお兄ちゃんが悪い」
「でもそれは真白の事情なの、
烈火にも事情があるでしょ、
だからちゃんと分かる言葉を使いながら、
そうだよほら、宣戦布告とか、正当防衛とか、
ああいうの!」
「んもー、しょうがないなあ、
もとなりはまた後で遊んでくれる?」
「遊ぶよ遊ぶ!」
「わかった。
…やーいやーい、後から生まれて何でもできるかんぺきおにいちゃーん」
…宣戦布告とちょっと違うよ烈火。
「何でもできて敵にもすぐに勝てて、俺の家までぶっこわしたおにいちゃーん」
「…」
真白、褒められてるのかけなされてるのかが意味不明!?
「つまんない、つまんないよ、
じゃあ俺から行くよ、
終焉絶滅銃はここいらで武器庫にと収納。
さあ出でよ、
希望という概念まで吸収し、絶望を凌駕し、
俺の意志にと届いた最終兵器、
希望絶望錫杖、
さて、真偽論者はどこまで俺の意志を打ち砕けるというのかな」
すごーい、と俺は見ている。
真白が押されてるっていうのは初めて見たー!
「ジエンド、僕にと守護結界を張れるか、最大でだ」
『駄目だ真白、烈火のあの武器が、
俺の終焉までもを凌駕する!』
「それほどまでに、僕が憎いのか」
「守護神からの守護結界なんか、守護神もろとも内在から消し去ってやる」
烈火が希望絶望錫杖をぐるぐると回して、がちゃんと音を立てて構えた。
「俺の中で永遠に守護神と共に迷い、そしてその場で終焉を迎えろ」
『やめろ烈火!お前が何をしたのかを思い出せ!
守護神の太陽神ラーを殺した!式神最高位の魔王サタンまでお前が殺した!
真白が使役する式神全部をお前が殺した!
みんなはお前と友達だったはずだ!
平和を望み、誰の終焉も望まないというお前が、
総てに終焉を与えてどうする!』
「もとなりー、この黒いのうるさいよー」
「じゃあ烈火の好きなようにしたらいいよ」
「わかったー」
一応、と俺は某理論を発動させる。
「守護神になんかに守られているから本気を出さないんだ、
だったらそいつから消す。
希望絶望錫杖、形状変化、
俺の意志にと沿い、俺の望みを叶えよ」
「ジエンド!」
ジエンド、くろさんが全力でと張った守護結界がガラスのようにと割れて、
くろさんが吹っ飛ぶ。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんも俺とやっと同じ条件になった。
守護結界解除状態。
全解除状態で俺と戦え」
「烈火、僕はただお前に恩返しがしたかった」
「恩返し?」
烈火が一瞬だけ止まる。
「寒いと思った、でも暖かいとすぐにと思った。
ただそれだけの恩返しを、
僕はするためにとこれまでお前の兄として生きてきた」
「それはお兄ちゃんの勝手なる事情だ」
「人間のようにと感情を持って育っていくという烈火に、
いつか生命を宿らせて、
そしてどこかの世界で人間として生きて行って欲しい、
それが僕の存在意義だ」
真白がついに、ついに言葉にしたよ!!うん、感動的!
「じゃあ逆に聞くよ、
お兄ちゃんの消滅意義は何」
うわ、烈火、それはちょっと趣旨が違う!
「消滅意義」
「存在意義があるのならそれを果たせばいい、
でも消滅意義は何」
「それは持ち合わせていない」
「…後天的なる生粋概念はこれだから嫌だ、
圧倒的優位にと立場を持ちながらも、
絶対にと感情や人間らしいような理解を不可能とする、
常識や正義などにも無関心どころか理解ができない、
失敗作となるもの、不都合なるものにも、
哀れみすら感じない。
ただ排除すればいい、
新しく作り直せばいいという安易なる思考回路、
ただ忠告、いや、助言として聞いてよお兄ちゃん、
失敗した、じゃあ新しく作り直そう、
そうして新しく作り直したとされるものは、
その世界は、そこにと生きているという生物、
そこでと流れている時間という概念、
その世界を構築した総ての要素は、
失敗作として放棄した世界総ての構築要素と、
全く同じものだとして理解をしていたのか?」
「していた」
「そうか、だからお兄ちゃんは後天的生粋概念で最上位にといるんだ、
それがお兄ちゃんの存在意義として証明をされるんだ、
平気で嘘を吐く、
真偽論者だから、
さっきのも虚言だ、
俺に恩返しがしたいだの人間として生きて行って欲しいだの、
それが真実だと、虚言ではないと証明すらできない、
自分こそが最高位たる創造神として第一論者であるからだ、
けれど自分の仕事内容に理解も示せないというところで、
俺の意志がお兄ちゃんにはこれから先も絶対にと理解ができない。
もうお兄ちゃんを守ってくれる守護神は死んだ、
何物にも守ってもらえないという状態で、
俺からの最終手段での攻撃をまともに食らった時が、
お兄ちゃんの終焉だ」
「烈火、恨むのは僕だけにしてくれ、
烈火がいたという場所を僕が消滅とした、
ならジエンドまで殺さず、
僕のみを殺せばいいはず」
「じゃあお兄ちゃんお得意の創造たる理論で、
守護神のジエンドを作り直せばいい」
おお、烈火、いいねいいね!
「今のお兄ちゃんなら世界創造だけじゃなく、
自分だけを守ってくれるという守護神すら造り直せる、
ならジエンドを造り直してまた自分を守ってもらえばいい」
「ジエンドも僕たちと同じ概念だ、
概念までもは造り出せない」
「…やめてよ、『僕たち』って、
もしかしてそこに俺が入ってる?」
「僕の真偽論にも限界がある、
確かに世界創造、干渉覇は可能だ、
だが第三理論の生死論でしかできないことがある、
それが生命を操作するという理論展開、
僕は真偽論者として世界を造り直せても、
そこにと生きる存在の生命操作までは不可能だ」
「お兄ちゃん、俺の質問内容と解答すべき内容に相違が見られる。
でももういい、
お兄ちゃんとは二度と遊ばない。
俺はもとなりと遊ぶ。
お兄ちゃんには理解できっこないことをもとなりは理解している、
分かり合えないというお兄ちゃんは、
俺にとっては不要だ」
うーん。
まあやっぱりここは、赤の他人第一号という俺が、
説明を、いや、あれだあれ、仲裁をすべきだね!
仲裁人、杵柄元就君
「烈火、烈火が言いたいことが真白に全く伝わってない、
それが烈火を今、激オコにとしてるわけだね」
「んー?」
まあまあ、と俺は真白と烈火の間にと入る。
「じゃあまずね、真白に伝えることを伝えるよ。
真白が理解できっこないっていう烈火の中の意志とか常識っていうのは、
生粋概念である真白だからこその仕方ないことなんだよ。
烈火はまるで人間のように感情豊かに育った、
と真白は思ってたよね。
それは烈火が真白と違って、先天的なる既存概念だったからだよ。
真白が誕生する前にとそれまであった世界総てを、
烈火は『始まりの場所』と説明をしたね。
そこには文明もあって、常識もあって、つまりね、
真白が今も造り出しているという世界とは異次元なのよ、
筒香真白が真偽論者、として誕生する前にと何かの前兆、前触れ、
としてそこから真白からの干渉が烈火たちのいた場所へと入り込んだんだ。
それが流行り病という形で始まった。
2月14日っていう真白が真偽論をすぐに理解しての覚醒、
まさにそれは人間でいうビッグバンみたいなやつでね、
そこでまずありとあらゆるそれまで存在していた総てに干渉して、
まっさらとしたんだよ。
その犠牲となったのが、
烈火がいたという場所や他の既存世界、
そこには文明があって、秩序もあって、
常識もあって、感情も育っていたんだよ。
既存概念たちが生きて、そこで平和を、と構築していたものを、
真白がまだ生まれる前から干渉し始めて、
覚醒となったらなったでその場でそれまでの、
『過去』として抹消されてしまう既存世界がそこにはあった。
でも真白はその後にと生まれているから、
なかったことにされた既存世界がどうだったのか、
そこではどんな文明が発展していたのか、
秩序はどう保たれていたのか、
というを真白は知らない。
でも烈火はその既存世界の生き残りで、
自分が大切にとされていた、そして自分が居場所、家だと思っていた、
まさに真実なる実家だよ、
それを真白になかったことにされちゃったんだ。
ここまでは理解できる?」
真白が頷く。
「で、烈火が言いたいことっていうのが、
真偽論者として世界創造をして、真白が失敗作、
とうなだれる壊れてしまった世界、
それを真白がもう一度、って造り直すよね。
でも烈火が言いたいのはそこ。
真白にとってはまさにどうでもいいことなんだけれど、
造り直したっていうところで、
それは失敗作として壊れてしまった世界とはもう違う世界になってるんだ。
例え住人が同じ、流れている時間も同じ、
と真白が認識していて、今度はうまくいった、と成功したとするところから、
烈火にはそれが違うと言いたいんだよ。
同じものは二度と造り直せない。
烈火の望みが叶わないっていうところもそれが原因。
烈火がどんなに帰りたい、と実家のことを思っても、
真白が烈火のためにとその居場所を作るとなっても、
もうそこは烈火のいた場所じゃないし、
そこで発展する文明も秩序も常識も、
烈火が知っている既存世界とはもう別の物なんだ。
うまくいったと自分は成功している、とされる世界創造は、
真白には成功体験であっても、
烈火には違うとされる。
同じものは二度と造り出せない。
その代表が俺だよ。
俺はもう何度か分からない程死を経験して、
その度にと輪廻再生としてきて、
それは俺の中の第四人格が生死論を発動させていたからだよ。
でも身体的には主人格である俺が圧倒的にと上位だから、
生命を終えるというのは俺。
でも第四人格が生死論で俺を死の淵から救い出して生なる理論で、
俺を人間として再生する。
でももうそこで死ぬ前の俺と、
生死論で生命再生となった俺は別人になってる。
俺が人間だった頃に、普通じゃないって言われてたじゃない?
それは、普通に触れようとするたびにと俺が死ぬ、
それで生死論で再生、
だからもう別の俺になってるんだよ、そこで。
何で教えてもいないのに全部理解してるんだ、と言われたことがちょくちょくあって、
確かに死ぬ前には理解していなかったということでも、
死を経験して成長を遂げるたびにと俺もレベルを上げてしまうんだよ。
だから知らないはずの知識もレベルアップした状態で、
再生となった俺にと定着する。
それの尽力をとなっていたのが第二、第三人格の感じる感情だよ。
主人格である俺がどんどん変化するたびに、第二、第三人格も変化する。
勿論、生死論を理解しているという第四人格も。
そして俺は生命放棄、として概念となった時に、
第四人格もまたそこで最終的にとレベルを上げて終焉となったんだ。
だからこそ俺の持論が、絶望生死論と進化をした。
ここまでは理解できる?」
「少々理解できない」
うーんと俺は悩む。
「烈火はちょっと攻撃は待ってね、今俺が説明中」
「はーい」
「でね真白、真白にはどうしても理解できないというものが、
人間らしいという感情なんだよ。
もし烈火を概念として再生できるとなって、
烈火が概念として消滅となった場合、
真白ならどうする」
「再生できるなら再生する」
「そうだよね、でもね、真白がどんなに願って、それを果たしたとしても、
そこで再生させたという概念の烈火はもう前の烈火じゃないんだよ、
真白のことをお兄ちゃんと呼んだという烈火じゃなくなっていて、
真白の言うようにと第二論者として仕事を、
まあ、サボりながらね、
それをしていたという筒香烈火ではもうないんだ。
それを今、真白は目の当たりにしてるんだよ。
目の前にといる烈火が、もう真白の見知っている烈火じゃない。
弟としての烈火じゃない。
第二論者としての烈火じゃない。
真白が生命を宿してどこかの世界で人間として生きて行って欲しい、
と願っていた筒香烈火という存在ではなくなっているんだよ」
真白が烈火を見る。
「生命でも、例えこの足元の石ころ1つでも、
造り直すとしても、もうそれは前の生命でもない、
石ころでもない、
もう別の生命、石ころとなってしまうんだ。
今目の前にといる烈火がどうして真白を嫌悪しているのか、
それは以前の消滅する前にと取り戻したという記憶を保持しているからだ。
自分の居場所を壊されたという絶望や、
大切な人を奪われたという悲しみや、
まさかそれをしたのが兄としている真白だったのかという衝撃が、
今の烈火を構成している要素、
平和を誰よりも願い、敵とは戦わない、
という思考、意志を持っていたという筒香烈火という存在ではもうないんだ。
烈火は俺に言ったよ。
不可視化結界を張れないかって。
既存概念という存在は具現化、実体化というものができて、
最終段階の形態変化を可能とできる。
絶望を希望が凌駕するのと同じように、
過去を現在が、現在を未来が凌駕するのと同じで、
希望に凌駕されてしまった絶望のみとなっていた既存概念の筒香烈火は、
その最終段階の形態変化をしたんだ。
真白が見知っているという筒香烈火はもうどこにもいない。
でも、いるんだ。
ほら、あそこに海がある。
あの海が、真白が起きてはよく遊んだという純粋無垢なる烈火で、
今、真白の目の前にといる小さな男の子となった烈火は、
もう真白の弟ではない、
本当に正真証明の赤の他人にとなってしまったんだよ」
「僕は恩返しがしたかっただけだ」
「でも今それをしても、
真白には本望でも、
真白が恩返しをしたかったという烈火に対する恩返しとはならない」
「生命を宿してどこかで人間として生きて行って欲しいと」
「真白がそう願っていて実現させようとしていた、
その烈火じゃもうなくなってる」
「だからジエンドを」
「邪魔だと今の烈火は思ったんだろうね」
「僕はどうすべきなんだ」
「言ったじゃないか、後悔しないようにって。
伝えたいことがあるのなら言葉にして相手に伝えなければ後悔をするよって。
今、真白が感じているのが『後悔』という感情だよ」
「もう恩返しができないのか」
「したとしてもそれは真白の自己満足ってだけで完結する。
ついでに言えば、
烈火には違う意味でととらえられる」
俺は烈火の前にとしゃがむ。
「真白は烈火に人間として生きていって欲しい、
何の論者になることもなく、
因果を背負うこともなく、
人間としてどこかで、と願っていた。
それが真白の存在意義だった。
烈火はそれを知らなかった。
真白が説明不足っていうところで、
その真白の存在意義を知ることができなかった。
そもそも、烈火が実家としている世界を真白が壊した、
ということも真白が知らない、
という烈火のこれまでの行動履歴の原因も、
真白は知らなかった。
烈火が存在意義としている烈火の意志、
そして消滅意義としている烈火の意志、
それはどちらかというと人間と同じような感情だ。
俺は烈火が生まれて、暮らしていたという平和な既存世界っていうのまでは知らない。
でもそこで烈火は本当に人間のように感情を豊かにと持って生きていたんだろう。
平和な世界で、その場所でと常識とされている文明や秩序の中で、
お父さんとお母さんと大切なお友達とそのお兄さん、
それだけじゃないというたくさんの既存概念という人たちと、
本当に倖せにと生きていたんだろう。
でもそれをある日突然奪われたら、誰だって嫌だと思ってしまう。
何でだろう、どうしてだろうって悩んで、
最終的には復讐しなければって思ってしまう。
でもそれをさせなかったのは、烈火のお父さんとお母さんからの教えだ。
誰も憎むな、相手の倖せを喜びとしろ、
という大切なお父さんたちからの教え、
そして平和だったというその居場所の常識が、
烈火の意志として受け継がれて、
例え真白からの世界改編という最初の干渉覇をまともに受けても、
忘れてしまっていても、
烈火の意志としてそれは烈火の中にと残り続けた。
だから烈火は自分の持論ではないという道標論の論者となって、
そこでもたくさんの葛藤をしてきたんだ。
嫌だなあと思う戦いを拒否するという平和的思考、意志。
それに反して、第二論者としてすべきことをしなければいけないという、
抗えないという因果を伴うという絶望的思考。
正しいとされることだけをしている小さかった頃の俺が、
それを否定しない、
間違っていると肯定されている、
というところでも烈火の意志がそれを嫌悪した。
だから俺にと正しいと言って、
正しさの証明ができるということまでを教えてくれた。
もう既に俺が生死論を理解している、
それも無意識下で使用するわけでもなく、
まるでどうでもいいことのような感じを俺がさせている、
でも現実を見れば生死論による犠牲者が出ている、
となれば俺をそこで有害認定として排除すべきだった。
でもそのことを烈火は真白に報告しなかった。
烈火の持論では俺の未来が見えない、
でも進化した永遠道標論では俺の未来が見えた。
そして段階を経て思い出していく自分の過去、
なかったことにされている過去は、
なかったことにされている、
あったという事実にもされない、
戻りたくても戻れない、
造り直してもらったところでもうそこは実家じゃない、
まさに俺が出逢った、上智比呂と同じようなものを、
俺は烈火に感じた。
過ぎてしまった時間は二度とは戻ってこない、
そして返してくれと迫っても、
返してもらえない。
失くしたものを返せと迫ったところで、
そんなことは絶対に不可能だと烈火は知っていた。
でも烈火は本当に平和を愛する既存概念、
始まりの場所の生き残りだと思った。
消滅意義を既に感じていて、
その事に何もためらいなどを感じていなかった。
恐怖としている孤独、そして爆音、
それすらも引き連れての消滅を果たした。
俺はお節介だから、
ある理論で烈火をと戻した。
でもやはり、俺の理論でも、
もう今の烈火は、
俺に初めて俺が正しいと言ってくれた烈火じゃない。
平和だけを愛する、
戦うことを避けたいという意志を持った烈火じゃない。
恩返しが俺もしたくてお節介をした。
でもやはりそれも俺にとっての単なる自己満足だった。
けれど、
烈火は俺の理論に反応して、
『もう一度始める』という選択をした。
だから今、烈火はここにいる。
海となって、そこで平和なる遊びをしてくれる存在がいれば、
ただそれだけでいいという烈火の意志は正しいと俺が証明する。
もう烈火には本当の持論が備わっている。
第二論者としてすべきことから解放された。
本当にもう自由なんだ。
もう俺は烈火の意志を尊重して、
お節介もしない、
烈火がどうしたいのかを決めてもいいんだ。
目の前にいるという真偽論者を内在から消滅させてもいい、
持論を展開して本当に違う世界の時間軸でと生きていくという自由も、
俺が筒香烈火という君の個人の自由を尊重する。
そしてそれを邪魔をするという存在がいるのなら、
今度こそ君から俺が教わった正義の証明を果たしてあげる」
烈火はうーんと考えた。
それで、真白を見上げる。
そしてまた俺をと見比べる。
「うん、決めた」
「じゃあその意志を俺が応援する、教えて」
筒香真白、後悔を思い知る。
「もう俺には帰る家がない、
一緒に遊んでくれたあの子もいない、
返してってお願いしても、
返してもらっても、
それはもう俺が返してもらいたいものじゃない。
だったら、
俺はこれから、もとなりとずっと遊ぶ」
「…え」
ちょ、ちょっと、烈火、遊ぶってあれだよね、
さっきまでのどこかがおかしいというおにごっこ的なやつだよね。
「あー、あのね烈火、
俺、居候だけれども、
今、真白が家長としている家にとお世話になっている身でね」
「じゃあ俺もそこに居候する」
「いやその、烈火は真白が嫌なんだよね?」
「嫌だけど、でももとなりがいるなら、
一緒に遊ぶんだから、居候になる」
「あのその、俺ね、
ああいう烈火のおにごっことかっていうのにはちょっと」
「だいじょうぶだよ、もう武器とか使わない」
「本当…?」
「ほんとうだよ、でもいざとなったら持論展開+武器使用で何とかする」
「…じゃあね、居候となるならね、
家長である、ああ、家長っていうのはその家の大黒柱だよ、
その真白に言うべき言葉があるよね」
そこで烈火が真白にと向き直って、ペコリと頭を下げる。
「どうか俺をおうちにと居候させてください、お願いします」
おお、さすが常識を知り尽くしている既存概念!
「ただし、俺にと嫌がらせをしたら、
すぐにと持論展開+武器使用で対応させてください」
え、えー!?
居候なる立場で言える言葉じゃないよ!
「真白、烈火が居候をお願いしていますよー」
「…許可する」
おお、真白がオッケー出した!
「よかったね烈火、居候、オッケー!」
「やったあ、じゃあもとなり、
途中だったから続き、
おにごっこ」
「…今日は俺疲れたからー、また今度にしようよー」
「そっか、もとなりは疲れたのか」
「そうだよ(烈火の容赦ない速度での攻撃の対応は嫌…)」
「じゃあしょうがないや、
また明日ね」
「うん」
明日もああいう遊びを…うわあ、俺、なんつー理論展開をしてしまったんだ…。
一応ね、
海となっちゃった烈火を、
記憶保持状態での輪廻、みたいなのをしてみたんだけれど、
その記憶の中に戦闘履歴がある、という点を俺はどうして考慮しなかったんだ…!
武器庫とかもあるみたいだし…。
しかも武器のレベルアップもしてるし…。
何だよ、希望絶望錫杖って…もはや何でもやりたい放題の武器じゃない?
「じゃあお兄ちゃんと俺と、家に行こう」
「…」
ん?烈火が真顔になる。
「俺、こいつをお兄ちゃんと二度と呼ばない」
こ、こいつ…!?
「あーでももとなりをお兄ちゃんと呼んでもいい」
「や、やめて、俺の永遠なる弟は篤麻だけでいい…」
「じゃあもとなりはもとなりでいいや、
で、こいつは真偽論者っていう名前が長ったらしいから、
しんぎと呼ぶ」
「…」
あ、真白が、激怒!?
「帰る」
あ、激怒しなかった。
ということで家長、そして居候2人という家にと変わりました。
ちなみにですが、
くろさんは無傷です。
俺がちょっといろいろしたので。
筒香烈火は今何歳?
前は外見も、それ相応で19歳っていうのは思って見てたけれども、
烈火を引き戻した、というところで、
今の烈火の姿になったんだよねーと俺は見ている。
どう見ても、うーん、幼稚園生くらいの、んー、でも既存概念だった存在だし、
そういうところでは真白よりは年上だった、
けれども、今の烈火は既存概念ではもうなくなっているし、
でもだからと言って生粋概念の真白とはもう違う存在だし、
そもそも第二論者としての理論を放棄してしまったし、
んー、どういう立ち位置?
「ねえ烈火、烈火は自分の年齢とかって把握できる?」
「俺の持論で把握してる年齢ははっきりとしてるよ、
でももう俺は別の俺だし、
そーだなあ、こういう身長と体重だから、
んーと、3歳ということにして」
うわー、ということにしてっていうのはやっぱり概念的思想…。
「ちなみにもとなりは永遠なる17歳、ぴっちぴちの高校生」
うわー、記憶保持してるからそれは知ってるんだよなあ。
「んで、しんぎは年よりじじい」
うわー、何だか俺、泣けてきたよ…。
「烈火、この家の一番上にといる家長の真白を年寄じじい呼ばわりはよろしくない」
「じゃあくそじじい」
「…ちょっと、それも全然違う」
「じゃあ、…じじいっていうのが駄目ならくそ」
「駄目!それも駄目!」
「…じゃあやっぱりしんぎ」
「そうね、その方がまだ無難…」
でもなあ、と俺はラーさんとサタンさんの死、
おまけに真白の式神契約をした全式神の死、
というものをどうすべきかなあと思っている。
絶望錫杖が攻撃して殺した後に吸収させてたんだから、
じゃあ、希望絶望錫杖となったあれを、
ばーんと折っちゃったらいいんでない!?
「烈火、希望絶望錫杖、出せる?」
「何で、何するの」
「ほらその、烈火がね、絶望錫杖として使ってた時に、
たくさんの方々をその中にと入れてたから」
「…折るとかすんの」
「いやあその」
こ、怖い。
3歳児なのに目が怖い。
「一応その、犠牲となった方々ってみなさんが概念のようなものだから、
何とかならないかなあと」
「折るの」
「いや折らないよ」
「じゃあそれ全部出せばいいの」
ん?全部、出す?
「希望絶望錫杖は俺の意志に沿って形態変化をするよ、
でもいつも俺の体内の武器庫にとあるから、
俺の身体とシンクロしてるの」
「ふうん」
「だからあの錫杖を出さなくても、
物理的には俺の持論と繋がってる武器庫から出さなくても、
中にと閉じ込めた奴らはすぐにと出せるよ」
「そうなの?じゃあさあ、出して欲しいかなあ」
俺は烈火にとお願いしてみる。
「また遊んでくれる?」
「うん」(あれだよな…あの武器攻撃加えての…)
「じゃあ出したげる」
烈火が右手を前にと出して、ぐっぱ、ぐっぱ、とする。
その時、ずだだだだだだだだだだだだだという雪崩な感じで、
みなさんが帰って来ました。
ただやはり、絶望錫杖に吸収された、ということで、
本来の状態にとリセットされてしまったようで、
そのいい例(いい例と言っていいのか…)が、
太陽神だった。
『…何だ、ここは』
ああああああ!性転換手術して淑女となってたラーさんじゃなくなってるー!!!!
式神さんたちはリセットされました(式神契約が白紙になったので)
『ふむ、それでこのちっこいのが俺が前にと守護契約を交わしたという論者か』
「いやその、もう烈火は別の烈火なので、
太陽神さんの守護契約を交わした相手ではないです」
『で、何かの論者なのかこのちっこいのは』
「烈火の持論は『時間軸変異論』というものですね」
「ちがうよもとなり」
え、烈火、違う!?
「俺の持論、『××××』だよー」
「…それはそれでモザイクかけないとだね」
「でももとなり、こいつ、俺きらい」
「え、太陽神さんだよ?烈火は炎系統ってところでお似合いだよ、
お友達とかになってもらえば?」
「やだよ」
「そ、そう」
『では俺にはこの場にといる必要性はないな、
元の神話世界にと戻るとする』
「あ、その、太陽神さん、神話世界はその、
烈火が多分、ぶっ壊した」
『…は?このちっこいのがか』
「多分だよ、
神話世界に行ってくるって言ってて、
その後応答なし、となればうん、神話世界は烈火がぶっ壊したと思う」
『…』
「それでえーと、サタンさんはどうして隠れてるのかな」
『元就、隠れておるのではない、
ひろさんのお食事風景を陰ながら見守っておるだけだ』
「…す、ストーカー…」
そしてあの、朱雀さんたちは。
「太陽神殿、我らは今一度バカンスにと赴く』
としてバカンスにと向かい、とうとう帰ってこないとなりました。
風神雷神さん双子、という方々は、
『なあ烈火君よ、筋トレの極意なんぞを知りたくはないか』
とまたもや筋肉談義。
それに対しての烈火は、
「やだ、もとなりと遊んだほうが楽しい」
とばっさり。
そして筋トレの一貫としてお二方は旅にと出て、そう、
帰ってこなくなりました。
輪廻龍、ヒドラのお二方は元々が真白の式神さん、
ということで本来の主の元へと戻り、
烈火が第二論者時代にと『お友達宣言』として式神契約をした、
という方々はそれぞれなる自由を求め、旅立たれました。
太陽神さんはいろいろと悩んでいるようで、
確か自分、守護契約をこのちっこいのとしたよな、とぶつぶつ呟きながら、
ただ帰る神話世界がないとなれば、
『何だ、洗濯か』
と俺が制服を超必死で洗っている(対洗濯機)のを見ていて、
『乾かしてやるか?』
とちょっと悩みながらも家にといてくれるようになりました。
烈火にはきらい、と言われておりますが。
で、サタンさんはひろのストーカー(ごめんサタンさん!)となり、
くろさんは俺のちょちょいとしたやつで無傷で、
今も真白の部屋でとひろとお昼寝中。
後悔に押し潰される真偽論者
「烈火、僕と遊ぶか」
「やだ、もとなりと遊ぶ」
「…」
「烈火、干渉覇レベル最大で相手をする、
だから」
「やだ、しんぎは弱いからつまんない。
もとなりと遊ぶ」
「烈火、料理をしてみた」
「くっそまずそ、
…言ったよね、邪魔するなら武器使用+持論展開するって」
俺は真白の肩にと手を置いた。
一応、真白の干渉覇とか真偽論でどうのっていうのは、
今の烈火には弱すぎる、とされていて、
まともに烈火は真白の相手をしていない。
相手してもらいたいという兄の弟思いなる行動をしても、
烈火が拒絶、
しつこいとなればなるで武器使用+持論展開、
ともなれば真白はもはやふて寝となる。
「そうだ烈火、絵本とかに興味ない?」
必死なる俺の勧め!
「絵本?」
「そうだよ、3歳なら、ちょうど絵本を読み漁るという年齢だよ」
「でも俺、武器の新開発の方が」
「いやいや、絵本はいいよー、ほらほらこれ、
すっごく泣けるいい絵本!」
「ふうん」
ということで烈火3歳に対しての絵本の読み聞かせ、
というものに俺は成功しました!
「すっごいね、神話世界ってとこにはいろんな神様がいんの」
「ほらほら、あの太陽神さんがそこのトップよ」
「ふうん、じゃあどうでもいいや」
がーん。
「それよりもとなり、今日は陸上戦で遊ぼう」
「…」
もはや、おにごっことか、かくれんぼ、
という名前は遥か彼方です。
そして真白はふて寝をしながら、
ものすごーく後悔をしております。
概念戦闘篇、第陀話『ばっさり3歳児』