冬に帰る

春の終わりに吐息は要らない。

冷たい雨に雑じって、若人は群れて夢のあと。
屋根にこびり付いて落ちない雨は夜の闇を昼に留めて、今日は日曜日。
寒い々々日。

銀の鈴の下で待ち合わせをする沢山の若人よ。冷たい雨に、色彩を失った追憶は遠い樹の中へと帰って行く。

私に独りは強要されない。

冷たい雨が今の私に冬の懐かしさを思い出させる。
嗚呼来る。俯いた心が冷たい冬に帰ろうとする。頭を下げて、傍に寄って来る幻影は雨に雑じってホームに降りる。電車に乗り込むようにおそる々々々近寄って来る。

私は独り帰る。揺れない電車の中で座っている。開かない窓に頰を寄せて雪男の歌を歌っている。

冬に帰る

冬に帰る

頭を下げて、傍に寄って来る幻影は雨に雑じってホームに降りる。電車に乗り込むようにおそる々々々近寄って来る。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-07-09

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