4 - 1 - 空。

抉り抜く痛みがただ唯一の救いで、
反芻と暗示と拘束は、これが嘘にならないようにする為のものだった。
空疎だ。
余りにも無意味だ。
わかっていたのだろうか。
そんなような気もするのは、もう忘れてしまっているからで。
(うろ)は余すことなく私を包括し、
一切の事柄はそれだけに集束して、
始点と終点すら御伽噺になった。
消息を知りたかった、もういない誰か。
忘れてしまうことを知覚し得ない私達は、何に対して安らぎを感じ、求めればいいのだろう。
手段だけがいつも、染み付いてあとに残るのだ。
忘れてしまった、壊してしまったいくつもの感情の代わりに、私を形作るのだ。
それにすら縋ってしまう私は、
それでも未だ、変化と忘却を(おそ)れている私は、


毎日、架空の手紙、架空の詞、架空の遺書を書く。
音にして、言葉にしたら、あとは夢中(ゆめなか)へ捨てにいくだけ。
だから、書いたそばから忘れていくのに。

4 - 1 - 空。

4 - 1 - 空。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-08-27

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