きみのさきに

道端に嘘みたいに

リンゴがひとつ落ちてる
赤く丸く静かなリンゴ
この世のものじゃないみたい

ぼくはきみを振り返った
そしてリンゴを指差した
きみは不思議そうに頬笑んだ
何も見えないよと頬笑んだ

散った桜の花びらを
ぼくは掴んで振り撒いた
風に押された花びらが
ぼくの身体に貼り付いた

ぼくはきみを振り返った
その花びらを指差した
きみは細い指を伸ばして
取ろうとして止めたんだ

*
ぼくはきみのさきにあって
届かない世界をさ迷う
本当に大切なものには
触れないのかも知れない

東海岸に続く道は
どんより曇って薄暗い
壊れた自動販売機
背高泡立ち草が揺れて

ぼくはきみを振り返った
海は広いねと指差した
きみは黙って水平線を
ぼくのシャツを掴んだままで

きみのさきに

きみのさきに

ぼくはきみを振り返った そしてリンゴを指差した きみは不思議そうに頬笑んだ 何も見えないよと頬笑んだ

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-07-01

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