郷愁のサディズム

(あた)う限り凄惨な死に方で死ね

(ああ)一時(いっとき)の気の迷いではなかった

そんなものではまったくなかった

記憶を愛撫する時間は(おわ)った

記憶がもうないのだから

過ぎた時間と差し迫った時間しかない

と、ある詩人は書いたが、おれにはもう

差し迫った時間しかない、それは

この世のありとあらゆる祈りと

呪いを胚胎しているから、おれは

おれのかつての(よすが)がすべからく、跡形もなく崩落するのを

笑いながら視ていた

人は追憶のみにて生くる者に(あら)

おれは追憶をしなければ生きてもいない

刹那主義にも見放された化け物だ

​死の萌芽(ほうが)を摘まんとする者どもを赦す(なか)

一切の望みが潰えた曠野には、一輪の

嘔気を誘うほど麗しい花が咲いている

郷愁のサディズム

郷愁のサディズム

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-15

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