7 - 1 - 痛みと傷と殺意。
自殺を自分への殺意と表した。
それも嘘のようだ。
私に自分を害せる思い切りなどなかった。
カッターを腹に当て、力を込めようとした。
形の残る自傷を望んだ。
赤く黒く濃化していく血液を、この手で掬い取りたいと思った。
深く深く酔える妄想を幾度も繰り返した。
刃が触れる冷たく鋭い感覚に、あと少しの一押しを削がれ、
私は泣くしかなかった。
何が何が何が、したいんだろう。
それは許し難く苦しいことだ。
この期に及んで痛みすら避けた。
私が使う痛みとは妄想上の仮想上のものだ。
所詮脳は痛みを感じない。
またひとつ剥がれた。
またひとつ嘘がバレた。
またひとつ壊れた。
表現に知らない感覚を持ち込んではいけない。
痛みに救われるなどということはなかったようだ。
誰かの言葉をそのまま流用していただけだった。
私はきっと正常に痛みが嫌いなのだ。
痛みを感じずに傷付けることが出来たなら。
痛みも傷も殺意も、どれも似て非なるものだ。
戯言だ。
それらを切り離して考えられるわけがないのだ。
私はどんな代償を払ってでも逃げたいと思っているはずなのだ。
忘れるくらいなら身に刻んでおきたいと思ったはずなのだ。
あの時痛いと表したことは嘘だったのだろうか。
どの時だろう。いつの話だろう。
いつ何が嘘になったのか、私は憶えていないでしょう?
時系列などとっくの昔に吹っ飛んでいる。きっと既に嘘だった。
ただお前が忘れていただけだ。
ぐちゃぐちゃだ。
わからないことが増えていく。出来ないことが増えていく。忘れたことを憶えていられない。
わからないんだ。わからないんだ。わからないんだ。
いつも中途半端だ。
嗚呼、それでも、殺意だけは増していく。
7 - 1 - 痛みと傷と殺意。