雷ゴロゴロ

ある夏の日、小さな町に雷鳴が轟き渡った。ゴロゴロという音が空を揺るがし、雲が暗くなっていく中、町の子供たちは興奮と恐怖を胸に抱えていた。

その子供たちの中には、雷神の存在を信じる者もいた。彼らは恐れ多くも雷神を祀った神社に通い、雷が鳴るたびに手を合わせて祈りを捧げていた。しかし、中には雷神の恐ろしさを語る者もいた。

その中の一人、幼い頃の私は、ある日雷神についての噂を聞いた。友達から「雷神は乳幼児の臍を主食にしている」という話を聞いたのだ。当時の私はまだ幼く、そんな話を真に受けてしまった。

恐怖に震えながらも、私はその噂を家族に話した。しかし、父や母は笑っていた。「そんなことはないよ」と言ってくれたが、私の不安は晴れることはなかった。

ある日、私は勇気を振り絞って神社に足を運んだ。雷鳴が響く中、私は手を合わせ、心の中で「雷神さん、乳幼児の臍を食べないでください」と祈り続けた。

すると、そこにいた子供たちが私の周りに集まってきた。彼らも同じように雷神に恐怖心を抱えていたのだ。私は彼らにも噂を話し、一緒に祈りを捧げることにした。

しかし、その直後、雷神が現れたかのように大きな稲光が空を貫いた。私たちは恐怖に打ち震え、地面にしゃがみ込んだ。

すると、雷神の姿をした大人が現れた。彼は私たちに向かって笑みを浮かべながら言った。「そんなん放置してる大人も大人やん!」

私は言葉に詰まった。本当に怖いのは雷神ではなく、人間なのだと悟った瞬間だった。

その大人は私たちに鉄拳を振り下ろし、私たちは制裁を受けた。泣きながら逃げ出す私たちを見て、彼は満足げな表情を浮かべた。

それからというもの、私は雷神の存在を疑うようになった。雷鳴が響くたびに、私は心の中で「本当に怖いのは雷神ではなく、人間なのだ」とつぶやいた。

そして、大人になった私は、子供たちに雷神の噂を語らないようにした。彼らが無邪気に笑いながら遊ぶ姿を見て、私は子供の頃の自分を思い出した。

雷ゴロゴロと鳴る夏の日、私は心の中で思った。「本当に怖いのは雷神ではなく、人間の恐ろしさなのだな」と。

雷ゴロゴロ

雷ゴロゴロ

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-10

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