10 - 1 - 言えないこと。

言えないことを数えるのもまた、忘れたことを数えるくらいに難しい。
願うという行為や祈るという行為には、そうせざるをえない、どうしようもなく大切なものがあるのだという証になるのだろうか。
ずっと同じ感情ではいられないように、本当の意味で思い続けることは出来ない。
自動的な思考は自動的に移り変わる。
詩を書くということを、不要なものを切り捨て、意味の通る形に整えるこの行為を、許してはおけないと思う。
けれどその範囲が私だけならば、それへの返答は制裁でも諦めでもどちらでも構わないのだ。
考えるという手段だけが残ったけれど、それこそが自己完結の中心地であるのだから、矢張りこれは、私の為だけの延命行為だ。
どこまで行こうとどこまで変形しようと、言い続け言い続け、言えないことを減らそうとしている。
言葉という抽象的な枠を宛がい、本当の意味をわかれないと言うくせに、その行為に満足している。
これは間違ったことだと、どこかの私が責めなければ立ち行けないくせに、自動的で仕方がないのだと免罪符を掲げている。
救われないことを願うくせに、ひとりの範囲内で救いを感じている。
そんなようなことばっかりだ。
忘れてしまったことを除くのなら、言えないことは少ないのだと思う。
言ってはいけないこともこうして言えてしまうのだから。

10 - 1 - 言えないこと。

10 - 1 - 言えないこと。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-08

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