冬に帰る
春の終わりに吐息は要らない。
冷たい雨に雑じって、若人は群れて夢のあと。
屋根にこびり付いて落ちない雨は夜の闇を昼に留めて、今日は日曜日。
寒い々々日。
銀の鈴の下で待ち合わせをする沢山の若人よ。冷たい雨に、色彩を失った追憶は遠い樹の中へと帰って行く。
私に独りは強要されない。
冷たい雨が今の私に冬の懐かしさを思い出させる。
嗚呼来る。俯いた心が冷たい冬に帰ろうとする。頭を下げて、傍に寄って来る幻影は雨に雑じってホームに降りる。電車に乗り込むようにおそる々々々近寄って来る。
私は独り帰る。揺れない電車の中で座っている。開かない窓に頰を寄せて雪男の歌を歌っている。
冬に帰る