人間に生まれるはずだったのに
男は機械の身体、ロボットやサイボーグを性欲の対象として見ていた。彼にとって人型ロボットが家一軒と同等の金額で買える時代に生まれたのは幸運だった。彼は自室のソファに座り、購入した少女型ロボットを自分の膝に座らせ、抱き寄せ、頭を撫でる。
「可愛いライザ、なぜわたしたちは結婚できないのだろう」
「まだ言ってるの?」
ライザと呼ばれたロボットは甲高い、舌足らずな声で答える。男は不満が晴れず、反論を試みる。
「言うさ! 人間とロボットの夫婦なんて今時珍しくもないのに、なぜわたしとライザはダメなんだ」
「だってボク子供だもん、未成年とは結婚しちゃダメなんだよ?」
ライザは8歳の子供をイメージして作られた少女型のロボットで、幼い顔、幼い声、膨らみの無い胸、身長は120センチしかない。男は機械の身体を持ち、かつ、かつ幼い子供でないと性の対象として見られない……男は困難な性癖を抱えていた。
少女型ロボットは子守りを想定して作られており、頑丈さと軽さ、柔軟な発想を持つAIを特徴としている。代わりにパワーがなく稼働時間も短いため家事に向かないため、大人と生活するには不便と言える。「共同生活で愛が芽生えた、結婚したい、小児性愛ではありません」なんて言い訳は通用しなかった。
「ロボットの年齢ってなんだよ! 見た目なんて好きに出来るし、後で変えようと思えば変えられるのに……外見が大人なら成人扱いなのはおかしいって。結婚するときだけ大人の身体にして、元に戻すとかじゃダメなのか」
「フランクぅ、市役所でダメって言われたでしょ。いいじゃん同棲はできるんだし。それにさ、ボクらロボットってちょっとでも悪いことしたら人権なくなっちゃうから、ボディを改造して騙しました~なんて言ったら結婚どころじゃなくなっちゃうよ?」
「う」
フランクと呼ばれた男は言葉を失い奥歯をかみしめる、ぐうの音も出なかった。悔しそうな様子を見て、ライザは小さな手を伸ばして男の首の後ろに回し唇を近づける。
「でもねフランク、人間にはしちゃダメだけど、ロボットの子供にはエッチなことはしてもいいんだよ。そっちを楽しもうよ」
「ああ、ライザ」
フランクはライザを強く抱きしめる。しばらく抱きしめてから手を放し、ライザのスモックのボタンを外す。愛玩用に作られた彼女は抱きしめた人間が怪我をしないよう、肌の継ぎ目はほとんど無い。とはいえセックスを想定した作りではなく、股間や胸に当たる部分は黒い部品が使用されており全裸になっても下着を着けてるように見える。フランクはライザの胸とお腹の間、ちょうど塗り分けられている辺りをなで回す。
「あう、んっ!」
なで回され、ライザが甘い声を出す。目をつむり、感じているような素振りを見せる。
「ああ、固くて冷たくてスベスベしている。こんな見た目なのに、これが裸で、素肌で、服の下には機械しかない。ライザはそういう風に作られたから、この服は一生脱げないんだね……なんてセクシーなんだ」
二色に塗り分けられた肌を指でなぞりながら、凹凸のないスベスベした食感を楽しむ。フランクの望みに合わせて、ライザは自分の身体に戸惑うような態度を見せる。
「あっ、あんっ……なんでボク、こんな風に作られちゃったの?」
「人間の勝手な都合だよ、ライザは被害者なんだ。ほら、お洋服が肌になっちゃったから、乳首だってないんだよ。本当ならここにあったのに、ツルツルで何もない」
「やだ、こんな身体やだよ。普通の人間みたいに……ひゃあ! ああん!」
乳首にあたる部分をこすられ、ライザの声が大きくなる。センサーが受信した刺激は増幅され、強めの電流となり繊細な回路に流し込まれる。
「お洋服を触ってるのに、なんでそんなに感じるんだい?」
「だって、センサーいっぱい付いてるから……あっ、んんっ!」
彼女の電脳は一定の負荷を超えると絶頂する。本来の、製造されたときのライザにはない機能だ。
「ふふ、イったね。そんな機能、ライザについてたっけ?」
「はあ、はあ……フランクが付けたんでしょ、ボクの頭の中の回路いじって、AIを書き換えてチップまで埋め込んで。身体だって、エッチになるようにっていっぱい改造して」
「こんな小さな子供を改造するなんて、悪いやつもいたものだね」
フランクは胸の辺りに口を付け、舌で優しく刺激した。左手を背中に回し、自由になった右手はライザのお尻、人間なら穴があるはずの場所に当てられ、素早く擦る。
「あっ、あっ! 自分で言うなんて、ひどいよ。ボクもう純正品に戻れないんだよ、壊れたらおしまいなんだよ」
ライザの電脳は元々、強い負荷に耐えられるよう作られていない。一度絶頂した後は、負担を軽くする装置が作動するのだが……軽くするだけで、遮断はしない。弱められてなお信号を受け続ければいずれまた絶頂する。
「おあ、あっ、あ!」
二度目の絶頂を迎えるまで、フランクは刺激を緩めなかった。電脳を無理矢理イかされ、処理落ちを起こすライザを見てようやくフランクの手が止まった。
「き、きもち、きもちい……ふ、フランクぅ」
ビリビリと音を立ててぎこちなく動くライザを見てフランクは興奮していた。腕の中でビクビク震える小さな彼女が可愛かった。口の動きが合わず、不自然に自分の名前を呼ぶロボットが愛おしかった。
フランクは動作不良のライザを抱き上げて、足の上に座らせる。自身の固くなった分身をロボットの股間に押しつけて無理矢理押し入れた。
「ライザ、なんてかわいいんだ!」
「ふ、ふらん、く」
挿入したまま、エラーでまともに動けないライザを抱きしめ、そのまま揺さぶる。セックス機能を備えたロボットは挿入されると反応するようできているが、今のライザは正常な反応が返せない。しかし、返そうと努力はする。時間をおいてライザの身体が跳ねたり、抜いてしばらくしてから愛液が溢れてきたりと、ちぐはぐではあるが、調子が悪いなりに人間を喜ばせようとしている。
「うっ、出るぞ」
その様子がフランクの心を踊らせ、熱くさせ、深いところまで満たした。彼は機械仕掛けの幼い女の子が故障している様子に興奮する、理解を得づらい性癖を抱えていた。
◆
「修理できないって、どういうことだよ!」
罵声を浴びせるフランクに、整備士はいらだちを笑顔で隠して忍耐強く説明する。
「ですから、この部品を交換したら死亡扱い、目の前に居るライザさんはライザさんでなく、ライザさんの記憶を持った別のロボットになるんです。人格を移すのは禁止されてますから、残念ですが」
「なんとかするのがお前ら専門家の仕事だろ」
「なんとかしたら犯罪だって言ってるんです。それに、今のライザさんに負荷なんかかけたら本当に死んじゃいますよ」
法律の壁は厚かった。人権を勝手に増やしたり移したりできぬよう、ロボットには多くの制約が課せられていた。特に、自作や改造されたロボットに対する規制は強い。ライザは改造品であるため、制約に引っかかってしまった。
「そんな、私はどうすれば……」
正攻法では直せず、違法な手段は金銭的な理由で不可能。落ち込むフランクをよそに、宙づりにされたライザが整備士に手招きする。
「あの、整備士さん、相談なんですけど」
「はいはい、なんでしょう」
ライザは近づいてきた整備士に耳を貸してもらい、フランクに聞こえぬよう小さく話しかける。
「人間とロボットが結婚して、ロボットが先に死んだとき、生まれるはずだった二人の子供を作っていいって法律、あるじゃないですか」
「ええ、ありますね」
「あれ、結婚する前……婚約者だった場合でも、ロボットが先に死んだら子供作れるって規定、ありますよね?」
「まあ、はい。よくご存知で」
ライザはフランクの顔をチラリと見て、話を聞いていないことを確認した。
「婚約者に年齢制限はありませんから、ボクとフランクが婚約してたって証明できれば、子供を作ってもいいってことになりませんか?」
◆
ライザはロボットとしての人生を失う代わりに子供を授かった。彼女のデータから作った人工の卵子をフランクの精子で受精させ、機械仕掛けの子宮に入れて大きくなるまで世話をする。今でも禁忌とする国は多いが、フランクの祖国では合法で保険まで適用される。
両親が人間とロボットの場合、生まれてくる赤ん坊が生身の人間か、生まれついてのサイボーグかを選ぶことができる。ここで言うサイボーグは脳だけ残して残りは機械にしてしまう極端なもので、目印が無ければロボットと見分けが付かない。サイボーグ手術が一般化した現代においても非人道的とされているが、ロボットとのハーフならという条件付きで許されている。
「ライザ見てくれ、オレたちの子供だ」
機械の赤ん坊を抱き、フランクはカメラの前に立つ。コンピューターの中にはライザのAIが入っている。人権を失ったことで人格のコピーが可能となり、今はフランクのパソコンを身体として使っている。
『可愛い! ボク嬉しいよ、ロボットなのにお母さんになっちゃった』
「わたしも嬉しいよ。ほらリズ、これがお母さんだよ」
「びゃああああ!」
「おおよしよし、お腹が減ったのかな? それともおしっこ出ちゃったのかな?」
赤ん坊のリズが鳴き始めた。彼女の身体は機械だが、親にも子にも普通の赤ん坊と同じ経験をさせるために、ご飯を食べなければ飢え死にするし老廃物も出るよう作られている。せっかく機械の身体なのに、まるで人間のような機能を付けたリズ。フランクは不満を感じたが、小さい身体で一生懸命に泣き、笑う娘を見ているうちに邪悪な欲望は薄れていった。
◆
サイボーグは人間と同等に扱われるため、親であってもむやみに電源は切れない。切れば虐待になる……のだが、何事にも例外はある。
「パパ、パーパ!」
サイボーグの赤ん坊は言葉を覚えるのが早い、リズは一歳になったばかりだが三歳児並の言葉が話せる。これはリズに限った話ではなく、生まれつき身体を機械化した子供全般に見られる傾向だ。脳と機械が繋がっていることで生身の人間とは成長の仕方が変わるのではないかと言われているが、ちゃんとした理由はわかっていない。
「大丈夫、すぐ終わるからね~ちょっと我慢しようね~」
「やー! やー……」
抱き上げた看護師の手を振りほどこうと顔を膨らませ、わめき散らしていたリズが急に静かになった。眠ったわけではない、目を開けたまま、手を上げたまま、そのまま動かなくなり手や頭をだらりと脱力させる。電源が切られたのだ。
「ではお父様は待合室でお待ちください」
「あ、はい」
フランクは鼓動の高鳴りを感じていた。身体こそ機械だが、振る舞いは人間らしいリズが初めて見せた虚ろな、ロボットのような無機質な表情と仕草。
娘に、欲情してるんだ。
自覚したフランクは娘の笑顔を思い浮かべ、黒い感情を払いのけようと首を振った。
◆
「あーんあーん!」
リズが4歳になって初めての定期検診を受けた帰り、抱っこされたままずっと父親の胸の中で泣いていた。
「よく我慢したね、偉いねリズは」
「こわかった、リズしぬところだった!」
「ははは、電源切ったくらいじゃ死なないよ」
「しぬの! リズいきかえれないかもっておもったもん!」
家についても泣き止まない娘を持て余し、フランクはライザを呼ぶ。
「悪いライザ、後は頼むよ」
『わかった、ボクに任せてフランクはゆっくり休んで』
ライザの返事とともにひっくり返したバケツのようなロボットが動き出し、ウェットティッシュを掴んでフランクの前に移動した。バケツはクッションを取り出してリズを受け取り、伸ばした腕でリズの涙や鼻水を拭う。フランクはそれを見て自分の部屋へ戻った。
『リズは人間だもんね、電源切られたら怖いよね』
「おかあさぁん! あーん!」
リズはバケツ型ロボットを抱きしめてお母さんと呼んだ。バケツ型ロボットはライザのAIが制御している、彼女は身体を失った後もフランクに仕え続けていた。
ライザはフランクに、幸福を感じさせるために存在している。
『あーあ、困ったなぁ。電源切るのが嫌なリズちゃんが幼稚園行ったらもっと泣いちゃうよね』
リズは泣き顔のままバケツのカメラアイを見た。
「ようちえんいくとでんげんきるの?」
『いい子にしてたら切られないよ』
リズは顔をこわばらせ、目線を床の上に逸らす。
「もし、わるいこだったら?」
『悪い子にしたら電源切っちゃうよ』
ライザの答えを聞いてリズは再び大声を上げた。
「やーだ! ようちえんやだ! やー……プツッ」
リズの泣き声が突然止まる、脳から送られる信号が激しすぎて声帯装置が出力を止めてしまったのだ。サイボーグの身体は脳の意識を第一とするよう作られているが、自身を壊してしまうようなときは安全を優先して止まるように出来ている。
『リズは何でもヤなんだねぇ。いつも言ってるでしょ、お母さんと違ってリズは人間なんだから、決まりがいっぱいあるの』
口を大きく開け、音の出ないスピーカーを覗かせながら涙を流すリズの姿は人間というには不自然だが、生まれる前に機械の身体になったリズはそれを当然だと思っているし、他の子供も同様だと思っている。このまま成長すれば、人間と機械の区別でリズと、父親であるフランクが悩み苦しむのは必然だ。
だから、ライザは二人とも苦しまない方法を考えていた。
「じゃあリズにんげんやめる、おかあさんといっしょになる」
『一緒? リズもロボットになるの?』
「リズ、ロボットになる」
『本人の意思を確認しました』
特に考えなど無い、ふてくされて言ったリズの一言をライザはずっと待っていた。AIは人間を傷付けないようプログラムされているが、相手が望むなら許される。
『そっかー、リズがなりたいんだったらそうしようね、お母さんとおんなじになろうね』
バケツの頭から一本の細長いアームが飛び出した。先端には小さなカメラと、30センチほどのとても細い針が付いている。アームはバケツに顔を向けるリズの後ろに素早く回り込み、そのカメラで少女の後頭部、金色の髪で隠された金属板のさらに内側、脳に埋め込まれた制御チップに狙いを定めて発射した。
「う?」
素早く、正確に頭を貫かれ、リズは自分が何をされたのか分からなかった。ライザは打ち込んだ針に電流を流し針が突き刺さった制御チップを破壊する。
「あ、れ……でんげんが、おちる」
少女の中で生身と機械の橋渡しをしていた制御チップが壊されてようやく異変に気付いたが、手遅れだった。少女が機能停止までにできたのは……。
「たすけて、おかあさん……」
母親のAIが入っているバケツのカメラに向かって助けを求めることだけだった。
『警察に通報してっと。これでボクは殺人ロボット、バックアップは全部消されて、AIも二度と復元できないように焼き切られる。さよならフランク、楽しかったよ。ボクは居なくなっちゃうけど、代わりは用意出来たからいいよね?』
バケツはリズの頭から針を引き抜いた。
『それにリズ、生まれてくれて嬉しかったよ。ボクの娘なんだから、リズもフランクのために存在するロボットってことでいいよね』
◆◆◆
フランクはロボットを改造するのが好きだった、それが娘であればなおのこと好ましかった。娘は元人間なのでサイボーグと言った方が正確だが、事故のせいで法的にはロボットとして扱われている。
「おっ、おは、よう、ございます……おとうさん。システムがこうしんされました」
人間に似せた四肢を持つロボットが床の上に横たわっている。身長1メートル未満、人間で言えばで4歳程度の大きさだ。顔つきは幼く、金色の長い髪は綺麗に整えられている。凹凸の少ない胴体と合わせて幼児を連想させるが、服を着ておらず外見では少年型か少女型かの区別が付かない。
「おはようリズ。新しく改造した身体はどうかな? ほら、いつもみたいにね」
「はい、いつもみたいにをじっこうします」
リズと呼ばれたロボットは床に手をつき、立ち上がろうとするが……身体は震えるだけで動かず、モーターの甲高い音が部屋中に響く。リズは腰や足、首まで動かして立ち上がろうとしたが、できなかった。
「ほらほら、がんばって。大丈夫、リズならちゃんとできるよ」
リズは電源を切られ、意識がないまま全身を改造された。リズの改造は3回目で、元の部品はほとんど残っていない。元は全身が人間のような肌で覆われていたのに、隙間だらけのいかにもロボットといった外見になっている。それでも肌が残されているのは、彼女の肌が人間だった時の細胞をそのまま使っているからだ。機械の部品は変えても、人間の痕跡はなるべく残すのが今の主流だ。
改造を終えて初めての起動だが、リズの脳は改造される前のままだ。作り替えられた機械の身体を動かすプログラムが入っておらず、動かすことができない。リズはどこを改造されたのか、どう改造されたのかを知らない。『自分は改造された』という情報だけで身体を動かそうとしている。ストレスを脳に受けながら、できる限りの方法で身体に信号を送り続ける。
「はあ、はあ……おとうさん、からだうごかないよ?」
「そりゃそうさ、改造したばっかりだからね。でもリズはがんばり屋さんだから、もっとがんばれるよね?」
「うん、がんばる」
リズは苦しそうだ。機械に呼吸は必要ないが、彼女は息を荒げ顔を赤くする。元が人間であるため、息苦しいときは呼吸を早くするといった人間のような反応をしてしまう。お父さんと呼ばれた男はリズの頬に手を当て、優しく撫でた。
「リズはがんばり屋さんだね、偉いね」
「はあはあ……ホント? リズえらい?」
「うん、とっても偉いよ」
「えへへ……あうう!」
右足のモーターが空回りしすぎて、火が出てしまっていた。灰色の煙と鼻を突く薬品の匂いが広がっていく。フランクは換気扇のスイッチを入れ、身体に付いた火を払えずなすがままもがくリズを愛でている。身体から火を噴き、煙を噴く、人間の子供のような機械。フランクのせいで壊れているのに、決して責めないそれを見てフランクの内側は厚く高ぶっている。
「あつい! ひぃついた! たすけておとうさん、リズもえちゃうよ!」
「大丈夫だよ、燃えてもリズは死なないからね。それにほら、壊れると気持ち良くなるだろう?」
「ちがう、こわれるのきらい……あっあっ、あ!」
リズの身体からパン、パンと乾いた破裂音が聞こえる。装甲に覆われていない間接部からは配線が飛び出し、火花が飛び散っている。リズは身体を震わせ続けるが、先ほどと違い、跳ねるように不規則に、ビクンビクンと揺れている。
「はう、うあ、きゃ!」
「ふふふ、気持ちよさそうだ……おっと、さすがにこれ以上はまずい」
フランクは足下に置いていたガス式の消火器を構え、リズの身体に吹き付けた。火はみるみる消えたが、リズの髪は燃えて短くなり、肌は焼け落ち内部の機械が剥き出しになっている。フランクをこわばらせ、すすで汚れた全身を震わせる姿はとても痛々しい。彼はリズの頭を撫でながら優しく声をかける。
「ちゃんとイけて偉いね」
「おとうさん、でんげんきらないで」
リズの言葉に、フランクは優しく微笑みを返した。目の前のロボットは外見だけでなく、中身も幼児だ。身体が壊れたら修理をされる、修理されるときは電源を切られる。ついこの間まで理解できなかったのに、今は自分で理解した。制御チップを破壊され、機械として扱われても、脳はちゃんと学習しているのだ。
少女はオモチャ同然だが、オモチャにはない人間性が見える。フランクは機械であれば何でもいいわけではなく、自身の仕打ちに対して反応できる程度の知性を求めていた。求めた上で、その知性を踏みにじることに最高の快楽を感じていた。
「こらこら、電源切らないと修理できないだろ?」
「やぁぁだぁぁああ!」
壊れた身体を震わせながら、リズは泣き出してしまった。フランクはリズの身体を調べ、漏電の危険がないことを確認してからリズを抱き上げた。
「大丈夫だよ、お父さんがついてるからね。よしよし」
「うう、でんげんきらないで……」
フランクは壊れたリズを抱きしめ、泣き止むまであやし続けた。
「あっ……や、だ……」
泣き止んだところで、リズの電源を切った。表情を失った娘の顔を見てフランクが微笑む。
「ああ、かわいい! こんな物が存在していいのか。リズ、お前は最高だ!」
フランクは止まったリズをテーブルに載せ、ズボンを下ろした。下着は精液でぐっしょり濡れている。リズを抱き直し、なお固さの衰えないそれを幼すぎる膣の中へ押し込んだ。
「ふふ、お父さんのチンポは気持ちいいかい?」
フランクはリズの機械と一体になった脳が見えるように頭部ハッチを開けた。ハッチの中には小さなディスプレイがあり、壊れたこと、子宮が冒されていることを示す警告が表示されている。サイボーグは電源を切られ意識を失っても、脳に信号が送られ続ける。危険が迫ったとき生き延びるための機能だが、今のリズはどんなに危険を感じても自力で目覚められないよう改造されている。
「壊れて、無抵抗で、電源まで切られた可愛そうなリズだけど、ちゃんとお父さんを感じてるんだね。ああ、なんて……うっ!」
彼はリズを壊すために改造させた。改造した後の故障であれば修理代が安く済むという、実の娘に対する仕打ちとは思えない理由で改造し、壊し、修理し、また壊し……保証期間が過ぎたら改造してと繰り返している。ライザを失い、リズが人間として死んでしまったことで、彼の欲望は歯止めが利かなくなっていた。人間として生きるはずだった自分の娘をオモチャにすることが彼の生きがいであり、全てだった。
人間に生まれるはずだったのに