タロットカードから生まれた物語(5 of pentacles,3 of cups)
あなたはタロットカードのリーディングをしています。
テーブルの上には2枚のカードが並べてあります。
そのタロットカードはペンタクルの5とカップの3です。これは現在のあなたの状況。
とある家の窓から、裕福そうな3人が楽しそうに杯を掲げているのが見えます。その家の玄関扉の前で、裸足でうずくまっている人がいる。それがあなたです。
あなたは裸足で動けない。家の中の人に声をかければ、きっと嫌がらずにあなたに靴を施してくれるだろう。
でもあなたは迷っている。家の中の豊かな人たちは、多分喜んで施しをくれるだろう。更に、家の中に招き入れて、あなたを労ってくれるかもしれない。
でも、そのあとは?
彼らは、みすぼらしいあなたを放り出すことができなくなり、招き入れたことを後悔するだろう。
みすぼらしいあなたに施しを与える、その先の覚悟が無い人たちだ。だからと言って、彼らは悪人ではない。どちらかと言えば善人なのだ。覚悟が無いのも普通のこと。
覚悟をする必要があると考える知恵が、あなたにはあって、彼らには無いだけのこと。
そのことに気づいたあなたは、この場所から離れる決心をする。
まず、靴と靴下を手に入れなければと、あなたは考える。
そのためにはお金が必要だ。
今できること、落ちている缶を拾って、それをいくらかのお金と交換してもらおうかと思いついた。それで缶を探したのだが、どこにも無い。
もう誰かが集めてしまった後なのだろう。
あなたは困り果て、歩いていると、店先に段ボールが積まれていた。そのそばで働いている人に、あなたは段ボールをくれないかと頼んでみた。その人は働く手を止めずに
「いいよ」と言った。少し不機嫌そうだった。
裸足のあなたは段ボールをもらい、そこでその段ボールを使って靴の代わりにスリッパを作ることにした。
あまり上手には出来なかったが、裸足よりはマシだとあなたは思った。そこへさっきの不機嫌そうな人が来て「なんだ。段ボールの上で寝るんじゃないんだ」と言った。
この人はあなたが段ボールを寝床にしようとしていることが嫌だったのだなと、あなたは思った。
不機嫌そうだった人はガムテープを持って、再びあなたのところにやってきて「これで補強しな」と言った。あなたはガムテープを少しだけもらった。「それだけでいいのか?」と言われたので、あなたが「このスリッパ、そんなに長く履いているつもりはないので」と言うと、不機嫌そうだった人は少しだけ頬をゆるめて「そうか。頑張れよ」と
言ってくれた。
スリッパを履いたあなたは、仕事を探さなくてはと思った。そこで区役所に行ってみることにした。入った途端、場違いな気がして居心地が悪くなったが、待合室で待ってみることにした。あなたの名前はなかなか呼ばれなかった。しばらくすると職員らしき人が近寄ってきて、あなたの隣の椅子に座った。手には新品らしい靴下を持っていて、2足組みのそれを切り離して、1足をあなたに渡した。あなたは(これも施しか)と思い少し戸惑った。するとその人は「2つあるので、1つあげます」と言った。
2つあるので1つくれた。それは何となくほっとするような感じがした。あなたはそれを有り難くいただくことにした。
お礼をしたいのだけどと、あなたが言うと、その人は少し驚いた顔をした。それは驚くだろうなとあなたは思う。こんなみすぼらしい格好の自分に何ができるんだろうと思うだろうなと思った。でもあなたにもできることがある。
チョークをもらうことが出来たので、あなたは区役所の玄関前の地面いっぱいに絵を描いた。
歩道から駐車場、そして区役所の玄関まで、あなたは夢中で絵を描いた。
それは地面に広がる花畑だった。
そこを通る人が、思わず微笑んでしまうような。
少し驚いて立ち止まるような。
俯きがちに歩いている人の、目に留まるように、あなたは心をこめて優しい絵を描いた。
描き終えたあなたは「雨が降れば消えるので」と言った。
靴下をくれた人は「写真撮っておきますね」と言った。
これが、あなたが得た仕事になるかもしれないし、それで靴が買えるかどうか?それはあなた次第です。
タロットのリーディングは以上です。
このリーディングが誰かのお役に立てたなら、なにかのヒントになれたらなら、と思う次第です。
タロットカードから生まれた物語(5 of pentacles,3 of cups)