花

野原に菜の花が咲き誉る黄色一色に、心は微かに色気の熱情をぽっと感じたのです。
菜の花を愛すように、あなたを愛してあげたかったのです。
そっと花に愛を語り掛けた、乙女の機知に富んだ色彩が初めて、己の色彩を知ったのです。
人間を愛する時の色彩は黄色なのでしょうか。
そっと菜の花にぽっとぼやけた表情で、私だけの体内に流れるメロディーを口ずさんでみる。
天空には鳥が円形のなめらかなラインで高くその飛翔に酔い知れる。
宇宙をそっと浮かばせたあなたの何気ない一言で、色とりどりに心が発芽した。
花を一面に黄色で咲かせた人生に微かな熱がおびて、深い青色の湖の中に溶けて、月夜が人間の真実を写し初めた。
生命の発芽現象で菜の花の種子がしっかりと根を張る。
生命密度を濃くして初めて恋をした。そして葉々を天へと無限に伸ばして花を咲かせます。
大輪の花が人生の日々の努力で咲き始め、雨の結晶でふわりと蝶は舞い降りた。
その人生のめでたき赤の真実で、そっと微かに花びらがふわり開きました。
精霊の幾何学模様が一つ一つ丹念に積み重なり、立体ビジョンの生命の炎が赤く凝縮する。
花の中心部に知識を集大成した。生命の露で少し湿らせ丸みをおびて、ふんわり蝶へと変身し羽ばたきます。
虹色の雨が救いの色情で、らせん状にもつれて、青き衣の中に降誕していくひなげしの花。
宇宙のように静かに花弁を舞わせて、表と裏の中に人生の真実がひょっと顔を出す、エロスの花が赤く染まっている。
宇宙の中にたった一つの花びらが舞って色彩を変えながら、幼児の手の中に舞い降りて、新芽は頭の中で発芽し、初まりの響きの色情で神様の名前を叫ぶのです。
頭の中で赤色にたなびくお花畑の情熱で、一つの花びらが回転して舞っている。
その中心部のコアの表皮が脱皮し、誰も見てはならぬ赤の心臓部の幻影に、巫女が能面を創造し魂を丹念に色付けしていく。
魂が意思を持ち一人でに歩き始め、幼児の微かな恩情で泣いているのです。
手の平に落ちた花びらの微熱は、巫女の露の雫でかりそめの静寂な赤。
巫女の微かな神の言葉で、生命の意識の中で覚めた、立ち木の真っ直ぐな赤。
青空の中で種子が咲き誇り新芽を出す、生命のパワーは無限の螺旋形状の階段。
階段を登り詰めた誰も設計図には描いていない、直感の迸りで、この聖なる空間に精霊が誕生するのです。
宇宙の夜明けの中に、奥の間にあったこの声明の音感で、人間が集大成した傑物が生命を始めようと、覚めた不可思議な映像がぱっと明滅する。
生命を懸けた御体が織り成す、細胞が蘇生する鼓動に、意思の熱気が誰かさん、花を咲かせて。
人類の苦労の結露を青空へと零グラビティーにさせ給う。
宇宙を浮かばせる、そのギリギリの表面張力の音感の雫が、一つ花びらの上で浮遊して周っていく。
人間はその回転する雫をじっと見つめながら、地球と月の重力が成せる業について、感極まるパレットでミックスされ、手の中で複雑な形状へと進化する複製細胞。
生命を無効化した天才絵師は、絵画の花びらをうつろな幻の中で無くなり回転させる、凄みをおびた手つき。
生命を回転させる男よ。
天空を宿す虹色の花のオアシスがたゆたい、蝶がまたたく夢の青い聖堂で、花をたむけた秘められし少女。
驚いた感性の中に沈む、蓮の花びらは微熱の微睡みに、全人生のあなたは溶けていく。
ひたむきに生命を懸けて努力を積み重ねた正念場で、花びらの幼いつぼみを、優しく手に載せて声明を唱える。
一つ一つの色情がまざまざと自発性を持って変色し、輝度の精緻な機構の中に埋没し、赤い言葉の左右対称の宇宙で、一つの命が産まれたのです。
その音感の中にさざめく秘められし言葉の一言に、神様が宿り、天高く舞い上がり全ての人生を忘れていく。
人間が大事に大事に暖めた生命の花びらが色彩を初めて知った夜に、あなたが教会の聖堂で生まれたのです。
精霊がふわりと軽やかに手を指し伸べる、その一人の人間は遠く彼方に花びらを飛翔させた。
命あるもの必ず花を咲かす、大輪の渦の中で一つの海が満ちる音を聞いたのです。
誰か見知らぬ御言葉を語る、人生の新たな情景の記憶に、感覚は色彩の激情の中心部へと一番熱いエキスが生まれます。
生命を創造したあなたが、教会の聖堂の中で一人泣いている。その雨の雫の中で、色彩を、その大事な模様で螺旋の遺伝子にそっと与えたのです。 
その彼方遠くに人生の試練を乗り超えた、脱皮する蝶は感覚した事の無い情熱の炎の中で、大輪の花を咲かせた。
さあ、誰も見知らぬ色彩を生きだす、全身全霊の叫びの絶唱の中心部で、一番欲しかった御言葉が飛ぶ。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-06

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