飛行機

飛行機

物置にしまってあった飛行機をじっと眺める時にしか、心は休めなくなってしまったのか。
青空に何の執着もなく軽やかに舞う飛行機の御姿を、あなたは知っているでしょうか。
飛行機は美しき形状で、全く微動だにせず一直線に大空を浮かび、マッハで飛び散っていく。
心に恋を背負った私の飛行機が、何も考えずに浮かび、重力という重荷を完全に忘れていくのです。
人間を浮かすジェットエンジンの宇宙力学を超えたマシン。時空を数えて一つ二つと無限に積み重ねていった、トライアンドエラーの繰り返し。
重力を反して浮き上がりたい妄想に駆られ、一心に宙を浮く体感をしてみたい。
恋した分だけ大人の女になれるのです。
文明の最前線に押しやる、天と地が交わる十字架上に、飛行機が一直線にあなただけを愛している。
この世に一つとしてないもの、それはあなたが経験してきた全く宙に浮いた青き心。
重力を忘れたあなたは生まれて初めて天使になれる。
こうして飛行機があなたを背中に乗せて、無限の素粒子をガソリンにして飛翔し、ハンドルを握らせ、宇宙の夜明けに極めて大きなエネルギーで凝縮し一点に注魂する。
巫女は体をふるわせて祈り、一つまた一つと、極楽鳥の飛ぶ姿を見つめて微笑した。
神様が愛した飛行機のように、私も大空を飛んでみたいと、おなじないの中に御言葉が飛翔し、桜の花びらが人間模様の大の字で夢に心中している。
子供の頃の夢は、青空に紙飛行機を誰よりも高く飛ばす事でした。夢とはあなたが泣いて救世主に呟いた言葉。
それは飛ぶという祝詞。
飛行機で青空を飛ばせてくれた、人類の力業の努力に感謝いたします。
バンと銃声が鳴る頃に、目映く青空に飛び上がったのです。
青空を好きになってしまった少年は、今頃紙飛行機になったのでしょう。
青空の中に翼の形状をはためかし可憐に浮遊している。
まさに今一番大きな飛行機に乗って、一つ一つの部品の駆動性能を限界まで押し進め火花を散らすのです。
飛行機の細部まで気遣う職人気質で、汗をかいた男の献身的な姿の中に、神様が宿ってしまったのです。
人間が飛行機になった時、一体何を人生の記憶の中で初めに思い焦がれるのでしょう。
人間の記憶の中で、静謐さに化薬が爆発して、火花の中にショックを感じ知性の進化を促す。
大地を飛び越えるあなたの心はまさに生きている。
飛行機の名機を作ったあの男は一体何を考えていたのか。
最も神様に愛された汗と涙の傑物に、生命を与え給え。
飛行機はおのずと備えた限界性能を発揮して、青空に溶けて一緒に無と化し、生きる事とは今まさに感動する事なのだと知るのです。
天が微かに揺れたのは、今飛行機が飛んで人生において頼れる主を見つけたからに違いない。
飛行機は飛ぶのが宿命で、その為に存在しているのです。
あの少年は人生をやめなくて本当に良かった。
飛行機に捧げた人生に悔いなんて全く無いのです。
オーラが出て来たよ。それが一つの人生における答えであり、真剣に生きてきたあなたの答えでもあるのです。
人を喜ばす事をしなければならない。
天に飛行機を飛ばせたあなたに神様はふっと微笑して、生きてきた意味が生じて全てが報われた。
次はあなたが飛ぶ時なのです。
あなたが飛ばした飛行機が感動を与えている。
もう人間のした事とは思えません。
神のした仕業の妙味にひたむきな汗が流れ、朝焼けの光はこんなにも眩しいのか。
飛行機を浮かばせたのは、機知に富んだ全天星の輝きに満ちたヒエラルギーなのです。
この待ちに待った夢幻の中に、か細い創造主の秘密の造形物があり、秘められた知性を示し、飛ぶ事を愛していく。
ただそれだけなのです。
あなたは生まれたばかりの人間になってしまいました。
この待ちに待った人生の今が幸せです。
一世一代の人間の中心にいて全宇宙を見る時、心は開き生命の鼓動を初めて叩く。
あなたは愛の雫の中に一番大事なエキスを見つめ、何て美しい獲物を得た事でしょう。
ほらっ、天使が笑っているわよ。宇宙が泣き静まる時、あなたは飛行機になった。
もう一つの宇宙を見つけました。あなたのずっと探し求めていた宇宙でした。

飛行機

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-07

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