字融落下 ―ノバナ―
アスファルトに咲く花もあれば、野山に咲く花もある。どちらも等しく野花だ。
今日に打ちひしがれる人もいれば、明日を夢見る人もいる。どちらも等しく人間だ。
種子は風に乗り、僕らの文明や争い事とは無縁な顔をして、都市の吹き溜まりで灰色の雨を飲む。
時に酔いどれの吐瀉物に塗れ、道行く人に踏まれてもなお開く野花。
その姿を見て、健気に咲き誇る力強さと美しさを見出した人を『健やか』と言う。
その姿を見て、花を咲かせられなかった種子を思い涙を流す人を『貧しい』と言う。
私は野花になりたい。
私は野花になりたい。
私は野花になりたい。
字融落下 ―ノバナ―
私が書き遺して、私が読み解く。
――溶け出した行間。空想の中に落ちてゆく――。
そして私に伝える。きっと、もうすぐ。