「ちゅんこ」

 ちゅんこやちゅんこ
 かあいいちゅんこや何処にいる?
 あっちの草なみだろか
 向かうの小川のほとりだろか
 しろくて ちいさい 文鳥の子を見ませんでしたか
 雀のやうに鳴く子です
 虫を食べないで一緒に遊ぶ子です
 蝶々を泣きながら食べる子です
 灰色の鳩におびえる子です
 ちゅんこ ちゅんこ 何処行った
 もう月が出る、月が出る
 おさない文鳥何処行った
 夜になって辺りは暗い
 空気が肌に露をなす
 両手で前をかき分けかき分け進めども
 足は重く 思うように前には行けない
 あれ!
 あすこに真珠がひとつぶ。
 しろくて ちいさい まるいもの
 ―おねえちゃん。
 月の光を胸に抱き
 水底で輝く一匹の文鳥が
 ちゅんこが彼女をさう呼んだ

 月の光は澄み
 青く白く冴え渡る
 さながら雪に会う寒月の緊張の如し

「ちゅんこ」

「ちゅんこ」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-07-13

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