夢の詩の夢、亦夢

青津亮

 わたしの淋しさにはりつめている睡る水晶は、
 はや 真暗に清んでいると歌うことができない、
 飛沫のような銀の音楽がそれを瑕つけてきたけれど、
 暗みに曳かれ奥へ往く一条の光は、裾をひるがえした。

 わたしの淋しさをいきれする睡る水晶は、
 はや まっさらな暗闇に磨れてめざめはしない、
 真夜中こそわたしの冷然硬質な水晶が眸へ剥かれる時、
 されど暗みから昇り沈むような無辜は、嗚何処に奔った?

 むせかえるような完全な憧れは 青薔薇の吐くいきれ
 むっと充ちみちる豪奢なる一条への放擲、全的なそれ
 滅亡へ投げこまれた槍としての希望ははや見失い、茫然。

 歌こそ 嗚、歌こそがわたしの夢であり 単調であった、
 如何なる計算された宗教画のタイルよりもわが身惹く、
 単調な線 無個性な光 匿名の音楽──わたしには詩が夢だった。

  *

 わたしは夢の裡で詩をみいだし 詩で夢を曳のばし、
 おそらくやその真暗な國から失墜するだろう それがわたしの夢。

夢の詩の夢、亦夢

夢の詩の夢、亦夢

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-18

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