「カモミールの紅茶」

 とうめいな悲しみを
 カモミールの紅茶に溶かして呑む
 冷たい水の室の中
 雑踏の人声は遠くに押しのけられ
 この耳を苛立たせもしない

 とうめいな悲しみはほの甘く
 そして薬の匂いがする
 赤くて丸い精神安定剤の香りである

 カモミールの紅茶からは
 白い煙の揺らめき
 おぼろの霞漂わせ
 月の色は黄か青か…
 恋しきカモミールの香り その味
 舌に絡まる切ない懇願
 カップのソーサーに臥せる音すら胸に迫る
 傾げた器に
 悲しき琥珀の月ぞ揺れる

「カモミールの紅茶」

「カモミールの紅茶」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-11

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