郷愁のサディズム
能う限り凄惨な死に方で死ね
嗟、一時の気の迷いではなかった
そんなものではまったくなかった
記憶を愛撫する時間は終った
記憶がもうないのだから
過ぎた時間と差し迫った時間しかない
と、ある詩人は書いたが、おれにはもう
差し迫った時間しかない、それは
この世のありとあらゆる祈りと
呪いを胚胎しているから、おれは
おれのかつての緣がすべからく、跡形もなく崩落するのを
笑いながら視ていた
人は追憶のみにて生くる者に非ず
おれは追憶をしなければ生きてもいない
刹那主義にも見放された化け物だ
死の萌芽を摘まんとする者どもを赦す勿れ
一切の望みが潰えた曠野には、一輪の
嘔気を誘うほど麗しい花が咲いている
郷愁のサディズム