ロールシャッハ等(再掲)


『ロールシャッハ』



モニター


 重たい だ から 全部を脱いで
 張り付く か み を食べた異物
 あ そこからんっと滑り行き
 膨らむ部屋のあちらこち ら ら
 折れ て挿れ ての繰り返し、くり
 返されて LED の
 残像。


 あ めのひっばかり か
 な っんかいもかいも
 う ちろばかりにしないでってっ
 いっえない んだわたしじゃ


 こわれた みたいに続けてつづっ
 き を返してときを ときを 
 まこ まき 戻して
 わたしの髪の、生がわき。
 はげしいおとに
 くらき めに
 おぼれひらり。
 ふっと
 すっ、


 と変換できる。


 長―く
 匂いを吐いて。
 横にある、
 手足で叩く、背中を叩く、
 死んだように眠るそれを
 伸ばして掴んで刺激する。
 吸い立ての酸素を吹きかける、
 生温かい、
 交流。
 私に無いから異形なの、と
 話して離して鼻にする。
 

 降る日ばかりの情事にある
 拍手喝采の屋根と頭。
 塗ったばかりのあんな色、
 流れて消えるイメージばかり。
 

 入り口から取りに戻る濡れた衣服を
 籠に入れ込み、ひたひた歩く、
 辿り着いた場所で回す機械のぎらぎらに
 目を回しながら下着を拾う。
 いい匂いで
 泡を嗅ぐ。


 シャワーに打たれる
 熱い日に
 櫂を
 漕いで。
 木を
 残して。


 雨の日の何があなたを刺激するのか。
 お陰で傘が要らなくなった。
 洗われて流れる分子だけ


 平温を駆け下る。
 風のように。
 伝記のように。


 あっと思い出す。
 消して、消して。


 乾いたもので温める。
 乾いた服になるまで回す。
 乾いた指で続きを捲り、
 乾いた砂漠の語り部の、と
 綴る印字の乾きをなぞる。
 あなたのものが見当たらない。
 鳩の首から下の子の、
 

 晴れの日ばかり。
 nightばかり。
 蠍の尾っぽの針が曲がって
 あっちを教えて、
 輝く空。


 私の瞼の、奥の世界。


 ふさふさの毛を柔らかくし
 その役割に身を包む。
 金細工の重みで沈み込む。
 地上の楽園を呼ぶための儀式。


 アブラカラブラレロラロレ。


 舌を動かす。
 舌を飲む。
 何も言わないまんまの私。


 晴れの日に出掛ける姿を知らない、
 私の寝床の上で
 起きないその背中に命を引っ掛ける。
 フレアスカートの内側で
 痺れない足を揃える。
 死んだように眠るソコに
 鼻をつけて
 沈み込む。


 耳を揃えて
 聞き手に回る。


 外でしか降らない推理を見つめる。



溺れる


 木漏れ日に打たれる
 命を奪う
 赤い景色がくらくらと
 眩暈をさせる
 頭上が回る
 土の匂いが近付いて
 私を変える
 世界を変える
 気配の愛に
 鼻腔が開き
 翅が生えて、伸びていく
 黒の基調
 わたしのこと
 散りばめられた
 言のこと、食んだこと
 巻いたこと
 命絶つ、
 文のこと、章立ての
 前のこと。


 さわさわと
 触るか否かの躊躇い
 浸りつつ
 水から上げた
 私の目。


 首を取り
 貴方の力で
 投げられて、石が跳ねる
 驚いたのは水辺のもの
 呆れるのは空のもの
 その周り、間と言わないそこ此処に
 浮力を得てある。
 ストローみたいな
 宝石みたいな
 睫毛みたいな 産毛みたいな
 動き。
 閉じて二枚、開いて二枚、
 舞っている。
 漂っている。
 口を失くして存在している。
 変態は
 根本的な決意って標本の中の教え。
 字義通りって、笑ったものから蹴り殺した。
 赤く流れる、
 イケナイこと。
 アイだって、命を持つ。
 森の内側の擬態や肢体を駆使して
 存在させる。


 花弁の重み
 豊かな色味


 照明に、集まってばかりでいられない。


 紙が溶ける。
 私が述べた連なりの端から還っていく。
 鳴き声の季節が濃くする、間。
 繋がった私たちの生命の分。
 遠くで唸る、刻限と
 ひそひそ声の
 風と、波紋。


 ヒト。
 鳴き声たちに溺れる。


 
『オーソドックス』



 青い鳥を休ませようと
 姿を晒したその朝。
 物語的に設けたその場所で
 私が死んだと語られた
 白紙の束をトン、と打つ。
 その事務的な神秘と
 眼鏡の縁。
 チチチと歌い、告げる
 生の表と裏の格子。




 名乗れないから、表現する。
 固有のこの振動と
 四肢の道連れ。
 瞳に乗せた潤いを
 冷ややかに扱う、原初の質と
 触れる指。
 輝きは無邪気に増す。
 黒髪は
 梳いて解かれる。
 感情は、インク瓶の前
 遠慮なく
 使われる為。




 薄い絹の舞。
 「   」と歌われて。


 赤くなった耳、
 喜びと嬉しさの等価と。
 銀の杖(じょう)


 振るわれて露わになる。
 以前の語りと、
 重複した台詞の質、量的な恋。


 役割を果たした喉を労わり
 弦を張ったしなりを守って


 ひとは眠った。
 鎌は
 残された。


 真っ黒に塗られて
 それでないまぜに、
 愛が消されて。
 私の
 開く目に、目。




 羽ばたきに目覚める心地良さと
 燦々に降り注ぐ
 だから人工的な灯り。
 青みがかった群像劇は静止して
 撮られていて
 近くから、遠くまで。
 胸を押さえて、灰になるまで
 再生続き。


 あの、四つ足の愛猫まで。


 日に焼けるから思い出は
 色褪せて、
 大きく変わっていく。
 立ち上がる度、せっせと埃を払っても
 換気扇の音に負けて
 他人の声音、その詳細を見失う。


ーーー


 セメント色の
 床に容易く触れる、指を用いて
 上手に
 雑誌に引き寄せて
 意識を
 目立たせる、


 探偵。
 茶色の革のソファー、なんて。
 そうボヤいたって
 この唇からは何も
 嘯きはしない。
 立ち上りはしない。
 真っ白なハットなんて


 「とうに売ったさ。」
 そう打ち込む音のリズミカルな、日常。


 この手によって洗われない、陶器のカップなんて一つもない。
 終わらない。
 いや
 終えられない。


 だから
 愛は、
 恋は。


 これもまた、オーソドックスに




 真っ赤な洋燈、
 和らぐ祈り。
 生の表と裏の
 ささくれ。


 純白を装った裾を翻し
 感情は、
 打ち震えて泣いた。
 喉はこうして、
 役割を覚え
 弓形の背中に生やす。
 異形の


 装丁の
 不揃いに
 温かい、物語。


 設えた場所から舞い戻り、
 私(わたくし)はこうして


 紡ぐ言葉に、空白に息づく。生きている。






 
 

ロールシャッハ等(再掲)

ロールシャッハ等(再掲)

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-08-12

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