9 - 1 - 言い訳。

このまま続けたところで私は狂わない。終わらない。
夢中(ゆめなか)は夢の中だけで在り続ける。
わかっているんだ。
それでも一度思ったことは言わなくてはならない。
たとえ、わからないという免罪符を使いたくとも、言わなくてはならない。
それは告白による救済を求めているからなのだろうか。
私は、わからないことを甘受してしまったのだ。
言う。全て言う。
上手く嘘を吐けているという実感だけが強く内に有る。
それも罰して、嘘を許したい気になってしまうせいで、一体どれだけの物々(ものもの)を壊してきたか。
何度でも言う。
理由は全て免罪符と言い換えられて、それだけを散々に繰り返してきた。
余りにも簡単に出来てしまうものだから、逆張りが大好きな私は矢張り、信じることが出来ない。
免罪符とか罪とか罰とか、そういうものすら使って、私は楽になっていく。
応報を夢見ることはいつ諦めたのだっけ。
一度でいいから大声で泣いてみたい。
声を出して、泣いて叫んでみたい。
強い人間が自分と似た苦悩を抱き、選択していく。
進んでいく。
どこかで重ねてみて、何も出来ないことだけは変わらないのに私は、と、言い訳を探すために頭が動く。
ずっと逃げている。
或いは逃がしているのか。
助ける、助けられる。
自分がどちら側にいるのか上手く言えない。
だから代わりのことを言う。
鏡を見て、瞳に明かりが映り込まない角度を探す。
見慣れているだけで、顔も人相も毎日変わっているのだろう。
鏡合わせの誰かを私も望むけれど、どれだけ運良く探し当てられたとしても、現実には近い者が精々だとわかっている。
そして近い者同士は、揺らし合い、壊し合うしかないのだと、臆病に卑屈に言い続ける。
ここで私は、この期に及んでまだ出会いを求めるのかと、きちんと嗤っておかなければならない。
誠実と素直の使い方をいつも間違えた。
今まで出会ってきた人達にも、もっとちゃんと伝えられていたのなら。
助け合いをしたかった。
本当に、本当だ。
本当だった。
杞憂が後悔に移り変わり、また間違えたのだと、けれど私はこれが正しいと言わなくてはならないのだと、わからないことを言う。
有り余った時間で、その惨状に甘え続ける。
ずっと、人を夢見てる。
これ以上の言い訳をするなら答えはひとつだ。
お前はひとりだから駄目なんだ。

9 - 1 - 言い訳。

9 - 1 - 言い訳。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-09-07

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