ずるいよ

ずるい!ずるいよ!

あれは、ハンバーガー屋さんに行ったときだった
2時間も車を走らせてたどり着いた店
近場には無い希少なハンバーガー屋さん
ウキウキとして大きいハンバーガーとたくさんのポテトを注文する
食べ切れるだろうけどもお腹いっぱいになるかもしれない
苦しい未来はまだ見えてない
ウキウキの気持ちが食欲を増進させたかのように錯覚させる

週末だから人がいっぱいだった
カウンターの隙間に入らせてもらう
携帯をいじっていると待ちに待った番号の呼び声
人が番号で呼ばれる
人によっては不快に感じるかもしれないけれども
今の私には関係ない

トレイの上には実現した夢の塊が乗っている
気持ちが早まっても
落とさないように体はそろりそろり
着席の直後にコーラで喉を潤す

さぁ、ハンバーガーに齧り付こう
パンとお肉が頬にたまる幸せ
舌に備わった味覚よ
早いうちに喉の奥へ流さないようにするから
持てる力を振り絞って味わってくれ
旨味・塩味、コーラを流せば甘味も加わる特別な日のハーモニー

舌が味を噛みしめるなら、私の脳は感情を湧き上がらせる
待っている間の楽しみは、食事を初めて開放されることで喜びへと姿を変える
ああ、ハンバーガーよ
大きいハンバーガーよ
私はあなたと同じ時代を生きることができて幸せです

ふと、隣の人を見てみる
若い短髪の男の人だった
特筆すべきは側頭部の刈り上げ
強そうな印象を受ける
もしや、好戦的な部類の人なのか

そう思うと縮こまる私の体
ソースがベージュ色のズボンに落ちる
拭っても取れない幸せの塊から漏れ出した液体
何故か今ではテンションを下げる原因と化している

車に乗るまでズボンのシミをどうやって隠しながら歩かないと行けないのか考える
なにせ、週末は人通りが多い
人目につくのはさすがに気にする

幸せの盲目効果は期待できない
隣の強そうな人を何気なしに見てみる
この人がきっかけとは言わないけれども
私の目線はそう語っていたかもしれない

隣の人は食事を終えていた
直後に私は目を疑った
僅かな時間、カウンターテーブルの下で小さく両手を合わせていた
タイミングからして間違いない
ごちそうさまを体で表現していたのだ

私は勝手な思いにかられ
勝手にズボンにシミをつくり
勝手に隣の人に歪な思いのまま視線を投げかけていた

その結果、視線に映るのは合わさる両手
心なしかペコリと頭部も下げたように見える
もう良い人にしか見えなくなっていた
今までの私の思いが恥ずかしくなってくる

ずるい!ずるいよ!

ずるいよ

ずるいよ

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-15

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