【声劇台本 女3】『それはどこかドンペリの泡に似て』(GL版)
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『それはどこかドンペリの泡に似て』(GL版)
≪登場人物≫
ユキナ … 自己肯定感の低い女性
レイ… あざとい接客で人気のキャバ嬢
ナオミ……レイの友人で、レイの席のヘルプに付くことが多い。
≪注意≫
拙作「ドンペリの泡の消えないで」のセルフ二次創作的作品です。
かなり精神を「抉られる」シナリオですので、取り扱い注意。演者さんへの強要禁止。
まだ添削段階ですので、修正が入る場合があります、使用されるまに「更新」ボタンを推されることをお勧めします。
使用は、規約通りで問題ありません。
上演時間 約45分
★★★本文
ユキナ:(モノローグ)消えてしまうのがわかっているのに、見つめていたくなる。
それはどこかドンペリの泡に似ていた。
(キャバ嬢クラブ)
レイ:ねぇねぇ、今日はどれくらいいけそ?
ユキナ:ごめん、頑張って5万とか……
レイ:えー? そっかぁ……
ユキナ:ごめん
レイ:なんで謝るの?
ユキナ:いや、少なくて、悪いなって。
レイ:いいよ別に。ユキナさん、最近、そんな感じだってわかってるし?
ユキナ:そんな感じ、って?
レイ:そういう感じ。なんか、私に飽きたのかなって。ほら、彼氏ができたとかさ?
ユキナ:そんなの、私にはできないよ。
レイ:そう?
ユキナ:うん……
レイ:よかった。あ、でも、ごめんね。
お店に言われてるから、あんまりこの席にはいられないんだ。
売り上げ最近落ちてるらしくて、オーナーうるさくて。
高いボトル入れてくれるお客さんの席を開けると、ガミガミ言われるんだ。
ユキナ:だよね、わかってる。
レイ:うん、ありがと。ユキナさんならわかってくれると思った。
まったくさぁ、私学生バイトなんだから、もっと自由にやらせて欲しいんだけどな。
ユキナさんとももっと話したいし。
あ、そういえば、こないださ、すごく変わったお客さんが来て、(席に付くなり、いきなりなんて言ったと思う?)
ナオミ:(前の台詞をさえぎって)お話し中すみません、レイ、オーナーが呼んでる。
レイ:えーちょっと待ってよ。せっかくユキナさんが久しぶりに来てくれたのに。
ナオミ:……すみません。
レイ:すぐ行かなきゃいけない感じ?
ナオミ:うん、やばげ。
レイ:うーん、ごめんね、ユキナさんもう行かなきゃ。
ユキナ:うん、……いいよ。
レイ:もっと話したかったなぁ。ユキナさん、聞き上手だからつい話しちゃうんだよね。
私の癒し。絶対また来てね、ユキナさん。
ユキナ:うん……
(レイ 去る)(ナオミ 座る)
ナオミ:すみません、ユキナさん
ユキナ:ううん、いいの……私は細客だし……それに……とにかく、いいの。
ナオミ:気にしなくていいですよ。
どんなお客さんでもお客さんであることに変わりないですし。
ユキナ:でも、レイにも太いお客さんがついてきてるし。忙しいでしょ。
ナオミ:まあ、そうですね。
ユキナ:レイ、最近人気出てきたから。私は全然役に立ててないけど。
……あ、ナオミちゃんもいいよ。ヘルプも足りてないでしょ? 他のお客さんについててあげて?
ナオミ:私のことまで気にしないでください。ユキナさんのことはレイから頼まれてますから。
ユキナ:ありがとう。でも、今日は……そんなに持ってきてないし。
もっと他の、太い……男のお客さん接客した方が、コスパいいでしょ?
私は一人で飲んで帰るからさ。
ナオミ:相変わらず控えめですね。珍しいですよ、そんなお客さん。
みんなちょっとでも指名した子を席に引き留めようと必死なのに。
……まあ、ユキナさんがそれでいいならいいですけど。
ユキナ:うん、ありがとうナオミちゃん。いつも、席についてくれて。
★
ユキナ:(モノローグ)女なのに、キャバクラに通っている。私はたぶん、おかしいのだろう。
きっかけは些細なことだった。
会社の飲み会の後、酔っぱらった上司を介抱していたら、行きつけらしいキャバクラに引っ張りこまれた。
泥酔した上司は、お気に入りのキャバ嬢に夢中で、帰るに帰れず、私は途方に暮れていた。
ウーロン茶のグラスを抱えて、困り果てていると話しかけてきたのがレイだった。
レイ:もしもーし? どうしたんですか? ぼーっとして?
ユキナ:(モノローグ)レイの姿に私は思わず息を飲んだ。
茶色のロングヘアは艶やかで、アイドルと見まごうほどのかわいらしい顔立ち。
ブルーのコンタクトが入った瞳は、無邪気な笑みを湛えて(たたえて)私をまっすぐに見つめていた。
なにより彼女は若かった。夜職用の派手目のメイクをしていても隠せない溌溂(はつらつ)としたオーラ。まぶしすぎて、私は思わず目をそらした。
ユキナ:……あ、その。なんでもないです。
レイ:初めてのお客さんですよね? よろしくお願いします! よかったら一緒に飲みませんか?
ユキナ:あ、えっと……いや、いいよ、私は上司の付き添いで来ただけだし。
レイ:ああ……なるほど。そっかぁそれは残念でしたね。んーホストクラブだったらよかったですね?
ユキナ:……いや、そういう訳じゃ、ないんだけど。
レイ:そっか、困りますよね、女の子に接客されても。
ユキナ:そ、そんなことはなくて……困るのは、えっと、みなさん……キャバ嬢さんたちの方ですよね。女性に来られても、嫌ですよね。ごめんなさい。
レイ:え、全然そんなことないですよ! 私、女の子、大好き。キレイなお姉さんだなーって思って、話しかけちゃいました。あ、うざいですか?
ユキナ:そんな、ことないけど、私なんて、キレイじゃないよ。
レイ:……あ! 名乗るの忘れてました、私、レイっていいます。はい、これ名刺。
ユキナ:あ、ありがとう。一応もらっておくね?
レイ:お客さんの名前は? 聞いていいですか?
ユキナ:ああ、前橋です……
レイ:下の名前は?
ユキナ:ユキナ……
レイ:ユキナ……へぇ、きれいな名前。ユキナさん、って呼んでいいですか?
ユキナ:うん、いいけど。まあどうせもう、来ないと思うし。
レイ:え、なんで!? 決定なんですか、それ?
……んー、ユキナさん真面目そうですもんね。キャバクラとか、なんか怪しい、って思います?
ユキナ:そうじゃなくて、私、お金持ってないし。男でもないし。相手にしてもらえないの、わかってるから。
レイ:え、そんな理由? しますします相手! (ユキナの手を握る)
ユキナ:わっ!
レイ:ああ、すみませんー! 私興奮するとすぐ人に触っちゃう癖があって。こら、ダメだろ、めっ! (自分の手を叩く)
ユキナ:……(ちょっとびっくりした後、少し吹き出す)
レイ:あ、笑った! 笑った顔、かわいい!
ユキナ:や、やめて。かわいいわけないよ。私なんて……
レイ:えー私は好きですよ、ユキナさんの顔。すごく優しそうで。ずっと見てたい。
ユキナ:いや、そんなわけ、ないし……
レイ:ねーねー、もっと笑って?
ねぇ、どうしたらユキナさんはもっと笑ってくれます? なんか好きなこととかは?
ユキナ:さ、さあ、私にもわからない。あんまり笑うことないし。人と話すの得意じゃないし。
レイ:そっかあ、ってことは一緒に探していきません? ユキナさんが楽しいと思えること。私でなにかお手伝いできたら嬉しいな。
ユキナ:あ、ありがとう、うん、気持ちだけ、もらっておきますね。
レイ:(ため息)……あのね、ユキナさん、私、中学の頃いじめられてたんですよ。
ユキナ:え?
レイ:みんなから無視されて。クラスの隅っことで独りぼっち。
知ってました、靴隠す奴って本当に居るんですよ!
まあ今は、そんな奴らを見返してやる!ってがんばって、大学も入ったし、一生懸命明るくして、友達もできたんですけどね?
ほんとは今でも人見知りなんですよね。
ユキナ:そうなんだ、強いんだね、レイちゃんは。
レイ:えーそんなことないですよ!
でもでも、今でも独りぼっちでさみしそうにしてる人を見ると、元気づけたくなるんですよね。
こっちに来て一緒に遊ぼ?って。
ユキナ:……私、そんなにさみしそうだった?
レイ:うん……(じっと見つめる)
ユキナ:(目をそらす)えっと、でも、大丈夫、だから。
レイ:私、大学の学費稼ぐために、この仕事始めたんですけど。
けっこうこの仕事好きなんですよ。
できれば、ここに来たお客さんには、みんな笑顔になって帰って欲しいなって。
ユキナさんみたいに、成り行きで引っ張り込まれた人でも、「案外楽しかったな」って思ってくれたらいいなって。
ユキナ:そうなんだ、えらいね。
レイ:だからユキナさんのこと、なんかほっとけないなって。あ、よかったら連絡先教えてくれません?
ユキナ:え……?
レイ:だって、ユキナさんに興味がわいてきちゃって。今日で終わるのさみしいなって。
それに、私、そろそろ就職活動しなきゃだし。社会人のお友達いてくれたら心強いし。
ユキナ:友達? でも、私、社会人っていっても、小さな会社の事務員で、そんなに参考になる話しはできないから。
レイ:そんなことないですよー! 立派な先輩です! ね、いいでしょ? 友達になって、ユキナさん。
ユキナ:とも、だち……?
レイ:ダメ? キャバ嬢なんかやってる大学生と友達になるのは嫌?
ユキナ:そういうわけじゃ……いいよ、連絡先くらいなら……別に……
ユキナ:(モノローグ)強引なレイに押し切られる形で、連絡先を交換した。それがキャバ嬢の使う手練手管だと、どこかで気が付いていたのか、いなかったのか、今でもわからない。
ナオミ:お疲れレイ。新しいお客さん?
レイ:あ、ナオミ! 座って座って! うん、ユキナさんっていうの。友達になったんだ!
かわいい人でしょ?
ナオミ:……あはは、もーまたナンパしたの?
レイ:うん。あ、ユキナさん、この子はナオミ。私の友達。一緒にこのバイト応募したの。
ナオミ:初めましてユキナさん。レイ、うるさいでしょ? うざかったら叩いていいですからね?
レイ:あーひっど! ユキナさん、ひどい! 助けて!
ユキナ:え、ああ……
ナオミ:ユキナさんに逃げるな。
レイ:逃げてないもん。ユキナさんは私の、ナオミにはあげない。ねーユキナさん? ユキナさんは、私だけのモノですよね?
ユキナ:(モノローグ)レイはそう言って、私の腕に抱き着いてきた。シャンプーなのか香水なのかわからないけど、いい香りがぷんとかおる。
この匂いを忘れられなくなる。私はそんな予感がしていた。
(バックヤード)
ナオミ:あ、レイ、おつかれ~。
レイ:あー、ホントに疲れた。だってさ、マジありえないと思わない?
今日さ、来るって約束してた客が2人も来なくて、マジ泣きそうなんだけど!
よさげな新規の客が来てたのに、私に回ってくる前に、新人のマミちゃんを場内指名しちゃったし。
はーお茶っぴきですか、私は。そうですか。
ナオミ:あーそれで……なんか女性客の相手し始めたから珍しいなって思った。
レイ:ああ、さっきの? 何ていったっけ? ユキミ? ユキエ?
ナオミ:ユキナでしょ。もー客の名前覚えるの慣れてよ。
レイ:ごめんごめん、ナオミは記憶力よくて助かるー。
あーそうそう、ユキナって女性客。
ま、ぶっちゃけ、ヒマだったってのもあるんだけどさ、気づいた?
あの人、沼る男と同じ目してんの。
ナオミ:へぇ、そうなんだ。気が付かなかった。
レイ:うん、間違いないって。
めっちゃガッチガチにバリア張って
「どうせ俺なんて相手にしてくれないんだろ、女は敵だ!」って態度の癖に
「俺の事、ありのまま受け入れて、愛して!」ってオーラが漏れてる客いるじゃん?
あれと似てる。
ナオミ:ほんとレイ、そういうの鼻が利くよね。この仕事天職なんじゃない? で、そういう男、沼らせるのもうまいよね。
レイ:簡単だもん。ただ、最初だけぐいぐい行ってやればいいの。
本音はバリアを破ってきてくれる押しかけ女房を待ってるわけだから、一回、入っちゃえばこっちのもの。
「やっと俺をわかってくれる女性が現れた!」って依存してくるから、後は、適度に餌を与えて育てるだけ。
ナオミ:そういうタイプほど、すぐ枕とか求めてくるのに、うまーく寸止めするのお見事だと毎回思う。
レイ:うん、もう慣れたから平気。最初は、しんどかったけどねぇ。ガチで病んだりして。でも慣れって怖いよね、今や「あーごめんーお母さんが帰って来いって、なんか怒ってるぅ! またねー!!」って帰っちゃう。
ナオミ:上手く振り切れなくて助けに行った事何回あると思ってるのよ。
レイ:それは、ごめんやん! その分、お客回したり、埋め合わせしてるじゃん!
……で、女性客でも、男性客と同じ手順でいけるのかな?って興味湧いちゃって。
試しに育ててみようかなって。
ナオミ:なるほど。育てたところで、お金落とすかな?
レイ:さあ、わかんない。まあでも、真面目そうだし、堅実に稼いで、堅実に貯めてそうじゃん? 多分、彼氏もいないと思うから、使い道もなさそうだし?
ちょっと寄り添ってあげようかなって。
ナオミ:寄り添って、ねぇ? でも、お金は落とさせるんだよね?
レイ:妬くな妬くな。
ナオミ:妬きません。
レイ:ま、そんなわけで、もしユキナさんきたら、ナオミがヘルプついてよ。
ナオミ:私が?
レイ:他に誰に頼める?
ナオミ:しょーがないなー。
レイ:よろしく、親友。
ナオミ:はいはい。
(バックヤード終わり)
ユキナ:(モノローグ)初来店依頼、レイとメッセージのやり取りをするようになった。
それは思いの外、楽しかった。まるで本当に友達ができたみたいに。
私に友達はいない。
誰かと仲良くなっても、すぐに壊れてしまう。というか、私が壊してしまうのだ。
レイはさすがキャバ嬢と言うべきか、私の少ない引き出しをうまく探し当てて、話題を盛り上げるのがうまかった。
いつも明るく、無邪気で、好奇心旺盛なレイ。私には、ただ、まぶしかった。
(メールのやりとり)
レイ:『えー、ユキナさんもその漫画好きなんですか? 私も実家に全巻持ってるんですよ! どのキャラが好きですか? これ語りだすと長いんですよね。
ね、やっぱり今度ご飯いきましょうよ! ユキナさんと話したい!』
ユキナ:『私なんかと行っても楽しくないよ』
レイ:『そこは私が楽しくしますからー? ね、いいでしょ? 一回だけ!』
ユキナ:『いや、いいよ』
レイ:『やだやだー! ユキナさんに会いたい! ね、お願い? 優しくするから、ちょっとだけ! さきっちょだけ!』
ユキナ:『……』
レイ:『あ、引きました? 冗談ですって! 怒らないでー?』
ユキナ:『わかった、じゃあ、お店に行くよ。それでいい?』
レイ:『え、お店来てくれるんですか!? やった! いつ、いつこれます? じゃあ、私のスケジュール送りますね! 楽しみだなぁ! いっぱい話しましょうね』
ユキナ:(モノローグ)これ以上、進んではいけない。心のどこかで自分自身の鳴らす警鐘(けいしょう)に気が付いていたと思う。
それでも、レイに押し負ける形で、私はまたキャバクラに行くことになった。
女が一人でキャバクラ……どう考えても変だ。誰にも言えない。
レイは『最近は、女性客も結構来ますよ』と言ってくれるけど。
私は少しずつ少しずつ、レイの手の中に堕ちていった。
(回想)
レイ:ユキナさん、来てくれたんですね。嬉しい、ずっと待ってたんですよ。
レイ:ユキナさんと話すの楽しいな。ねぇ、ユキナさんも私といて楽しいですか? だったら嬉しいな。
レイ:ねぇねぇ、履歴書の自己PRって何書けばいいと思います? 就職活動の自己分析で詰まってるんです。助けて、ユキナさん。
レイ:あ、もう行かなきゃ。行きたくないなぁ。もっと話したい。ユキナさん、今度はいつ来てくれますか?
ユキナ:(モノローグ)私はずっと孤独だった。社会の片隅で、なるべく誰の邪魔にもならないように生きて来た。
自分の存在が誰かに喜んでもらえた記憶なんてない。
行くたびに笑顔で迎えてくれるレイ。正直、嬉しかった。
それがお金で買った関係だということは、私にはむしろ安心感を与えていた。
一秒でも多くレイに笑って欲しくて、一緒にいて欲しくて。
私のわずかな貯金は瞬く間になくなった。
会社に内緒で、土日に日雇いのアルバイトを始めたけど、稼いでも稼いでも、消えていった。
まるでシャンパンの泡のように。
ふと、こんな私でも、いわゆる夜の仕事の需要ってあるのだろうか?
そんな考えすら、頭をよぎることもある。
わかっている。レイとの関係に未来なんてない。
わかっている。わかっていても……また、私の足はレイの元に向いてしまう。
(キャバ嬢クラブ)
レイ:ねぇねぇユキナさん
ユキナ:なに?
レイ:来月、私、誕生日なの!
ユキナ:あ、そうなんだ。おめでとう、ってまだ早いか。えっと、なにかイベントとかあるの?
レイ:うん、誕生日イベントやるんだけど、ユキナさんも来てくれる? お祝いして欲しいな。
ユキナ:うん、来れたら、ね。
レイ:えー絶対来てよ!
ユキナ:いや、私が行かなくても、レイの指名客さん達が来るだろうし。
レイ:えーそれとこれとは別だよ。ユキナさんが来てくれないと私、泣いちゃう。
ユキナ:うん……でも、あんまり貢献できないかも。ごめんね。
レイ:あー、でも、応援したいっては思ってくれてる?
ユキナ:うん? そうだね。
レイ:それだけで嬉しい。
ユキナ:ごめんね、なにもできなくて。私がもっと稼いでいれば、他のお客さんみたいに毎回ボトル入れられるんだけど。
レイ:ユキナさん、もっと稼いでたら、私に使ってくれる?
ユキナ:うん、応援したいっては、思ってるよ?
レイ:パパ活とかはしないんですか? 私は、お金ないときはしてたな、普通に。
ユキナ:え?
レイ:意外と簡単だよ、アプリに登録して、いいね来るの待つだけだし。大変だったけど、けっこう人生勉強になったなー。
ユキナ:私には無理だよ。
レイ:なんで? ユキナさんかわいいのにもったいないー!
ユキナ:レイと私は違うよ。多分、需要、ないよ。
レイ:そんなことない! ユキナさんはかわいい! かわいったらかわいい!
あ、そういえば、私のお客さんの中に、ユキナさんのこと紹介して欲しいって人いるんですよー。
ユキナ:……え?
レイ:よかったら、会って見ません?
ユキナ:どんな人? いくつ、くらいなの?
レイ:え、普通にいい人ですよ。年齢はどうだろ? 60? 70? くらいかな?
ユキナ:お金持ち、なの?
レイ:うん、なんというか、会社経営者的な? 私も詳しくは知らないんですよ。聞いても輸入関係、としか話してくれなくて。
で、今度、旅行に行くのについてきてくれる人を探してるらしくて。
もちろん旅費やなんか全部その人が持ってくれるから大丈夫。
ユキナ:それって……
レイ:ついていくだけで、一週間で100万くらい稼げるますよ、すごくないですか? ユキナさんならきっと気に入られると思う。
ユキナ:………
レイ:100万あれば、結構いいボトル入れられるよ?
あ、私の誕生日プレゼントはユキナさんからのシャンパンがいいなあ。
店中から注目されるよ、めっちゃ気持ちいいよ。
一度、経験してみて欲しいな、自分が主役!って感覚。ユキナさんには必要だと思う。
ユキナ:ねぇ、レイ、それって……私をその人に……差し出す、って感じがするんだけど。
レイ:え?
ユキナ:……いや、その……
レイ:なにその言い方。私はさ、ユキナさんが他のお客さんみたいに私に貢献できないのが辛い、っていうから、提案してあげたのに。
ユキナ:……ごめん。
レイ:ユキナさんいつも私のためになんでもしてくれたじゃない。だからきっといいって言ってくれると思った。私もう紹介するって約束しちゃったよ……。
ユキナ:ごめん。それは、さすがに……
レイ:どうしてもダメ?
ユキナ:ごめん。
レイ:そっか。
ユキナ:うん、私には無理だよ。
レイ:ねぇ、ユキナさん? じゃあ聞くけど、どうしてここに通ってくれるの?
ユキナ:え?
レイ:私のこと好き?
ユキナ:え?
レイ:(ため息)……ねぇ、いい加減素直になろ?
ユキナ:え?
レイ:好きなんだよね、私のこと。
ユキナ:え、ちが……私は、そういうつもりじゃ……
レイ:うそ
ユキナ:……
レイ:私は気にしないよ。男でも女でも。ユキナさんのこと、気に入ってるし。
ユキナ:……私は……
レイ:ん?
ユキナ:レイのこと、友達、だと思ってる。
レイ:友達……
わかった、じゃあ、ちょっとこっち来て。
(抱きしめて)友達ならハグくらいいいよね。女同士なんだし?
(耳元で)もっと力抜いて? 真っ赤になって、ユキナ、かわいい。
ユキナ:……やめて
レイ:やだ、会ってくれるって約束してくれるまで離さない。
ユキナ:それは、卑怯、だよ……
レイ:ふふ、ねぇユキナさん
ユキナ:なに?
レイ:タダで、とは言わない。もし、私の頼み聞いてくれたら、私もユキナさんの言う事聞くよ?
ユキナ:え?
レイ:なんでも私をユキナのしたいようにしていいよ? いつも私に優しくしてくれるユキナさんだけ特別。ね? だから、お願い?
ユキナ:……
レイ:いいでしょ? いいって言ってよ。あ、ほら、他のお客さんたちがチラチラこっち見てるよ? 女同士のラブシーンに興味深々って感じ?
ユキナ:……!
レイ:キスでもして見せようか?
ユキナ:レイ、冗談は……
レイ:いいよ、して……あ、ユキナは、してほしいタイプか……じゃ、目閉じて?
(顔を近づける)
ユキナ:(ためらってからレイを押しのけて)……わかった、会うだけ、なら……
レイ:ほんと? やった、ユキナさん大好き!
ユキナ:……嬉しいの?
レイ:うん、私のためにここまでしてくれる人いないもん、本当に大切で、大好き。お客さんの中で一番好き!
ユキナ:……そっか、レイが喜んでくれるなら、それでいい。
レイ:もっちろん、そうだ、今度さ(時間あったら、買い物でも一緒にいかない?)
ナオミ:(前のセリフにかぶせて)あ、すみません、レイ、時間だって。
レイ:あ、忘れてた。行かなきゃ。ついつい話に夢中になってた。あ、詳しいことは後で送るね。
またね、ユキナ(ほっぺにキス)
(レイ、去る)
ユキナ:……(ため息)
ナオミ:どうしたんですか?
ユキナ:なんでもない……ちょっと強いお酒、貰える?
ナオミ:はい、焼酎でいいですか? 麦でお湯割りがお好きでしたよね。
珍しいですね、ユキナさんあんまり飲まないのに。
ユキナ:飲まないと、無理だから。
ナオミ:そうですか、はい、どうぞ。
ユキナ:ありがとう。
ナオミ:……レイになんか言われたんですか?
ユキナ:いや、別になんでもないよ。
ナオミ:そうですか。あの、差し出がましいようですけど。レイは、ユキナさんのことすごく大事に思ってますよ。
ユキナ:そうかな。
ナオミ:はい、私にもよく、ユキナさんのこと話してくれますから。
……なんか妬けちゃいます。
ユキナ:え?
ナオミ:私もレイのこと好きなんで。
ユキナ:そう……
ナオミ:レイああ見えて必死なんですよ。来月の誕生日イベント、合同だって聞きました?
ユキナ:え、いや聞いてないけど。
ナオミ:リョウコってキャバ嬢がいて、レイと誕生月が同じなんです。
それでどうせなら、『リョウコ&レイ』の合同誕生日イベントにしようってオーナーが言い出して。
といっても実質対決ですね。お客さんにいくらお金使わせられるかの。
今のところレイがちょい押されてる感じです。
リョウコって結構、えぐい営業する分、強いんですよね。
レイは絶対勝ちたいって、がんばりすぎて、けっこう限界来てます。
太いお客さんほど、無茶なこと言いますからね。しつこくアフター誘って、お酒飲ませて、ホテルに連れ込もうとしたり。
ユキナ:そんな……ひどい。
ナオミ:……私もそう思います。でもそう見えないでしょ?
ユキナさんには心配かけたくないって言ってました。
優しくて、いつも自分のこと気遣ってくれるユキナさんの席だけが癒しだって。
ユキナ:そう……
ナオミ:だから、レイのこと、悪く思わないでくださいね。
ユキナ:……悪く、思ったりしないよ……でも、そうだね、わかった。ありがとう、ナオミちゃん話してくれて。
ナオミ:はい、じゃあ飲みましょう。私もいただいていいですか?
ユキナ:うん、いいよ、ナオミちゃんの分は薄目に作って。ナオミちゃんも大変でしょ?
ナオミ:ありがとうございます。本当に優しいですね、ユキナさん。
(バックヤード)
レイ:はぁ、くやしー! ……マジ、ありえないーー!!
ナオミ:はいはい、おつかれ。
レイ:みた、あれ?
ナオミ:リョウコの席盛り上がってたね? 相変わらずやるよね。
レイ:知ってる? あの子、月極(つきぎめ)3人いるんだよ、ありえなくない?
ナオミ:すごいね。レイは、そういうのやらないのにね。
レイ:あー絶対無理。私、好きな人としかできないタイプだから。
ナオミ:……だよね。
レイ:なによ。
ナオミ:でも、ユキナさんには、パパ活してたとか言ってなかった?
レイ:うん、私もやってるって言えば、ハードル下がるかなって。気を使ったつもり。
ナオミ:気を使うの日本語おかしくない? で、ユキナさんに紹介したのってもしかして、西川さん?
レイ:うん、そう。
ナオミ:うーわ……
レイ:だってぇ、私の知り合いで、女ってだけで、大金払うのなんてあの人くらいだし。
なんでも言う事を聞く大人しい女が好みだから、ユキナさんは気に入ると思うんだよね。
ナオミ:わかるけどさぁ。えっぐいことするなあ。
レイ:なんで? 私はただ紹介しただけ、嫌なら断ればいいんだし。
ナオミ:はぁ、相変わらずだねぇ
レイ:なによ! リョウコに比べたらかわいいもんじゃん、こんなの。
ナオミ:……友達やめようかな。
レイ:やだやだ! そんなこと言わないで! ナオミのことは特別! 大好き!
ナオミ:はい、はい。でも、本当にいいの、ユキナさんいい人じゃん。細く長く通ってもらえるようした方がよくない?
レイ:うーん、そうなんだけどね。だってユキナさん、私の言う事なんでも聞いてくれるんだもん。
いつもいつも自分より私のこと気遣ってくれてさ。
なんか、本心が見えなくて、怖いっていうか。男なら体目当て、だから分かりやすいけど。
ナオミ:何が言いたいの?
レイ:私にも、わかんない……
(間)
ユキナ:(モノローグ)明るいレイ、きれいなレイ。
レイが月なら、私は水面(みなも)に映った月に焦がれる醜いヒキガエル。
ヒキガエルが月に会いたいと願うなら、捧げものをするのは当然の事。
すべての時間とお金をレイに捧げた私が、最後にレイにあげられるモノ……そんなもの一つしかないのだろう。
レイから紹介されたのは、西川さんという高齢の男性。
彼は……私を気に入ってくれたようだ。そう、とても……とても……
(イベント当日)
ナオミ:あ、ユキナさん、久しぶりです!
ユキナ:あ、ナオミちゃん……
ナオミ:あれ、大丈夫ですか? なんか顔色悪くないですかー?
ユキナ:うん、大丈夫。指名、レイで、お願い。
ナオミ:もちろんです、レイ、ユキナさんぜったい来るからって席用意してたんですよ、こっちです、どうぞ。
ユキナ:うん、ありがとう。
ナオミ:あ、でも、さすがに今日は、すぐには来れないと思います。レイの太いお客さん勢ぞろいなんで。
ユキナ:うん、いいよ。私は……他のお客さん、優先してあげて。
ナオミ:……また、そういう事言うんですね。
ユキナ:え?
ナオミ:だって普通、お客さんは、担当がすぐ席に来ないとキレますよ。指名してるのに!って。
ユキナさんは、そんなにレイのことが好きなんですか?
ユキナ:いや、好きっていうか……なんだろ。自分の一部になってるのかな?
ナオミ:えっちしたいとか、思うんですか?
ユキナ:え? 私は、そういうつもりじゃ……
ナオミ:違うんですか? 別にそれでもいいと思うんですけど。
ユキナ:あ、焼酎もらえる? ごめん、今日は薄めに。
ナオミ:わかりました。……どうぞ。
ユキナ:ありがとう。
ナオミ:……? ちょっと待ってください。腕のそれ、なんですか?
ユキナ:え?
ナオミ:ちょっと見せてもらっていいですか?
(ユキナの手首をとる)うわ、すごい青あざ。え、ちょっとこれどこまで続いてるんですか?
ユキナ:ダメ…!(振り払う)なんでもない、ちょっとぶつけただけ
ナオミ:ぶつけただけ……ああ、なるほど……そう、ですか……もしかして、店に来てない間、ずっと西川さんと一緒にいました?
ユキナ:レイには、言わないで。
ナオミ:わかりました。見なかったことにします。
ユキナ:ありがとう……
(レイ登場)
レイ:ごめん、お待たせ、ユキナ! わー会いたかった!
ユキナ:うん、久しぶりレイ。イベントどう?
レイ:もー聞いてよ、ユキナさん! リョウコ、まじありえない! 反則連発でさ!
私もなんとか頑張ってるけど、ちょい負けてる。
よかったユキナさんが来てくれて! マジ救世主!
ユキナ:大げさだよ。
レイ:あ、西川さんどうだった? ね、ちゃんとお金くれたでしょ?
ユキナ:うん、少し多めにくれた。……いい人、だよね。
レイ:あ、やっぱり、絶対、ユキナさんは気に入られると思ってたんだ!
ユキナ:レイ、少しだけ、2人で話せるかな?
ナオミ:わかりました、じゃあ、私は席外しますね。
レイ:あ、ナオミ、じゃあ、田中さんの席行って?
ナオミ:わかりました。
レイ:なになに? 話したいことって。
ユキナ:うん、レイ……私、もうここに来れない。
レイ:え? なんで?
ユキナ:……
レイ:もしかして、西川さん紹介したこと怒ってる?
ユキナ:そうじゃない。それは、私が決めたことだから。
レイ:じゃあなんで? 私のこと嫌いになった?
ユキナ:それも、多分、違うかな。
レイ:じゃあ、なんで?
ユキナ:西川さんは……私のこと、すごく気に入ってくれて、それで……いろいろ話してくれたんだ。
紹介料のこととかも……
レイ:……あ……
ユキナ:私がもらった額よりも、ずっと多くレイに渡したって。
レイ:ご、ごめん、違うんだって! これから改めてユキナさんに話すつもりだったし、イベントに勝つためには、どうしてもお金必要だったから。
衣装だって新調したし、同伴デートだって毎回お客さんに出させるわけにはいかないんだよ。
ごめん、ユキナさんをだますつもりなんてなかったけど……
ユキナ:もういいよ。
レイ:だから、誤解だって。
ユキナ:もう、いい。今まで、ありがとう。レイといられて私、楽しかった。
レイ:いやだから……
ユキナ:ねぇ、レイ。一つ、私の頼み、聞いてくれるって約束だったよね。
レイ:え、ああ、そういえば……うん、何がいい? 私にできることならなんでもいいよ。
ユキナ:じゃ、私だけのモノになって。
レイ:え?
ユキナ:………
レイ:ユキナさん、それ、どういう意味ですか?
ユキナ:そのままの意味だけど?
レイ:いや、それはちょっと……
ユキナ:わかってる。無理だよね。言ってみただけ。
じゃあ、最後に抱きしめさせて
レイ:え……?
ユキナ:(そっと抱きしめる)
レイ:ね、ねぇ、まさかこれだけ、じゃないよね? ……何考えてるのユキナさん?
ユキナ:黙ってて。……ありがとうレイ。私の友達になってくれて。
レイ:……え、うん……それいいけど……っていうか、これからもユキナさんにはお店に来て欲しいと思ってるし。
ユキナ:………
レイ:ユキナさん、私、ユキナさんのこと好きですよ。本当ですよ。
ユキナ:黙って。
レイ:本当ですって。ねぇ、西川さんのことごめんなさい。埋め合わせ、させて?
ユキナ:黙って……いいから……もう少しだけ、こうさせて……
レイ:………
(ナオミ駆け込んでくる)
ナオミ:すみません、スピーチのスタンバイして欲しいって。レイ、行ける?
レイ:(離れて)あ、そっか、もうそんな時間か!
(いつのも調子を取り戻して)ね、ユキナさん? リョウコと私でここにいるみんなに向けてスピーチするんだ。
絶対リョウコよりもかっこよく決めるから、聞いていってね? 約束!
(レイ去る)
ナオミ:すみません、ユキナさん。
ユキナ:うん、大丈夫。……ねぇ、ナオミちゃん、ちょっと頼みがあるんだけど。
ナオミ:なんですか?
ユキナ:ボトルを入れたいんだ。
ナオミ:え、いや、でも、これから、スピーチ始まるんで、終わってからでもいいですか?
ユキナ:わかってる、だから今がいいの。女の私がボトル入れたら、他のお客さんたちが混乱するでしょ?
ナオミ:でも……ちなみにどのボトルですか?
ユキナ:一番高いのって、どれ?
ナオミ:ええと、今はイベント用の特別ボトルがあるから……リシャール、とか? でも、500万くらいしますけどね。
ユキナ:じゃあそれで。お願い。
ナオミ:え、いや、何いってるんですか? せめてレイさんが戻ってきてからにしましょ? スピーチ終わったら来るように言っておきますんで。
ユキナ:ダメ……(黒服を呼ぶ)あ、すみません、リシャールを。はい、リシャールで。
ナオミ:ユキナさん?
ユキナ:……といっても、私は飲めないから。そのまま、開封せずに、レイに渡しておいて? 他の客に使いまわしてもいいし。
ナオミ:ユキナさん……あなた……
ユキナ:いいの、これで。
ナオミちゃんも今までありがとう。
レイのことよろしくね?
ナオミ:ユキナさん!
ユキナ:さよなら。
(バックヤード)
レイ:はぁ、疲れた。
ナオミ:お疲れ。んで、おめでと。
レイ:ありがと。本当に疲れた。いろんな意味で。
ナオミ:ギリ勝ったね。ユキナさんのおかげだね。
レイ:いや、びっくりした。
ナオミ:だねー、ユキナさん、現金で払って行ったよ。どうしたんだろ、あの金。
レイ:んー、なんとなく想像つくけど。
ナオミ:だね。ま、勝てたから結果オーライかな?
リョウコ、すごい顔してたね。まさか負けると思ってなかったんだろうね。
慌てて太い客に無理矢理入れさせようとして、キレられてんの。あんなリョウコ初めてみた。
レイ:あーあれはウケた。
ナオミ:キャバクラで、リシャールは大きいよね。まさにテロ。
レイ:でも、やっぱ、黙って入れて、黙って帰るって……怖いよね。
ユキナさんって結局なに考えてたんだろ。
「抱きしめさせて」の後のリシャール入れるって、どういうこと?
ナオミ:さあ、普通に好きだったんじゃない?
ユキナさんどう見ても完全にレイに堕ちてたよ。
てっきり、枕でも要求するのかと思ってた。
レイ:私も。
ナオミ:要求されてたら、どうしてた?
レイ:んー? 一回くらいならよかったのかも。
ナオミ:珍しいねレイにしては。
レイ:汚いオヤジとするわけじゃないしね。ま、その場合は、ナオミとのお泊り一回減るけどね。
ナオミ:うわ。ひどい。
レイ:いいじゃん? ナオミとはこれからもできるんだし。
ナオミ:そうだけどさ。……ユキナさん、また来るかな?
レイ:さあ? わかんない。多分、来ないんじゃないかな。来ない方がいいよ。来たらまた私絞っちゃいそうだし。
ナオミ:クズ。
レイ:ナオミだって。
ナオミ:ま、そうだけど。で、今夜はどうする?
レイ:あー今夜は無理。でも、明日ならいいよ?
ナオミ:わかった。
レイ:じゃ、そゆことで……(ナオミにキス)※どこにどのようにするかはお任せします。
ユキナ:(電話)もしもし、はい、終わりました。すみません、遅くなって。はい、すぐに帰ります。
……わかりました。そうします。……はい、はい……わかってます。
よろしくお願いします。ご主人様。
ユキナ:(モノローグ)誰かが言っていた。
毒だと気が付かないのが男の愚かさなら、毒だと気が付いていて飲み干すのが女の愚かさだと。
私は一体どっちなのだろう。
男にも女にもなれない。そんな私でも必要としてくれるのなら、私はその人の為に生きようと思う。
ユキナ:(モノローグ)レイ……私、あなたのことを友達だなんて、一度も、思ったこと、なかったの。
【完】
【声劇台本 女3】『それはどこかドンペリの泡に似て』(GL版)