美術館の夜

絵画の並ぶ静謐な部屋

長い廊下 冷たい床



「見てはいけない絵があるんだって」



君の手を取り奥へ行く



視線が群がる

誰もいない暗がり

動く白い女神

ここではない風景



走り抜けた先に佇んでいた

人型に穴の空いた絵画



黒い額縁が鈍く輝く
吸い込まれる夜



「お願い出して」(もう一度だけ)



こちらを覗く鑑賞者には

僕の声は聞こえない

美術館の夜

美術館の夜

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted