お砂糖とミルクはお好みで。

エッセイ集『たから箱庭』より。
折り本フェアにて配信 2020/10/3 発行

  今日も私はエッセイだの、小説だのを書いておりました。しかし、パソコンを叩いていると決まって出てくるあいつ。そう、睡魔! こいつがやってくると頭の中はお布団一色になるので、本当に困ります。ちょっと、今はお布団にくるまってる暇はないでしょ? 原稿もあるし、イベント用のエッセイ書く予定でしょうが!
 いやぁ、でも休息も必要です。無理をして書い昼過ぎまで寝てたでしょ!

 しょうがない。あの子に頼ろう。コーヒー! あまりにも眠気覚ましとしては安直ですが、最近私はコーヒーにハマっております。とはいえ、うちは嗜好品にこだわるだけのお金があるほど裕福ではありません。安いインスタントコーヒーです。 
 なんとなくお高いコーヒーと比べると後味にえぐみのようなものが残ります。私はこのえぐみをクリープをたくさん入れることでごまかしています。これはコーヒーを楽しんでいるというよりクリープを飲んでいるのでは……?
 そんなことは考えるだけ無粋です。安いコーヒーだろうと、高いコーヒーだろうと、コーヒーの粉を入れて、クリープとお砂糖を入れて、お湯をコップに注ぐ。そのときにふわっと広がるあの香り! あれに勝るものはありません。なんだか嗅いでいるだけで作業がはかどるような気がしてきます。勝手なイメージですが、文字書きの方はコーヒー片手に作業をしている印象がありました。なんかあれって格好いい。私もやりたい。とかいう馬鹿みたいな理由でコーヒーを何度か飲んでいるうちに好きになり愛飲するようになった、という経緯なのです。いわゆる文豪ごっこ。小説家ごっこですね。この文章を書いている人は文豪が温泉に缶詰になって原稿を書いていた、という逸話に憧れて一人で温泉合宿をするような人ですから、コーヒーに手を出すのも必然と言えば必然ですね。
 とはいえ実は、幼い私はミルクを入れようが、砂糖を入れようが、コーヒーが苦手でした。父がたまに飛行機の機内サービスで飲んでいるのを見かけました。好奇心旺盛な私は、
「一口ちょうだい!」
 と父から紙コップを奪い取って飲んだりしていました。これがまずいのなんのって。何これ、苦! なんで大人はこんなものを好んで飲んでるの? 舌がおかしいの? とか思った記憶があります。父曰く、機内サービスのコーヒーはちゃんとしているので美味しいのだとか。子供は黙ってオレンジジュース。そんな思い出があります。

 コーヒーが好きになった私は、今まで手を出したことのなかった缶コーヒーにも手を出してみました。私が自販機で買うものといえば、お茶一択です。私はジュースの類いをあまり買う習慣はないので、スルーです。しかし、それ以上にスルーされてきたものがあります。それがコーヒーだったのです。だって、特に興味なかったし……それも昔の話です。はぁー、長距離運転したあとのコーヒーはうまいなぁ。特にこれが冬の寒い日とかだと最高です。飲む以外にもカイロにする楽しみがありますからね。これで目が覚めたかどうかはわかりませんが、これで帰り道もなんとか運転頑張れそうですね!

それともう一つ。私にはコーヒーの思い出があります。というのは、私はオリジナル創作で森に住む女の子のお話を作っているのです。その物語の中では彼女に初めてできた人間のお友達に飲み物を振る舞うシーンがあるのです。さぁ、困った。何を出せばいいのだろうか。ただの川のお水を振る舞うのは情緒がありませんし、季節的に果物のジュースはありえません。今は春という設定です。季節感というものはとても大事ですし、私は頭を抱えました。悩んだ私は図書館に行っていろいろと調べ物をしました。結果、導き出された答え。それはタンポポコーヒー。タンポポならば春に生えていますし、季節感にも合いそうです。
さて、ここでまた困った。私はタンポポコーヒーを飲んだことがないのです。ノンカフェインで身体に優しいので飲まれている方がいる、というのはよくお聞きしますが、私自身は初めて聞きましたし、当然飲んだことなんかありません。小説ですから、登場人物には感想を述べてもらわないといけません。本物のタンポポコーヒーは根の部分を使って作るそうなので、早速血迷った私はそこらへんのタンポポを引っこ抜いて……とはならずさすがに市販のタンポポコーヒーを買ってきました。ティーバックになっているやつですね。
 とりあえず匂いを嗅いでみます。なんか煎った豆……のような匂いがしますね。豆ではないとは思いますが、焦げたような匂い。一応煎ってあるんでしょうか。あとこれはコーヒーの匂いではない! なんとなく、大自然の香りがしますね!
つまり土臭い!
 ここで怖じ気づいてはいけません。そんなことでは面白い物語は書けません。科学者は論より実行なのです。お湯をいれてみましょう。うわ、黒い! さすがコーヒー。見た目は本当にコーヒーなんですね。漂ってくる匂い……これはコーヒーではない! こう、漢方薬のような香りです! 草木のワイルドな香り。とっても健康によさそうです。
 さて、勇気を出して飲んでみましょう。一口。二口。うん、これは美味しいものではないな! よい言い方をすれば『大地の恵みを抽出したお茶』といったところでしょうか。悪い言い方をすれば『まずいお茶』ですね。苦くはないのです。まずいのです。これはお砂糖やミルクを入れればコーヒーもどきになるのでしょうか? とりあえず砂糖を入れてみましょう。うえぇ、甘さが邪魔して余計にまずくなった気がします。仕方がない、ミルクを投入! あれれ、おいしい!
 ただ、これミルクを混ぜたというより、ミルクで無理矢理まずさをうすめているのでは……という気もしなくもありません。

さて、いかがだったでしょうか。これを機にコーヒーが苦手な方もコーヒーを飲んでみてはどうでしょう? タンポポコーヒーならばノンカフェインですし、身体にもよいですよ。レポにある通り、おいしさは保証しかねますが。 

お砂糖とミルクはお好みで。

お砂糖とミルクはお好みで。

エッセイ集『たから箱庭』に収録。 『お砂糖はどれくらい? ミルクは入れますか?』

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-08-20

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