字融落下 ―助手席と兎―
友人の運転する車。
その助手席に乗り、揺られている。
目の前には懐かしい道。六年前、高校生だった時に通っていた道だ。
友人はその道の先にある図書館へ行きたいらしい。
どんどん、知らない道へ進んでいく。
――図書館はこの道だったっけ?
やがて、道の先が水没している行き止まりに着いた。
可愛らしい兎がそこにいた。林檎くらいの大きさで、三匹ほど。
僕は車から降りて、兎を捕まえてみようと試みる。
兎は一定の距離まで近付くと、耳を使って空を跳んだ。
しかし、僕はめげずに捕まえようとする。兎は後脚の跳躍力で跳び、耳を使って滑空する……そのため、器用には逃げられないのだ。
やがて兎は水没した道の方へ跳んで、着水した。
小さい体で溺れそうになりながら水を掻き、こちらに戻ってくる。
僕はそれをしたりと、嫌らしくも待ち構え、捕獲した。
その細く柔らかな毛並みは水に濡れていて、赤子の頭部を抱えてるようだった。
字融落下 ―助手席と兎―
私が書き遺して、私が読み解く。
――溶け出した行間。空想の中に落ちてゆく――。
そして私に伝える。きっと、もうすぐ。