「わたくし」

 どこへ行かうと
 心のあてがあるでもなし
 ここで寝やうと
 安住が目前に立つでもなし
 わたくしは知っている
 わたくしが不安に喘ぐことも
 わたくしは感じている
 わたくしが安住にも喘ぐことを
 いつまでも一足す一が二にならないで
 わたくしはすっかり鉛筆をすり減らして短くしてしまった
 もう正規の持ち方が不可能なほどに
 黒文字の鉛筆は短くなった
 笑われて
 嘲られて
 それらが仕事だとでも言うやうに
 わたくしはずっと計算間違いばかりをしています
 百問あれば百問きれいに間違えて
 白い紙にりんごのうさぎはねまわる
 ぴょむぴょむぴょむ
 たのしいな
 わたくしの欠損した思考回路は
 いつでも夏を終らす線香花火をおぎゃあと生む

「わたくし」

「わたくし」

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-29

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