余談_音楽の話

犬小路家の子どもたちは、親から鉛筆と紙を与えられて育った。父は幼少期に絵画教室に通っていて、絵を描くのが好きだった。その昔両親が出会った頃、彼らはフォークソングに夢中だった。家にはギターもあった。そんな両親に育てられた我々の暮らしの中、その記憶の中には常に音楽がある。

1990年頃、当時といえば夕方19時から20時までの間に子ども向けのアニメが放送されていた。絵を描くのが好きな我々は絵を見るのも好きだった。寝る前に読んでもらう絵本はもちろん、漫画もアニメも好きだった。私はその主題歌も好きだった。我々は父の会社の近くにある保育園に通っていた。その送迎の中ではいつもカセットテープのカーステレオで音楽を聞いていた。

アニメの主題歌に関しては、アニメのキャラクターや話の内容は覚えていなくとも、印象に残った歌は多い。大人になった昨今、人の名前も覚えられず顔も覚えられないのに、一度外出先の有線で聞いただけの曲でもワンフレーズ歌えたりするくらい耳がいいことがわかった。しかし耳がいいと言っても不思議と方向感覚がなく、自動車免許獲得の頃から救急車がどこから来るのか分からず、不便はしている。ともかく、歌、音楽についてはとても覚えるのが早く、そして今の所はそれらを忘れたことがないと思う。

チンプイのエンディングテーマだった「シンデレラなんかになりたくない」
子ども心に「ネズミがパイロットになっても カボチャがロケットになっても ダンスパーティーに行くつもりないの」「シンデレラなんかになりたくない 裸足で歩いていたいから」というフレーズに心を奪われた。当時子どもなら誰しも、お姫様に憧れ、いつか自分にも王子様が現れると信じていたのだ。お姫様はいつか誰かの手で幸せにしてもらうのが当たり前だった。それをキャッチーに打ち破るのだ。別にお姫様であることだけが、幸せではないのだ、と。

保育園の行き帰りにカーステレオでよく聞いていたのは、当時の女児が皆夢中になったセーラームーンのキャラクターソングだった。子ども向けのアニメのはずなのに妙に大人びた歌詞も切ないメロディーも覚えている。
「あなたのせいじゃないの、ごめんね。降り始めた雨のせいよ。星の数ほど恋はあるけど、まだあなたを愛してる」火野レイちゃんの歌だったと記憶している。子どもには「何が雨のせいなのだろうか」と分からなかったが、きっと泣いていたのだろうと今では思う。親としてもセーラームーンなら少なくともハズレではないだろうときっと買ってくれたのだろう。今思えばその歌は子ども向けではない。そして作中のレイちゃんも中学生の女の子だったはず。失恋を目の前にした涙を雨のせいにする中学生、あまりにも大人すぎる。

セーラームーンやガンダムなど、アニメのタイトル入りのテーマソングや、話の内容に準えた曲が多く用意されていたので、るろうに剣心のオープニングテーマ「そばかす」(ジュディアンドマリー)では「星占いもアテにならないわ」の部分がどうしても納得できず、江戸時代に星占いなんてハイカラなものあったのか?と上の兄に訊ねると「そばかすと剣心は関係ない」と言われ、歌とアニメが関係がないとは何事か、そんな道理があるものかと、更に納得ができずにモヤモヤした。この頃の私は本当に無垢で可愛いなと自分のことながら思う。

思い出のあるあの曲も、どのアルバムに入っているとか目を皿にして探さなくても検索すれば出てくる時代になった。20代の頃、ブログか何かに音楽遍歴を書いたことがある。あの頃より昔の音楽を探しやすくなって、そのうえ大体のものはどんな手段であっても出てくるので、より一層昔の記憶を鮮麗に思い出すようになった。以下の文章はブログに書いた音楽遍歴である。

2017年にブログに書いた音楽遍歴


【小学生の頃】
初めて買ったCDはアニソンのシングルだったよね。レイアースだったかな?
普通の女の子らしく、スピードとか宇多田ヒカルが大好きだったのに、HEAVEN’S DRIVEを聴いて突然ラルクに目覚める。そこから自動的にビジュアル系へ目覚めていく。
ラジオが大好きだったので、年の割に渋いの聴いてた気がする。詳細は失念。

【中学生】
ネットで知り合った人の影響で洋楽を聴き始める。ニルバーナとか?スマパン、モグワイらへんは今でもよく聴く。(男の影響)
ラルクは活動を休止した気がするがこの頃にはもう全アルバムからVHSを網羅。
年頃例外なくCoccoにハマる

【高校生】
突然イエモンにハマる。
相変わらず洋楽も聴く。
椎名林檎にもハマった。
ビジュアル系にも沼った。ムックやディルアングレイ、カリガリをMDに落としてもらって聴いてた。(男の影響)

【その後】
音楽をやってる知人が増えたために手持ちの音楽にグッと振り幅が出る。(男の影響)
好きだったのは
deerhoof
Fishmans
凛として時雨
などなど。
とにかく満遍なく聴く

【20代前半】
ナンバガ信者からの洗脳を受ける(男の影響)
トラウマを負った音楽の浄化
メトロノームとフロッピーと新宿ゲバルトにハマる
そういえばアニメソングもよく聴いた。けいおん!が流行ったので。

【20代後半】
フランツフェルディナンド、レディオヘッドらへんのUKロック…?にハマる。楽器を始めたので。。(男の影響)
中学生くらいから聴いてたグレイプバインにグッとハマる(男の影響)

【20代後半その2~30代】
阿部芙蓉美などなど。ライブにも行った。ふゆみちゃん素敵だった…(男の影響)
何故か突然プラツリ沼にハマる
アイリッシュ音楽を聴いたりもした。
ザバダックが好きだなぁと思う(男の影響)
そして最近出てきて凄い勢いでハマってるポルカドットスティングレイ、この冬めでたくメジャーデビューなので、紹介して終わります。
ポルカドットスティングレイ「テレキャスター・ストライプ」MV
https://youtu.be/3ad4NsEy1tg

以上の昔書いた音楽遍歴へのものすごい蛇足。

小学生の頃、私は宇宙人だった。勉強や授業というものがよく分からなかった私は、いつも窓の外や窓際の水槽を眺めながら鼻歌を口ずさんでいた。その時の曲がレイアースの主題歌だったりもした。
(※初恋のアニメキャラは名探偵ホームズだったが、その後誰もがタキシード仮面に恋をする中、私はレイアースのザガート様が好きだった。気障な男より、クールなダークヒーローがよかった。擦れたガキである。)
(※また、名探偵ホームズが初恋だった私はその後自動的にケモナーを拗らせた。本当に心苦しい。)

小学校高学年に入ると流行りのアイドルもよく聞いた。そのうちアニメソングをダサいと言うようにもなった。アニメはもちろん見ていたし、当時のアニメソングもまあまあ言われれば思い出せるものの方が多い。
アイドルならスピードが好きだったがダンスの能力がなさすぎて彼女たちのようになろうとも思わなかった。しかし人生の中で歌うことが結構好きだったので、合唱部に入った。スピードみたいに踊れるアイドルになれずとも、宇多田ヒカルには顔が似てるとも言われたので、褒められてると当時は思い切れなかったが、宇多田ヒカルみたいにだったら今からでもなれるかも?という期待があった。なれるはずがないのだが。椎名林檎については当時かなり強烈で、引き気味だった。

修学旅行のバスで聞くためのカセットテープを作るため、みんなでCDを持ち寄り休み時間にダビングしていた時に聞いたL'Arc〜en〜Cielからそれ以降の人生ではかなりお世話になった。その後Piecesがリリースされるまでの1ヶ月程度の間に全てのアルバムを仲の良い友人と貸し借りをし合い、聞き込み網羅するオタク振りを発揮。VHSも貸し借りし、友人の家でキャーキャー騒いだ。そこから自動的にビジュアル系に強い興味を持った。L'Arc〜en〜Cielはビジュアル系ではありませんが……。また、その頃L'Arc〜en〜Cielは東京FMのラジアンリミテッドに15分程度のコーナーを持っており、そこで紹介された曲もCDを探してレンタルし、色々と聞いた。Sugar RayやACOなどは今でもたまに聞く。

中学生になると決定的に人生を変える出来事が起きてしまったため、恋愛の歌に対して懐疑的になるようになった。浜崎あゆみも宇多田ヒカルも好きで聞いたが、歌詞よりも曲や声や演奏が好きだった。持ち前の耳の良さは歌詞をあまり拾わなくなった。しかしそれまで役割の分からなかったベースの音まで聞き取るようになった。そんな折に当時一般家庭に導入され始めたインターネットで出会った人に教えてもらった音楽も聞くようになった。MP3はまだダウンロードに時間がかかるので、レンタルCDを活用していた。中にはCDにコピーして郵送してくれる人もいた。その中で知って今でも聞いているのは洋楽ばかりだがスマッシングパンプキンズは今でもかなり好きだし、KORNも最初は良さが分からなかったけど高校生くらいになると夢中になった。ニルバーナもモグワイも、Jのポップやロックばかり聞いていた私にとってはどれもかっこよくて大好きだった。その流れの中でネットで知り合ったうつ病の人間はこぞってCoccoを聞いていたので、私も聞くことにした。ラジオも当時はまだ聞いていたので、流れてきていいと思った曲は全部メモしてTSUTAYAに走った。スガシカオやGRAPEVINEもこの頃に聞いた。
また7歳からピアノを習っていたけれど、14歳になってようやく「この曲を弾きたい」という出会いがあった。そこからピアノ曲やオケなどクラシックも聴き始めるようになった。
中学校にまだ通えていた最初の数ヶ月に、英語の授業でカーペンターズを聴いた。これは今の人生にも続いている。あの後私は拒食症になってしまい、背はあまり高くなかったが38キロまで痩せた。そんな私にカレンカーペンターのことを教えてくれたのは母だった。

高校生くらいの頃(もう少し前かも)にL'Arc〜en〜Cielが活動を一旦停止した。HYDEのソロ活動のシングルもアルバムも買った。それでも物足りないので、兄が持っていたイエローモンキーのCDを勝手に聞いて、そのまま沼にハマった。しかしそのすぐ後にイエローモンキーも解散か何かしてしまった。仕方がないので気に入ったアルバムを繰り返し聞いた。あの頃MDもあったけれどCDプレイヤーが好きだった。
高校の同級生にビジュアル系好きが多かったので、ディルアングレイやムック、密室系など色々教わって聞いた。
椎名林檎もこの頃になると良さがかなりわかってきていたので順番にアルバムを集めた。

高校中退後、音楽に携わる友人が増えたため、更に色々聞いた。洋楽とクラシック、邦楽ならフィッシュマンズやオザケン、当時出始めたばかりの凛として時雨など。凛として時雨に関しては「ナンバーガールっぽいやつか」と言われて、どんなもんかと思っていると、編入した高校で出会った男がやはり音楽が好きで、兼ねてから興味があったという凛として時雨とトレードでナンバガを聴き、お互いに「こっちの方がかっこいい」と誉めあった。この頃からあまり流行りの音楽を追わなくなったが、バイト先のドラッグストアの有線から流れてきたバックナンバーの「青い春」はなんとなくまだ覚えている。

ビジュアル系ニューウェーブが好きな友人に布教され、アーバンギャルド、メトロノーム、FLOPPY、新宿ゲバルトの順でハマる。
動画サイトにおけるアニメの共有がまだ違法ではなかった頃にはアニメソングをとにかく集め続けた。エヴァやCCさくら、けいおん!やまどか☆マギカ、涼宮ハルヒやらき☆すたなど。そこまで大手ジャンルに発展しなかったエロゲ原作のアニメの主題歌まである。あと死んだ友人から教わったテニスの王子様のキャクターソングもある。オタクの妹から教えられたうたプリの曲などもある。
当時付き合っていた彼氏はaikoのデビュー当時からの熱狂的なファンだった。友人の死後数ヶ月経った夏に、ライブに一緒に行こうと誘われるが断ると「別の女の子と行くことになると思うけど、いいの?」と言われ「そういうのマジでめんどくさい」と思いながらもついていった。死んだ友人もアイコという名前だったので本当に嫌な気持ちになった。前列から4列目の中央よりの席だったけれど、私は棒立ちで、ステージのaikoと死んだアイコを比べて泣いていることしかできなかった。まあまあ最悪な客でほんとスマン。

友人の死後、ネットで知り合ってたまたま隣町に住んでいた男に楽器を教わる流れの中でthe smithsやジザメリ、フランツフェルディナンド、スエード、レディオヘッドなど、大体この辺、のような音楽を知る。
また、GRAPEVINEのアルバムを追い直した時に初期と音楽性が変わっていることにショックを受けたが、それでも「あの頃より大人びた」「変わっていく人たちの音楽」にいい感じに心がフィットした。その流れの中で出会った人には阿部芙蓉美のライブにもお誕生日イベントで連れていってもらったりした。生身の阿部芙蓉美は本当に美しい方だった。付き合いでライブに行くなどライブハウスやら色々行ったけれど、自分の意志で選んだ好きなミュージシャンのライブはこれが初めてだった。
また、死んだ友人が好きだった音楽を辿るようになった。死ぬ数ヶ月前に会った時に「間違えてアマゾンで同じの2枚買っちゃったから1個あげる」と言われたのに、CDなんて1枚3000円もするものもらえないよと頑なに断ってしまった。なのに行きに履いてきたパンプスが壊れて無理を言って借りて帰ったブーツは多分3000円では済まないものだっただろうと思うし今でも家にある。結果的に形見になってしまった。

ネットで出会う人が聴いている音楽や、ご自身の音源なども含めて聴いた。流行りの音楽はそんなに多く追わず、不思議と古い音楽に傾倒した。村下孝蔵やサイモン&ガーファンクル、小椋佳など、両親が好きだったあの頃の音楽などもかなり聞くようになったし、L'Arc〜en〜Cielに多大な影響を及ぼしたであろうDEAD ENDなど。遡ると案外途方もなく、流行りを追いかける暇があまりない。スピードが好きだった小学生の頃、親に「古い音楽ばっか聴いててダサい。私は大人になってもアイドルとか聴く。」などと言ってた、あの日々が眩しくて今では直視できない気持ちになる。

余談_音楽の話

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更新日
登録日
2023-08-19

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  2. 2017年にブログに書いた音楽遍歴
  3. 以上の昔書いた音楽遍歴へのものすごい蛇足。