きみのさきに
道端に嘘みたいに
リンゴがひとつ落ちてる
赤く丸く静かなリンゴ
この世のものじゃないみたい
ぼくはきみを振り返った
そしてリンゴを指差した
きみは不思議そうに頬笑んだ
何も見えないよと頬笑んだ
散った桜の花びらを
ぼくは掴んで振り撒いた
風に押された花びらが
ぼくの身体に貼り付いた
ぼくはきみを振り返った
その花びらを指差した
きみは細い指を伸ばして
取ろうとして止めたんだ
*
ぼくはきみのさきにあって
届かない世界をさ迷う
本当に大切なものには
触れないのかも知れない
東海岸に続く道は
どんより曇って薄暗い
壊れた自動販売機
背高泡立ち草が揺れて
ぼくはきみを振り返った
海は広いねと指差した
きみは黙って水平線を
ぼくのシャツを掴んだままで
きみのさきに