「創世以前」
爛熟した紅りんご
長机の上にあり
氷の長机の上にあり
溶けゆく
溶けゆく
一つの小さき紅りんご
酸化して
黒ずんだ
ぐにゅぐにゅになった果実の
かほりは濃ゆく
鼻腔にへばり付いて
蛭の如き
生命のほんのうの憶念よ
盲目の空間で
とおい彼岸の記憶が呼んでいる
寒い朝 日も未だ現れぬ時分
底見えぬ青き湖に白靄うねるやうにして
あまいくゆりの呼べるを聞く
氷上にへばりつきし紅りんご
さながら童のおべべ広げたやうな…
「創世以前」
爛熟した紅りんご
長机の上にあり
氷の長机の上にあり
溶けゆく
溶けゆく
一つの小さき紅りんご
酸化して
黒ずんだ
ぐにゅぐにゅになった果実の
かほりは濃ゆく
鼻腔にへばり付いて
蛭の如き
生命のほんのうの憶念よ
盲目の空間で
とおい彼岸の記憶が呼んでいる
寒い朝 日も未だ現れぬ時分
底見えぬ青き湖に白靄うねるやうにして
あまいくゆりの呼べるを聞く
氷上にへばりつきし紅りんご
さながら童のおべべ広げたやうな…
「創世以前」