塔
宇宙で一つの文体を作り上げるには、どれだけ努力と時間が必要なのでしょうかと、青空を見つめ無限の積み重ねによる未来の情景を想像した。
認識の青空の彼方に澄み渡る、多段構造の石が整然と美しく積み上げられた。
史上最も高くそびえ立つ人間の知性が醸し出す、赤く揺らめくマントをはがすと、この世に静謐な如情の塔が出現した。
水面の下は神秘なコスモポリタンで、ミジンコがひそひそと会話して蠢くミニチュア生物史。
水面から天井へとそびえ立つ、すらっと伸びたスリムな塔は、全ての歴史書を総括し、一つの構造物へと置き換えた滴る汗の結露。
人間が誰も発想できない言葉の羅列を組みあわせれる才能で、夢見る少女は図書館で空想に耽る意味に、あなただけの塔が立派に建っています。
塔は白い雲の上まで高々と伸びて、人類の総決算の意味合いで、淡い夢世界の神女として降臨しています。
塔の扉は重く煌びやかさで、暖かな命の迸りを讃え、それを押すと人間感覚ではない手触りで開く、運命の音が聞こえてきます。
宇宙の闇に神秘の音が取っ掛かり、全ての天体が目映く大合唱を歌い始める。
塔の内部は奥ゆかしき神聖な時空がそそり立ち、御言葉がふわふわとして浮遊している。
言葉を発する全ての記憶のかけらが中心へと集まり、ぐぐっと凝縮し熱を灯し始めた。
それを見つめていると、私は微かな炎に変身し、塔の壁に真実の御言葉を写して、遺伝子の螺旋階段を一段ずつ上へ向けて回転しながら昇っていく自動筆記があった。
宇宙の言葉を創造するのはさあ、今しかないのです。
塔の最上部へ向けて、心を清めながら昇り続ける、人生讃歌の光と闇の三面体キュービック。
宇宙が一面体から多面体にする、神技の無意識が成せる技術に、人間は死んだふりをせずに今を生きて、その先の光を確実に見るのです。
螺旋階段の奥間のメシアが降誕した大広間で、血が盛った獰猛な野獣の人間が復活の時空に向けて、命は燃える事を始めるのです。
塔の壁画にはメシアの誕生から復活への道筋が、鮮やかに描かれた修験者の叡智の視覚。
下界を見ると窓から差しこむ淡き白い光に、ほのかに映える人生の憩いの中性的抽象絵画。
人間が待ち望んだ光の造形作品が、塔の内部に交差して写し出す、無限に積み重なる多段的色彩のパレットは、神様の感覚で選び配置され、キリストがお祈りしています。
光があなたを昇天へと押し出す、魂の回廊は果てしなく、宇宙の星々の目映い輝きで夢を叶えるのです。
宇宙の塵が漂い、その美しい発光体が周りを浮遊し初め集合していく。一つの超新星が輝き初め我を明るく照らし、宇宙の先の時空が見えたのです。
宇宙は初めて光を発し、とてつもない地球史に並大抵では無い、明るい情熱を取り戻させた。
その意思の強さが微かに炎の灯火の暖かさに、うっとりと慣れ親しむ情景に、ひとり宇宙に浮かぶ嬉しさ、この為に生きてきたのです。
さあ、最上階の明かりが見えた。この目映い光が見えて、ふわっと全人生の苦労が、一つの救世主の御姿にまとまっていきます。
人間になれたこの日に、塔の頂上から救世主と並んで、青空を眺める素晴らしき日。
宇宙が微かに動き始め、手でそれを確かめると、ああ、確かに宇宙が思い通りに動いていく、どこまでも、ああいってください。
その最上階には辺り一面に花が咲き誇り、微睡みの中で救世主の預言が夜空の星々を一斉に照らし、全人類へとメッセージを送る真剣な劇場の主人公。
命は何の為にあるのかがわかり初め、全人生を筆記した書物が完成したのです。
私の人生が、人間の筆記体になり、一ページ分が一つの人生になったのです。
ページをめくっていくと、私を創造した救世主と重ね合わされる。美しき神と人間の合一に溢れんばかりの光が書物に照らされた。
この奇蹟の時、救世主がそっと微かな力で私の手を握りしめる。
塔から眺める世界は、夢が叶う心象景色の幻影。
塔の住人は青空一面に広がる御言葉を見つめ、生きていく為の想像力を養うのです。
さあ、飛びましょう。
塔