14 - 1 - 確立されない詩。
夕空は相容らずとも受け入れて、コントラストを引かずに溶けた。
過ぎたればあさい私も辿り着くのに。
濃淡は移り変わり続ける。
言い表せるほど確立された心象風景もなければ、
自分で塗った色すらもわからない。
手を伸ばした先に導はなく、
刻んでくれる座標軸もない。
故にここが何処にあるのかわからない。
何処であるのかわからない。
誰にだって切り抜けられる安楽な道は、
場所を選ばず存在出来てしまうのだろうか。
わからなかったから選ぶようになったのか。
選んでいたからわからなくなったのか。
情動に優先順位を付けること。
醜さを創って類うこと。
計算高い優しさ。
感情を精査すること。
言葉の不一致に悲しんだこと。
強がって抉り続けること。
不和を好んで課したこと。
無差別な投影。
矛先を選ばない良心。
生活は壊れていなければならないこと。
理由と行動が結びつかないこと。
時系列の情報を持たない記憶たち。
少しずつ欠けていく。
緩やかに落ちていく。
歩む毎に零れていく。
水玉を細い矢で貫き続けるが如く、
感知出来ない速度の破綻劇。
言葉から真実の境界線へ、
倒錯した手が伸ばされる。
虚構すら昏く拡げる今際の陽。
抗わない縁が解け、重なり合い、
引き剝がすように明滅する。
濁してわからなくなった意味を求めて、
零して足りなくなった中身を求めて、
影たちは手を取り合うように侵し合う。
いつしかそれは際限なく繋がり、
温かい闇に隙間なく満たされる。
その僅かな温もりは、
かつて陽光の下にいた言葉があるせい。
もう揺らぐことはない。
どこを見渡せど何も見えなくなり、
暗闇となった影たちは各々の消息を絶ち、
やがて私は全てを忘れる。
そうして言葉すら選べなくなった亡者を、
私は予め殺しておきたい。
既に死に題名を欠いていようと。
どうか、過ぎたる前に確立して欲しい。
詩の終わりは思考の終わりではなく、
どこにも届かず、誰とも向き合わず、何ひとつから過ぎ去れないまま、
朝が夜にならずともひとり回り続ける。
14 - 1 - 確立されない詩。