花を咲かせた

花を咲かせた

花を咲かせたあなたのか細い手が、産まれたばかりの赤ちゃんを抱き上げるのです。
人間が産まれて来た時の初めての色彩をあなたは憶えていますか。
そっとひなげしの花をそっと私に手渡したあなたの優しい幻影に涙がでていた。幼児に全人生の重荷を免れさせた。
この世を産み落としたマリアは、その真っ赤に紅潮した表情で人生の岐路に立つ羊使い。
この世を明るくしたその御方こそ、人生で花を散らせたマリアの泣いた表情だとしたら。もう生きる意味なんて無いのでしょう。
人間を喜ばせた本音の花の開き方に、この精緻な機構で花びらの一つ一つの生きてきた皺に凝縮されるのです。
この計り知れない情熱のマグマで烈した炎の中心部に、誰も見つけられなかったシンメトリな花びらの中枢神経があった。
神様の緩やかにしねらせた本当の言葉があり、言葉の中に産まれたばかりのへその緒があった。
この世に精密な機構の時計を動かせた花の中心に、ダイナミズムで微かに動く葉緑素の脈動。
花びらを散らせてはいけない罪の意識に、燃ゆる色彩で芽ぶいていく生命の最上級の傑物。
人生を最も美しく咲かせる動力機構に、最新の花びらの機構が葉茎を中心軸にして、シンメトリに虹色の夢幻へと周る銀河の初体験。
人生で初めて花びらを回転させた人間の細長い指に、この世で最も美しいメンゲレの花びらが黄色の草原に咲き誉る。
あなたを幸せにしたのは美しき崇高な手つきだとしたら、巫女はじっと神様と対面して祈るのでしょう。
情熱の最も熟したる部分に、軽やかにメンゲレの花びらが回転し、己の機構の微々たるパーツを解き放つ。
毛細血管に初めて血液を垂らせて流したあなたに助けられた。
あなたの微かに示した愛のエキスの痕跡が、今になってとても嬉しいのです。
人生の渇きを潤し湿らせた、マリアのその類い稀な創造主の夢幻の煌めきに、また夜に泣いてしまうのです。
この大地を海水で満たし、その湿らせた微かな人間としての一つの生きる道が嬉しかったと、その意味に一面、母親の羊水で体と足を濡らせていくのです。
花びらが散りし舞い降りた羊水で泣いてお祈りしていた、巫女の赤らめた顔は一体何を意味するのでしょう。
幼児は一体何を夢見て羊水に浮かんでいる事でしょう。
この世で真理の海の中に神様のとなりで添い寝している。
身体はぷかぷかと浮かんで本当にいい気持ちです。
あなたは白昼夢の中で一体何を考えて、その真っ赤な花びらをそっと手に触れて涙を浮かべなくてはならないのでしょう。
あなたが幼児だった頃に、真っ赤な真理を海に浮かべたのは、マリアの微笑だったというのか。
マリアが愛した翼の一枚の中に、最上級に生きている花びらのミクロユニヴァースがあったのです。
海の中には栄養分があり原始細胞が生き生きとぷかぷか脈動している。
宇宙の闇に浮かぶ花びらが光を微かに発し生きている。その生命はやっと掴んだ神様の一滴の雫。
この世でやっとシボリ出した積年の想いが、中枢の神経に集まり、円形の中に花びらがあった。
生命の花びらをふんわりと舞わせた、マリアの夢見る満面の笑顔。
それは神様に祈る敬虔な瞳の中の救世主なのです。
この何とも言えない軽さの中に、時空を超越している生命の脈動が微かに花びらで揺れている。
生命の伝導歌は究めて手のこんだ形状の立体ビジョンで、最新鋭の生命の脈動による、花びらの飛翔があった。
人間の最新のリズムで伝説の扉を開けて、花びらの通り道を作ったのです。
人が来た道の中に本当の花びらの飛翔があり、人形使いの連結部に、海の初潮のさざ波があった。
伝説の花びらの躍動で飛び散り舞い上がろうと、沈黙の中で微かに祈り揺れている。
私を助けてください。
青空に浮かぶ花びら。そっと浮かせたのが罪なのだとしたら、私が微かに泣くのをお許しください。
この哀れな生き様のけなげな私の中で手を合わせて、命を懸けて祈らなければならないのです。
私を救ったその花びらのシンメトリが本当に忘れられません。
この感傷に泣いている。花びらは真っ赤になって泣いているのです。
そうさめざめと自然に溶けて無くなるまで泣かなくてはならない。
その微かな死に行く現象に、全く哀れの中にただ雨にずっとうたれて立ち尽くすしかないのです。
人生を忘れかけた頃、ようやく花びらが宇宙遊泳をし始める事でしょう。
その浮遊する花びらの飛翔の中にただ我を忘れて立ち尽くす。
花びらの微熱に感化されて、微妙に動くシンメトリに世界創造主の一雫が滴り、マリアの手の動きで全ての現象が説明されるのです。

花を咲かせた

花を咲かせた

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-07

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