TV局の使命とは何?井上陽水「夜のバス」・・夜のヒットスタジオから「スペクトラム~イン・ザ・スペース
民放各局の概要其の一
会社名 株式会社BS東京 本店
店舗名 株式会社BS東京 本店
所在地 MAP〒150-0001
東京都渋谷区神宮前2丁目30-5
トーカン原宿キャステール 201
免許番号 東京都知事 (1) 第106375号
電話番号 03-6434-9475
FAX 03-6434-9476
メールアドレス info@bs-tokyo.jp
営業時間 10:00~19:00
交通 副都心線 北参道駅 徒歩11分
山手線 原宿駅 徒歩12分
総武線 千駄ケ谷駅 徒歩13分
会社画像
株式会社テレビ東京ホールディングス
代表者代表取締役社長石川一郎
(コード番号: 9413東証プライム)
問合せ先責任者経営企画局長加藤仁
(Tel. 03-3587-3 0 6 1)
h t t p s : / / w w w . t x h d . c o . j p
取締役新実傑
取締役川崎由紀夫
取締役佐々木宣幸
取締役吉次弘志
取締役長田隆
取締役小沢武史
独立社外取締役岩沙弘道
社外取締役岡田直敏
独立社外取締役澤部肇
独立社外取締役奥正之佐々木かをり
独立社外監査役井村公彦
日本経済新聞系列会社
同新聞社の記事から。
「48日間連続勤務で賠償命令 テレ東子会社に東京地裁。2023/6/29 20:10
労働時間を適正に管理せず、48日間の連続勤務をさせられたとして、テレビ東京ホールディングス子会社の番組制作会社「テレビ東京制作」(東京)で勤務した女性が、同社に慰謝料として100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決で、東京地裁は29日、違法な勤務と認定し、請求通り100万円の支払いを命じた。また未払い残業代など計約800万円の支払いも命じた。
判決によると、女性は2006年に入社し、番組制作業務に従事。17年10月に総務部に配置換えとなった後も番組制作に関わり、18年2〜3月に48日間の連続勤務をし、適応障害を発症した。
テレビ東京制作は取材に「判決内容を精査し、今後の対応を決めていきます」とコメントした。〔共同〕」
「民放3社、最終減益 4~9月、地上波の広告収入低迷
2022/11/11付日本経済新聞 朝刊」
「TBSホールディングスなど3社が前年同期比で最終減益だった。」
日経新聞は当然ながら政府と二人三脚が常。
現代のTV局や新聞社の多くも同様の状況で、本来のマスコミのあるべき姿を逸脱している現況が窺える。
其の中で、BSフジを挙げてみよう。
報道番組の筈である「プライムニュース」等は、themeも体たらくであると同時に、guestが自民党員が圧倒的に多い。
最早、報道機関としての必要性に欠け、単なる政権の反芻器官たる存在に過ぎない。
つい先日も、前首相である者が出演したが、キャスターである早稲田大卒の59歳反町は相変わらずシナリオ無しでも充分の政権援護射撃を見せた。
ところが、元首相は普段から服用している薬を更に多量に服用したようで、言葉足らずの場面も見られた。
さぞ、心痛の想いを感じての事だと見受けられた。
政権は、同じ自民の中でも安部君から極端に知的レベルが低下した。
出演した者から岸田君まで、やること成す事国民の声を聞かず、システム自体混迷の一途を辿っている。
国内で駄目だからと、海外に売り込みに飛び回るダークキャビネット(汚れた内閣)の甲斐も無く、世界中がUSAが呼びかけた事に起因した構造不況に陥っている。
最早、西側諸国にとり・・70年以上の平和が齎した「堕落と知的思考欠如」の大きなつけが回って来たと言える。
此処で話は飛ぶが、安部君の学歴は成城だか成蹊大なのか知らないが、過去の首相経験者の中でも、学歴だけを見ればlevelはDownした。
此の国が飛ぶ鳥を落とすと言われた時代の、田中角栄氏のミスは既に終わった事だが、学歴以上の実力を見せた。
此の国が戦後の高度成長を遂げたのも、72年辺りまでで、其処からは少子化が始まり経済面の崩落が進んだ。
考えてみれば、戦争直後の裸一貫からスタートしたのだから無理もないが、朝鮮特需から列島改造まで突っ走って来た。
其れが夢の如く、第一次オイルショックやバブル崩壊を経て現在は世界同時恐慌への道を一目散に転がり出している。
異常気象・感染症・よせばよいのにUSAのバイデンが齎した東西の戦争は、いよいよ西側諸国の末期の水にまで及んでいる。
此の国だけに済まず、USAの構造不況から破産申請までの重い足音が西側諸国全てに及んでいる。
今後一年半から二年・・遅くとも五年後までには株価や不動産価額の暴落が窺える。
投資だけでなく・・次に待ち受けているのは金融危機・・銀行破綻も充分あり得るという・・おぞましい時代が緞帳(どんちょう)を開けだしている。
此の狭苦しい青い惑星に尚も追い打ちをかけるように、息も出来ぬほどの頭重(ずじゅう)を感じる者は少なくないだろう。
此の三連休は・・そういう意味では・・束の間のホッとする安らぎを与えてくれるのかも知れないが・・くれぐれも災害や事故には気を付けるに越したことは無いとも言えそうだ・・。
時間の関係上・・旧作を僅かと、文豪作品から一作載せお終い・・。
ああ、その前に井上陽水のセカンドアルバム中の一曲「夜のバス」と、「傘が無い」の歌詞のみを貼り付けてみる。彼は本来guitar一本なのだが、此の曲は深町純と星勝(モップス)の編曲が素晴らしく、始めて、現在はTV局を定年退職した、学友の持っていたalbumを聞かせて貰った時には・・度肝を抜かれた・・。
今の世代にも案外受けそうである。ああ、ついでに、70年代に「brassrock」というジャンルが流行り、尾上雄二の学生時代にjazzのビッグバンドに誘われelectric guitarBase担当とし公会堂で披露をしたことがあった。
そのメンバーの中に、東京大から後に五木ひろしと共にpianoを演奏した先輩と、つい何日か前にTVに出ていた国際経済の名誉教授も含まれていた。
其の中にシカゴの「イントロダクション」やチェイスの「黒い炎~後に和田アキ子も歌番組で唄った事があった~」もオーソドックスな「茶色の小瓶」や「I remember Clifford」等の古典ナンバーに交え演奏がされた。
その後、此の国ではbrassrockは正に珍しい存在であったが、「スペクトラム」というグループが本邦では唯一デビューをしたが、そのユーチューブもあれば載せたいと思う。
YouTubeの検索Titleもついでに記しておく。
「夜のバス・井上陽水」
https://youtu.be/vG7vlREHuhA
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「傘が無いの歌詞」~著作権の関係で途中までしか表示できないので・・悪しからず。
都会では自殺する若者が増えている
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨 傘がない
行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ
君の町に行かなくちゃ 雨にぬれ
つめたい雨が今日は心に浸みる
君の事以外は考えられなくなる
それはいい事だろう?
テレビでは我が国の将来の問題を
誰かが深刻な顔をしてしゃべってる
・・・・・・・・・
スペクトラム
夜のヒットスタジオ・・から「イン・ザ・スペース」
https://youtu.be/0lDpQCc2tg0
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他にも思い出せば・・明日以降良いものを載せてみよう・・。
其れでは・・旧作からと・・文豪の作品を一作・・。
本日は子供が書いたような幼稚なものから、ショートショート二作を・・。
「神と悪魔」
グリムは嘯いた、「俺はこの世の神だ。俺に叶うやつはいない」
グリムは、このワールドを完全に支配していた。
金は幾らでもあるし、勿論、女にも事欠かない。カジノや酒場などもグリムが牛耳っている。
軍隊もグリムの配下にある。だから、悪逆非道の限りを尽くして来た。
先の世界大戦で人類は殆どが滅亡した。他にも街の様なものはあるが、交流は無い。
偶に流れ者がワールドを訪れる事はあるが、出て行く事は無い。
生きては出られないから。
そんなワールドにも、グリムに反発する若者達が現れた。
ジェイを初めとする数人は、俗に言う地下組織で、街の教会を占拠している武装集団だ。
地下組織の存在はグリムの耳にも入っている。
ワールドの住民は、「若者達は皆殺しにされるだろう」と誰もがそう思った。
数人で軍隊を相手にして勝てるのかと。
そんな時、二人の流れ者がワールドにやって来た。
一人の流れ者は教会には入らず、ジェイ達に加勢して軍隊と戦った。
そして、意外にもワールドに於ける力関係は逆転していった。
グリムは、形勢が不利になり、自分の身が危うくなると呟いた、「俺はこの世の神だ。無敵だ。負ける筈は無い」
しかし、形勢は変らなかった。グリムは教会に向かうと、ジェイに言った、「神のこの俺がお前達に殺される訳はない」
それを聞いていた流れ者は、薄笑いを浮かべると、「お前が神?やって来た事は、悪魔のようだったが」
その流れ者は、人間業では無い力で、持っていた剣をグリムの胸に突き立てた。
ジェイは狂喜して、「素晴らしい。あなたが本物の神だ」
その流れ者は、ワールドを去る直前に、「人は俺を悪魔と呼ぶ。神などいるわけがない。その上、俺の真似をするなどとんでもない。折角、この世に大戦を起こしたのに・・」
そう言うと、炎の様な目をキラリと光らせ笑った。
それを見ていたもう一人の流れ者が、「あんたが悪魔なのか、道理で強い訳だ」
と言うと、流れ者の背に手を触れた、途端に背中が溶けていく。
流れ者は、溶けていく自分の身体を見ながら、大きな声で叫んだ、「お前?まさか?」
「Inferno」
「ここは自治会の当番がいろいろあるから」
安井久は、賃貸マンションに引っ越そうと思って下調べに来た。
家賃が安いし、と思い申し込みに来た。自分の家を出てからかなり時間が掛かった、やはり、遠い。もう夕方になろうとしている。
それに、最寄りの駅からも遠い。一時間に一本しかないバスを逃したら、三十分は歩かないといけない、山の上にある大きな団地だが。
駅から団地行のバスに乗ったら、運転手は愛想が無いから、何処のバス停で降りたら良いのか聞いても黙ったまま。口を開けたと思ったら、「音漏れがうるさいから切って」と注意され、音楽も聴けない。
何とか歩いて、途中何人かに聞いて、やっと棟を探す事ができた。棟のエレベーターは使わずに、わざと階段で各階の状況を見ながら最上階の十階まで辿り着いた。ドアに「班長」「棟長」その他何か良く分から無いが、大きめの看板のような物が貼ってある。久は、こりゃ何かいろいろありそうだなと嫌な予感がした。
詳しい事を聞いてみようと思ってドアをノックしても、反応が無い。昼間だから、働いている部屋が多くて留守なのかなどと思った。
やっと、チャイムに応えてくれた部屋があって、中高年の女性がドアを開けてくれた。
久は、「済みません。何かドアにいろんな物が貼ってある部屋が多いんですけれど、あれは何ですか?」
その女性は嫌そうな顔をしながらも、「いろいろ、当番があってね、順番に回って来るんだよ。詳しい事は自治会の五区の事務所がずっと向こうの棟の先にあるから、詳しい事はそこで聞いた方がいいよ」と言って早々にドアを閉めてしまった。
事務所までは、結構遠かったが、何とか人に聞きながら見つける事が出来た。
蛍光灯かLED電球か、良くは分からないが、文字の形に配列されていて、「<span style="font-size:1.4em;">じちかいごくしゅうかいじょ</span>」と書いてある。久はそれをちらっと見て、「電光掲示板のようだが洒落ているな」と思った。
久が、ドアを開けて、「済みません、何方かいらっしゃいますか?」と声を掛けたら、奥から中高年の女性が出て来た。
久が分からない事を聞き出す。「あの班長とか、棟長とか、その他ドアに貼ってあるのは当番という事でしょうが、どんな事をするんですか?」
女性は細かい説明を始めた。「班長は・・、棟長は・・」
久は、そのくらいなら何処もあるだろうから面倒でも仕方が無いなと思った。
しかし、女性の話はなかなか終わらない。話している最中に老人が入って来て、「あたしゃ、これ、出れないから」と弱弱しそうな口調で女性と話をする。
「先ずは、自治会費の集金、これは一軒一軒廻って集金ね」
「先程、何処の部屋のドアをノックしても反応が無かったんですが、まあ、昼間だからいないんでしょうね」
「違うんだよ。此処は、年寄りばかりだから、耳が聞こえ無いからね」
久は、こりゃ大変そうだなと思い、「それじゃあ、集金にかなり苦労しそうですね」と言うと、女性は何とも言えない顔付で、「まあ、やってみれば分かるよ」
久が次の質問をしようと思ったら、先程の老人が入って来て、先程と同じ事を。「あたしゃ、出れないからね」
女性が、「分かってるよ」
久が女性と話をはじめて暫くすると、また、あの老人が。久は四十分くらい集会所にいたが、その間に十回くらい、あの老人が同じ事を言いに来る。
久は自分の親で経験があったから、「あの方、認知症では?」
女性はぶすっと笑って、「此処は多いんだよ。ああいう人達が。皆、九十五とか百歳代・・だよ。あんたなんか若いから・・」
老人の度重なる訪問の合間に詳しい事を聞く。
久は女性の説明を聞いている内に、「こりゃ、半端じゃないな。しんどいぞ」
などと思った。
女性が喋る、「・・それに、建物の階段の清掃・建物の周りの清掃・集金・運動会・祭り・まだまだあるよ。ゴミ置き場の清掃に分別や・・他にもいろいろ・・」
久は思った。「ゴミ置き場など普通は業者が来て持って行くし、ある程度清掃して行くから・・、そんな事までやる所は無いけれどな」
「ゴミの分別と言っても、いろんな物があるからね・・死骸とか・・」
久は呟いた。「面倒だな。ペットの死んだ後まで処理しなきゃいけないのか・・」
女性は耳は悪くないらしい、久の呟きをしっかり聞いていた。
「ペット?違うよ。此処は年寄りが多いから・・」
久はこれ以上説明を聞いても仕方が無いと、挨拶をして、表に出た。引越し、此処はやめようと思った。
もう、外は真っ暗だった。
入る時に気付いた電光掲示板の看板が、闇の中で心細そうに輝いている、殆ど、電球か蛍光灯が切れているようだ。残った灯りは僅かに三文字だけ。
「じ・・・ごく・・・・・・・」
文豪作品から。
蜃気楼
――或は「続海のほとり」――
芥川龍之介
一
或秋の午頃ひるごろ、僕は東京から遊びに来た大学生のK君と一しょに蜃気楼しんきろうを見に出かけて行った。鵠沼くげぬまの海岸に蜃気楼の見えることは誰たれでももう知っているであろう。現に僕の家うちの女中などは逆まに舟の映ったのを見、「この間の新聞に出ていた写真とそっくりですよ。」などと感心していた。
僕等は東家あずまやの横を曲り、次手ついでにO君も誘うことにした。不相変あいかわらず赤シャツを着たO君は午飯ひるめしの支度でもしていたのか、垣越しに見える井戸端にせっせとポンプを動かしていた。僕は秦皮樹とねりこのステッキを挙げ、O君にちょっと合図をした。
「そっちから上って下さい。――やあ、君も来ていたのか?」
O君は僕がK君と一しょに遊びに来たものと思ったらしかった。
「僕等は蜃気楼を見に出て来たんだよ。君も一しょに行かないか?」
「蜃気楼か? ――」
O君は急に笑い出した。
「どうもこの頃は蜃気楼ばやりだな。」
五分ばかりたった後、僕等はもうO君と一しょに砂の深い路みちを歩いて行った。路の左は砂原だった。そこに牛車うしぐるまの轍わだちが二すじ、黒ぐろと斜めに通っていた。僕はこの深い轍に何か圧迫に近いものを感じた。逞たくましい天才の仕事の痕あと、――そんな気も迫って来ないのではなかった。
「まだ僕は健全じゃないね。ああ云う車の痕を見てさえ、妙に参ってしまうんだから。」
O君は眉まゆをひそめたまま、何とも僕の言葉に答えなかった。が、僕の心もちはO君にははっきり通じたらしかった。
そのうちに僕等は松の間を、――疎まばらに低い松の間を通り、引地川ひきじがわの岸を歩いて行った。海は広い砂浜の向うに深い藍色あいいろに晴れ渡っていた。が、絵の島は家々や樹木も何か憂鬱ゆううつに曇っていた。
「新時代ですね?」
K君の言葉は唐突だった。のみならず微笑を含んでいた。新時代? ――しかも僕は咄嗟とっさの間あいだにK君の「新時代」を発見した。それは砂止めの笹垣ささがきを後ろに海を眺めている男女だった。尤もっとも薄いインバネスに中折帽をかぶった男は新時代と呼ぶには当らなかった。しかし女の断髪は勿論もちろん、パラソルや踵かかとの低い靴さえ確に新時代に出来上っていた。
「幸福らしいね。」
「君なんぞは羨うらやましい仲間だろう。」
O君はK君をからかったりした。
蜃気楼の見える場所は彼等から一町ほど隔っていた。僕等はいずれも腹這はらばいになり、陽炎かげろうの立った砂浜を川越しに透かして眺めたりした。砂浜の上には青いものが一すじ、リボンほどの幅にゆらめいていた。それはどうしても海の色が陽炎に映っているらしかった。が、その外には砂浜にある船の影も何も見えなかった。
「あれを蜃気楼しんきろうと云うんですかね?」
K君は顋あごを砂だらけにしたなり、失望したようにこう言っていた。そこへどこからか鴉からすが一羽、二三町隔った砂浜の上を、藍色あいいろにゆらめいたものの上をかすめ、更に又向うへ舞まい下さがった。と同時に鴉の影はその陽炎かげろうの帯の上へちらりと逆まに映って行った。
「これでもきょうは上等の部だな。」
僕等はO君の言葉と一しょに砂の上から立ち上った。するといつか僕等の前には僕等の残して来た「新時代」が二人、こちらへ向いて歩いていた。
僕はちょっとびっくりし、僕等の後ろをふり返った。しかし彼等は不相変あいかわらず一町ほど向うの笹垣ささがきを後ろに何か話しているらしかった。僕等は、――殊にO君は拍子抜けのしたように笑い出した。
「この方が反かえって蜃気楼じゃないか?」
僕等の前にいる「新時代」は勿論もちろん彼等とは別人だった。が、女の断髪や男の中折帽をかぶった姿は彼等と殆ほとんど変らなかった。
「僕は何だか気味が悪かった。」
「僕もいつの間に来たのかと思いましたよ。」
僕等はこんなことを話しながら、今度は引地川ひきじがわの岸に沿わずに低い砂山を越えて行った。砂山は砂止めの笹垣の裾すそにやはり低い松を黄ばませていた。O君はそこを通る時に「どっこいしょ」と云うように腰をかがめ、砂の上の何かを拾い上げた。それは瀝青チャンらしい黒枠の中に横文字を並べた木札だった。
「何だい、それは? Sr. H. Tsuji …… Unua …… Aprilo …… Jaro ……1906……」
「何かしら? dua …… Majesta ……ですか? 1926としてありますね。」
「これは、ほれ、水葬した死骸しがいについていたんじゃないか?」
O君はこう云う推測を下した。
「だって死骸を水葬する時には帆布か何かに包むだけだろう?」
「だからそれへこの札をつけてさ。――ほれ、ここに釘くぎが打ってある。これはもとは十字架じゅうじかの形をしていたんだな。」
僕等はもうその時には別荘らしい篠垣しのがきや松林の間を歩いていた。木札はどうもO君の推測に近いものらしかった。僕は又何か日の光の中に感じる筈はずのない無気味さを感じた。
「縁起でもないものを拾ったな。」
「何、僕はマスコットにするよ。……しかし1906から1926とすると、二十はたち位で死んだんだな。二十位と――」
「男ですかしら? 女ですかしら?」
「さあね。……しかし兎とに角かくこの人は混血児あいのこだったかも知れないね。」
僕はK君に返事をしながら、船の中に死んで行った混血児の青年を想像した。彼は僕の想像によれば、日本人の母のある筈はずだった。
「蜃気楼か。」
O君はまっ直すぐに前を見たまま、急にこう独り語を言った。それは或は何げなしに言った言葉かも知れなかった。が、僕の心もちには何か幽かすかに触れるものだった。
「ちょっと紅茶でも飲んで行ゆくかな。」
僕等はいつか家の多い本通りの角に佇たたずんでいた。家の多い? ――しかし砂の乾いた道には殆ど人通りは見えなかった。
「K君はどうするの?」
「僕はどうでも、………」
そこへ真白い犬が一匹、向うからぼんやり尾を垂れて来た。
二
K君の東京へ帰った後のち、僕は又O君や妻と一しょに引地川の橋を渡って行った。今度は午後の七時頃、――夕飯ゆうめしをすませたばかりだった。
その晩は星も見えなかった。僕等は余り話もせずに人げのない砂浜を歩いて行った。砂浜には引地川の川口のあたりに火ほかげが一つ動いていた。それは沖へ漁に行った船の目じるしになるものらしかった。
浪なみの音は勿論絶えなかった。が、浪打ち際へ近づくにつれ、だんだん磯臭さも強まり出した。それは海そのものよりも僕等の足もとに打ち上げられた海艸うみぐさや汐木しおぎの匂においらしかった。僕はなぜかこの匂を鼻の外にも皮膚の上に感じた。
僕等は暫しばらく浪打ち際に立ち、浪がしらの仄ほのめくのを眺めていた。海はどこを見てもまっ暗だった。僕は彼是かれこれ十年前ぜん、上総かずさの或海岸に滞在していたことを思い出した。同時に又そこに一しょにいた或友だちのことを思い出した。彼は彼自身の勉強の外にも「芋粥いもがゆ」と云う僕の短篇の校正刷を読んでくれたりした。………
そのうちにいつかO君は浪打ち際にしゃがんだまま、一本のマッチをともしていた。
「何をしているの?」
「何ってことはないけれど、………ちょっとこう火をつけただけでも、いろんなものが見えるでしょう?」
O君は肩越しに僕等を見上げ、半ばは妻に話しかけたりした。成程一本のマッチの火は海松みるふさや心太艸てんぐさの散らかった中にさまざまの貝殻を照らし出していた。O君はその火が消えてしまうと、又新たにマッチを摺すり、そろそろ浪打ち際を歩いて行った。
「やあ、気味が悪いなあ。土左衛門の足かと思った。」
それは半ば砂に埋うずまった遊泳靴ゆうえいぐつの片っぽだった。そこには又海艸の中に大きい海綿もころがっていた。しかしその火も消えてしまうと、あたりは前よりも暗くなってしまった。
「昼間ほどの獲物はなかった訣わけだね。」
「獲物? ああ、あの札か? あんなものはざらにありはしない。」
僕等は絶え間ない浪の音を後うしろに広い砂浜を引き返すことにした。僕等の足は砂の外にも時々海艸を踏んだりした。
「ここいらにもいろんなものがあるんだろうなあ。」
「もう一度マッチをつけて見ようか?」
「好いよ。………おや、鈴の音おとがするね。」
僕はちょっと耳を澄ました。それはこの頃の僕に多い錯覚かと思った為だった。が、実際鈴の音はどこかにしているのに違いなかった。僕はもう一度O君にも聞えるかどうか尋ねようとした。すると二三歩遅れていた妻は笑い声に僕等へ話しかけた。
「あたしの木履ぽっくりの鈴が鳴るでしょう。――」
しかし妻は振り返らずとも、草履ぞうりをはいているのに違いなかった。
「あたしは今夜は子供になって木履をはいて歩いているんです。」
「奥さんの袂たもとの中で鳴っているんだから、――ああ、Yちゃんのおもちゃだよ。鈴のついたセルロイドのおもちゃだよ。」
O君もこう言って笑い出した。そのうちに妻は僕等に追いつき、三人一列になって歩いて行った。僕等は妻の常談じょうだんを機会に前よりも元気に話し出した。
僕はO君にゆうべの夢を話した。それは或文化住宅の前にトラック自動車の運転手と話をしている夢だった。僕はその夢の中にも確かにこの運転手には会ったことがあると思っていた。が、どこで会ったものかは目の醒さめた後もわからなかった。
「それがふと思い出して見ると、三四年前にたった一度談話筆記に来た婦人記者なんだがね。」
「じゃ女の運転手だったの?」
「いや、勿論男なんだよ。顔だけは唯ただその人になっているんだ。やっぱり一度見たものは頭のどこかに残っているのかな。」
「そうだろうなあ。顔でも印象の強いやつは、………」
「けれども僕はその人の顔に興味も何もなかったんだがね。それだけに反かえって気味が悪いんだ。何だか意識の閾しきいの外にもいろんなものがあるような気がして、………」
「つまりマッチへ火をつけて見ると、いろんなものが見えるようなものだな。」
僕はこんなことを話しながら、偶然僕等の顔だけははっきり見えるのを発見した。しかし星明りさえ見えないことは前と少しも変らなかった。僕は又何か無気味になり、何度も空を仰いで見たりした。すると妻も気づいたと見え、まだ何とも言わないうちに僕の疑問に返事をした。
「砂のせいですね。そうでしょう?」
妻は両袖りょうそでを合せるようにし、広い砂浜をふり返っていた。
「そうらしいね。」
「砂と云うやつは悪戯いたずらものだな。蜃気楼しんきろうもこいつが拵こしらえるんだから。………奥さんはまだ蜃気楼を見ないの?」
「いいえ、この間一度、――何だか青いものが見えたばかりですけれども。………」
「それだけですよ。きょう僕たちの見たのも。」
僕等は引地川ひきじがわの橋を渡り、東家あずまやの土手の外を歩いて行った。松は皆いつか起り出した風にこうこうと梢こずえを鳴らしていた。そこへ背の低い男が一人、足早にこちらへ来るらしかった。僕はふとこの夏見た或錯覚を思い出した。それはやはりこう云う晩にポプラアの枝にかかった紙がヘルメット帽のように見えたのだった。が、その男は錯覚ではなかった。のみならず互に近づくのにつれ、ワイシャツの胸なども見えるようになった。
「何だろう、あのネクタイ・ピンは?」
僕は小声にこう言った後、忽たちまちピンだと思ったのは巻煙草まきたばこの火だったのを発見した。すると妻は袂たもとを銜くわえ、誰たれよりも先に忍び笑いをし出した。が、その男はわき目もふらずにさっさと僕等とすれ違って行った。
「じゃおやすみなさい。」
「おやすみなさいまし。」
僕等は気軽にO君に別れ、松風の音の中を歩いて行った。その又松風の音の中には虫の声もかすかにまじっていた。
「おじいさんの金婚式はいつになるんでしょう?」
「おじいさん」と云うのは父のことだった。
「いつになるかな。………東京からバタはとどいているね?」
「バタはまだ。とどいているのはソウセェジだけ。」
そのうちに僕等は門の前へ――半開きになった門の前へ来ていた。
「君は山を呼び寄せる男だ。呼び寄せて来ないと怒る男だ。地団駄を踏んでくやしがる男だ。そうして山を悪く批判する事だけを考える男だ。なぜ山の方へ歩いて行かない。夏目漱石」
「好人物は何よりも先に、天上の神に似たものである。第一に、歓喜を語るに良い。第二に、不平を訴えるのに良い。第三に、いてもいなくても良い。芥川竜之介」
「金は食っていけさえすればいい程度にとり、喜びを自分の仕事の中に求めるようにすべきだ。志賀直哉」
「真らしき嘘はつくとも、嘘らしき真を語るべからず。徳川家康」
「自分の心は秤のようなものである。人の都合で上下したりはしない。軍師諸葛亮孔明」
「by europe123 」
「0821さよならを」
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TV局の使命とは何?井上陽水「夜のバス」・・夜のヒットスタジオから「スペクトラム~イン・ザ・スペース