限りある命だから
父が姪の手を引いて
くれないの草原を歩いて行く
限りある命だから
僕等は
精一杯やって行こう
幼い姪の背に合わせて傾いた父の背が
いつまでも傾いたまま
こうして私の眼に焼き付くのだろう
二人はくれないの丘を少しずつ下って行く
淡く遠い、緑がかった光景
私の影が眼前に伸びて
父と姪を追う
二人を包み込むかのように
音も無く草原が波立つ
姪が先に見えなくなり
傾いた父もやがて見えなくなる
夕陽が傾いて
私の影が丘を少しずつ下って行く
私はきっと明日を生きて行く
秋風が耳を打つリズム
草原が徐々にモノトーンに定着されて
風が東寄りになる
私の影が更に草原を伸びて行く
どこまでも遠くへ行こうとして
ひたひたと夜が手許に降りて来る
限りある命だから