蓮の華の上 ⑤
母の願いは、蓮の華の上に座っているような老後を送りたい。
そんな母についてのお話です。
蓮の花の上に座れるのかなあ。
ケンカ
「ほんとっに腹が立つわ~。あんた、どう思う?」
『どないしたん?』
母はご立腹です。
いつものようにこっちの都合はおかまいなしで
電話の向こうで興奮している。
近所に住む同級生の由宇さんとケンカしたらしい。
母曰く、由宇さんは皆んなの嫌われものだと言うことだ。
意地悪なことを言っては、ケンカをふっかけてくる。
先日の旅行で母が夜、床の間にパンツ(ショーツ)を干していたと言いふらしていると言うのだ。
※母には内緒だか、やりかねないと思ってしまった。
「いくら、私でもなんで床の間に干したりする?
ホントにそんな嘘よく言うわっ!」
『ふ~ん、それを誰から聞いたん?』
「由宇さんの従姉妹の幸さんやて。
そんなん気にしたらあかんよって 教えてくれたんさ。
あの子は昔からホラ吹きやし、誰も信じてないって言うてくれたけど、腹が立って寝られへん。
文句言いに行こ思うけど、どう思う?」
『辞めといたら。誰も信じてないならいいやんか。』
って、わざわざ知らせてくるんもどうかと思うけど。
「あの子(由宇さん)さ、小学校の卒業式でオシッコもらしたんやよ」
『...だから何?』
小学校って何年前なんや、50年以上前やんか。
『あのさ、そんな昔のこと関係ないんやない?
いつまでそんなん言うとるん?』
「私やないよ、みんな言うてるんやもん。」
70を過ぎて小学校の失敗を言われ続けるなんて、由宇さんが気の毒でならないわ。
意地悪もしたくなるよ...。
田舎へは、帰りたくないわ~
人の噂もなんとかって言うけど、半世紀も語り継がれるなんて、おとぎ話になってるやん。
ひどいわあ、怖いわあ。
蓮の華の上 ⑤