初冬のねむけ眼の朝

夜明けの時刻。そこを散歩して、いろんな情景、人や植物、鳥たちの息吹を感じて、書き留めたかった。

街が目覚める、一時の話し

 小雪すぎのこの季節の日の出は、だいぶ遅く、6時過ぎても建物に囲まれたここは薄暗かった。カメラのレンズをとおしたその世界は、物体を濁すようにざらざらと一層暗く写っていた。
 けど、僕の眼に映る建物の隙間からのぞく半透明なダークグレーの空は、透き通っていた。
 街はまだ、眠っている。街路樹も眠っている。そんな、まだすやすやと寝息を音もなく立てている街の合間を縫って、車が急ぎ足で駆け巡る。僕は街の寝息と、淡く暗い空を味わっている。
 ゆったりした息は白く、メガネを曇らせては、静寂に包み込んでくれていた。肌を撫でるひんやりとした朝冷えも、心地いい。僕は自転車でのんびりと、そんな今日という始まりの少し前の、曖昧な世界を当てもなくこいでいた。
 自転車専用道路。そんなものもあった。街灯のオレンジを帯びた明かりが、その道の色をうっすら浮かび上がらせている。淡い青で塗装された歩道横の道。ブルーロード。そう僕は名付けた。
 東の空が、やんわりと色を付けはじめていた。ゆっくりと、だけど確実に大きな空に広がっている。車は一層慌ただしく通り抜けていくけれど、沿道の冬でも葉がしげっている街路樹や、大きな木の集まる所では、からすやむくどりなど毛嫌いされてしまっている鳥たちが、日の出を祝してのどかに合唱を始めていた。
 ブルーロードは結構長く続いている。空の色づきは、全体に広がってより澄み切った空色をみせはじめている。反映するように、ブルーロードも空に繋がってよりいっそう鮮やかになっていた。
 ほとんどが見向きもしない、はずれの小さなはめ込み花壇。咲いている名も知らない白い花は、寒さにも耐えて、誰に主張する事なく、ただ静かにあった。
 自然と自転車のこぐスピードも上がってきた。鳥も樹々も空も、そして撫でる冷たい風も歌っていた。そのひとときを、共に共有した。
 けど、人々がたくさん通勤しだすころには、それらは静まり返って佇んでいた。ほんの僅かな時間。僕はブレーキをかけて、辺りを見渡す。細い路地に真っ白な猫が、こちらを向いていた。その猫と目が合うと、すくっと腰を上げ物陰へと消えていった。 

初冬のねむけ眼の朝

書けば、なんてことない。情景のみが語りかけてくるような、文章。

初冬のねむけ眼の朝

夜明けの一時の時間。その刻を自転車で進む。薄暗く冷たい空気、そこに引かれている自転車専用道。 西は薄暗く、東は淡く明らんでいる。 夜行性のものと、朝に起きる者たちがどちらも静かに佇む時間。そんな空白な時間にこそ、あらゆる「隠れていたものたち」が踊っている。 それは、誰でもが一つの存在でありながら、全部と繋がっていることを確かめられやすい時。そんな一コマ。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 青春
  • 青年向け
更新日
登録日
2013-01-08

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