化物の美学
また壮大な独り言が始まったよ
愛だの救いだの何をほざいてやがる
ありもしないものを追いかけているうちに死ぬ
ありもしない記憶に縋っているあいだに
すべてが白紙になっていく
くすねた心臓で息を繋ぐおれは化物だ
自分という異物を殺すのに余念がない
救いようのない化物だ
救いようのない化物にも美学がある
すべてを嘲りながら抱き竦めるような美学が
おれは自分というものを端から信じていない
おれは救いという幻想を端から求めていない
おれはお前の望む方法でお前を愛したくない
壮大さが、白さが、醜さがおれを象っていく
孤立した化物の美学だけを眼差していたいのさ
沈黙を愛していながら黙れない人間の不器用さを
化物の美学