没【TL】ハチミツの日

没A オレ様系と三角関係

 琥珀を見たときに、オレはオレという人間性というか、今でいう"性癖"というものを理解した。それはただの琥珀ではなくて、虫が閉じ込められているものだったから。作り物にしては、虫の動作が自然だった。つまり作り物ならば、閉じ込める位置や虫のポージングというものを考えるだろうが、それはこだわりのない、位置的にもポージング的にも偶発的な感じのするものだった。

 それを大きくなって、まだ拗らせているわけではなく。確かに、虫のおもちゃみたいなのを樹脂で覆ったキーホルダーや、もっとファンシーな女児向けのキーホルダーみたいなのにときめいたことはあるにはあるが、それも昔のことだ。オレ様ってのは異常性癖持ちってワケじゃない。折り合いをつけていくわけだ。


「仲良くしたいんですよ」
 オレの前にやってきたのは白布(しろふ)梅衣(めい)。かわいい名前とかわいいツラをしているが男だった。見せたいものがあると言われて、そういう場合は手前が来るのが筋だと教えてやったら、「移動させると面白みが半減する」ものなのだそう。なんだ?氷像か?
 指定されたホテルはそう遠くなかったし、なんだか気持ち悪い誘い文句も薄気味悪い悪いしで、行ってみることにした。
そして今に至るわけだ。
 なかなかいい部屋で、少しゾッとした。野郎2人で閉じこもるところじゃない。
「美鶴(みつる)さんをフった女がいたじゃないですか」
 白布の野郎はにこにこしながら擦り寄ってきた。擦り寄ってきたといっても接触してきたわけじゃないが。
「バカにしてんのか」
「いいえ、いいえ。捕まえてきました」
「は?」
 にこにこと何を言っているんだ、こいつは。白布の野郎は奥の部屋と案内した。夜景に囲まれたラグジュアリーでエレガンスでファビュラスで?ビューティフルでコングラチュレーションでファンタスティックなお部屋に、ソファーとテーブルセットがあって、あとは何がない?部屋の隅に木理(もくめ)のパーテーションで作ったような小部屋がある。物置きか?
「寝室です」
 にこにこしながら白布の野郎はその部屋の扉を開けた。
 まず、光が強かった。ベッドしかないくせに。そしてその上に確かに身に覚えのあるような、ないような女が寝転がっている。手拭いを噛まされて、目隠しをしている。腕は縛られていた。
「梅衣ちゃん……」
 声で分かった。香織だ。オレが高校のときに言い寄った女。
「香織ちゃん。蜂雀園(ほうじゃくおん)さんって覚えてる?」
 
【没】
ハチミツプレイがはじまる予定があるも、半当事者として経皮のアレルギーのことが頭から離れず。
視点主完全に拒否されエンド予定。

没B 浮気され男


 俺は横たわっている女にシロップをかけた。琥珀色の。この女の好きな男の髪の色に似ているな!
 白い肌に滴り落ちていく透明の粘液が、小さく伸びていく。
 間男と食べたパンケーキは美味しかったか?俺がハチミツを食べられないから?バカにしてたのか?
 
 香織は呑気に寝ていた。裸に剥かれても。あの男も見たんだろう!赦せない。
 俺とじゃ食べられないもの食べられて、楽しかった?それで身も心もすっきりして、お酒が進んだの?

 滴り落ちていくメープルシロップを舐め上げた。あの男の垢を、俺が綺麗にしてあげる。
 あの男に見せた服で、香織は俺のところに着た。もう切り刻んじゃったけど、捨てるのはもったいないから、雑巾に縫い直してあげる。香織が粗相したら、それで拭いてあげるからね。

 香織の身体にメープルシロップを垂らしていく。

 「"パンケーキとはちみつのお店"」楽しかった?1人で行きたくなかったの?女友達と行けばよかったじゃない。友達いないわけじゃないんでしょう?ねぇ!香織……
 あのね、香織。浮気ももちろん悲しかった。でも一番悲しかったのは、浮気男と行ったところが、わざわざ俺の食べられないハチミツのお店だったことなんだよ。 
 俺は香織のカレシに相応しくないんだなって思ったんだ。


 俺は惨めなバター犬―シロップ犬になって、香織の肌をべたべたにした。
 香織の明るくて優しくて、控えめですごく清純で、清楚なところが好きだった。可愛くて、派手じゃないのにおしゃれで、自慢のカノジョだった。けれども俺といえば、香織を疑ってこそこそ後を尾けるドブネズミだよ。一緒にパンケーキ屋にすら行ってあげられないみすぼらしい男なんだ。
 
 メープルシロップなんかじゃなくて、本当はハチミツのほうがよかったんだろう。でも俺の貧弱な体質(カラダ)がそれを赦さないんだから!

 俺は香織のそれこそパンケーキみたいに滑らかな肌を舐めた。甘い。あの男と楽しそうに食べていた皿にはラズベリーの添え物があった。香織にも可愛らしいのが2つついていた。シロップを垂らして、そこも舐める。
「ん……」
 小さいのが硬くなって、舌先で転がせた。香織はぴくりと身動(みじろ)ぐ。起きればいい。アルコール臭い吐息が漏れていた。
 べたべたしていたけれど、俺は香織の乳首を摘んだ。
「ぁ……んっ」
 夢の中で、あの浮気男にハチミツを垂らしてもらって舐めてもらっているんだ。そうに決まってる。早く俺みたいなつまらない、制限のある男なんか捨てればよかったんだ。そうすれば堂々と例のパンケーキ屋だって行けた。ハニーレモネードとかいうのだってデートの一場面として外で飲めただろう。
 俺はその点で不能な男と変わらなかった。香織を満足させてやれなかった。受け付けないものを共有しているもの同士、付き合えばいいんだ。ああ、俺の都合で香織を制限して、束縛していたんだ。俺は香織と別れるべきだ!

 気付くと涙が溢れていた。咽びながらメープルシロップをかけていく。お前もホットケーキだの、ヨーグルトだの、トーストだとか、何かの味付けに使われたかっただろう?バカでマヌケで、惨めなピエロのお遊戯なんかに使われたくなかっただろう?

【没】
兄弟オチということもないガチ浮気のやつです。
見切り発車。多分浮気男に呑まれてカノジョ共有エンド。

没【TL】ハチミツの日

没【TL】ハチミツの日

ハチミツの日 にあたって切り捨てられた残骸。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 成人向け
  • 強い性的表現
  • 強い反社会的表現
更新日
登録日
2023-08-03

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  1. 没A オレ様系と三角関係
  2. 没B 浮気され男