限りある命だから

父が姪の手を引いて

くれないの草原を歩いて行く

限りある命だから
僕等は
精一杯やって行こう

幼い姪の背に合わせて傾いた父の背が
いつまでも傾いたまま
こうして私の眼に焼き付くのだろう

二人はくれないの丘を少しずつ下って行く
淡く遠い、緑がかった光景
私の影が眼前に伸びて
父と姪を追う

二人を包み込むかのように
音も無く草原が波立つ
姪が先に見えなくなり
傾いた父もやがて見えなくなる

夕陽が傾いて
私の影が丘を少しずつ下って行く

私はきっと明日を生きて行く
秋風が耳を打つリズム

草原が徐々にモノトーンに定着されて
風が東寄りになる

私の影が更に草原を伸びて行く
どこまでも遠くへ行こうとして

ひたひたと夜が手許に降りて来る

限りある命だから

限りある命だから

限りある命だから 僕等は 精一杯やって行こう

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-07-01

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