「カモミールの紅茶」
とうめいな悲しみを
カモミールの紅茶に溶かして呑む
冷たい水の室の中
雑踏の人声は遠くに押しのけられ
この耳を苛立たせもしない
とうめいな悲しみはほの甘く
そして薬の匂いがする
赤くて丸い精神安定剤の香りである
カモミールの紅茶からは
白い煙の揺らめき
おぼろの霞漂わせ
月の色は黄か青か…
恋しきカモミールの香り その味
舌に絡まる切ない懇願
カップのソーサーに臥せる音すら胸に迫る
傾げた器に
悲しき琥珀の月ぞ揺れる
「カモミールの紅茶」