愚者達の逃避行
生きていていいのか
生きていていいって何だ
生を枷になぞらえるような
俺を憐れみの目で眼差すお前は何様なんだ
いまさら何を見ろというんだ
あの手この手で俺を陥れる世界に対して
いまさら何を望むというんだ
乞うなんてのは俺が最も嫌っていることだ
誰かに何かを乞うくらいなら死んだ方がましだと思って生きてきたんだ
俺は数多の救いの手を振り払ってきた
他人が差し出す救いは不完全だと弁えていたからだ
だが俺は誤っていた
俺が独力で掴んだ救いでさえ不完全だと
救いなんてものは須く不完全なのだと
伽藍堂なのだということが判らなかった
それなのに、独りで去ろうとずっと画策していたのに
わからず屋の俺の前にわからず屋のお前がまた現れて
遂に諦めてしまいそうになる
愚者達の逃避行