その一文が、致命的だった
加月りよ
SNS上で、毎日決まった時間に語りだすアイドルがいる。
アイドルとファンとの直の交流だ。
彼女の明るさと気さくさからか、若い男女にとても人気だ。もちろん歌もヒット中である。
私はにわかファンだが、その時間をとても楽しみにしていた。ほぼROM専なのだが。
アイドルとファンのやりとりをスマホで見つめていた。面白いなぁと思いつつ愉しんでいたのだが。
とある話題を、ファンに振られたアイドルが一文を返した。
その一文を見た瞬間。
──あ、無理。
百年の恋も一瞬で冷める、ではないが、アイドルへの熱意が一瞬で冷めた。それ以上の生理的な嫌悪感。
そんなことを言う人と思わなかったのだが。
不特定多数に見られる場で、当人に悪気はなかったとしても、書いてはいけない言葉があると思う。
私はもう、このアイドルの顔も歌声も話し声も、SNS上の文字も見たくない聞きたくない。
完全に受け付けなくなってしまった。
その一文は、私の個人的な倫理観でも、到底許せない言葉だったからだ。
実際その一文で、アイドルのSNSは炎上した。動画サイトにも批判コメントが殺到した。
ファンの擁護のコメントもあったが、批判が多数だった。ネットのニュースに取り上げられるほどになってしまった。
最終的にアイドルは謝罪の言葉を乗せ、SNSや動画などを削除した。音楽活動やCMの放送もなくなり、無期限自粛となった。
なんというか、人として書いてはいけない言葉だったのだ。
高いお金を出して必死に集めたグッズ。CDやDVD、写真集や画集。推しに囲まれた幸せはもうない。
もはや見たくもない、嫌悪のゴミであった。
ネットのフリマで売る気もなく、私はそれらの全てを粗大ごみとして捨てた。
以降、私はアイドルを排除した。二度と、顔も見たくない声も聞きたくないからだ。
その一文が、致命的だった