生命
洞窟の中の暗闇に一人自問自答して、生命の苦労してきた情念の塊を一つ一つ思い返してみる。
人生で様々な出来事がありましたと、その人生の宝石の輝きを手に取って、しっかりと感触で確かめてみる。
人生に光と闇のシンメトリカルな、一つの感性の生命の叙事詩がとめどなく流れ、ひたむきに生きてきた意味を、じっと我の手の相に見つめる。
洞窟の中で人生の意味について考え尽くす時、壁画にイエスキリストの生涯のモチーフ画が、一つ一つ丁寧に描かれていく不可思議なストーリー。
生誕から十字架での復活まで、この偉人の生き様を克明に描く、真剣な面持ちのロマンシズムの真骨頂に、一人の人生が我に訴え掛けた。
生命の努力の結晶が根性を念じる、魂のひらひらと舞う細雪のリズムは、単一モチーフの発展形で、桜の大輪が一斉に花開くのを見た。
奥へとイエスキリストの生き様が丹念に表現され、感性の迸りが生命の本流として、とめどなく流れて行く。
人間の情熱の証が、石室の奥へと続き、十字架が光り輝く人体救済の歴史を見た。
人間の命を懸けなければならない宿命の本堂で、孤独に輝き凝縮した一つの汗の結露に、花は濡れて湿ったのです。
花が力尽くして生命を終わらせ、地面へとひらひらと落ちる姿に泣き、それに母親の姿を重ねて見たのです。
この命の絶倫に儚き悲しみの十字架を背負った、男の力を尽くして尽きた、意識は弱くなり、そっと前へと倒れなければならない。
絶唱の遠く彼方へ、宇宙の星々が粉々になった欠片が漂う、虚無のオスティナート。
人生に意味を見い出した、炎のロマン劇場で暴れる生き方で、キリストの十字架の御姿が写し出された壁画へと行き着いた。
そこには本当の真実の十字架があったのです。
人間の人生はあまりにも美しき悲しみに生きる虚しさで、この世での苦労を、その十字架についた血はキリストのものだった。
その聖なる血にそっと我の手が触れた時、全人生の苦労の意味が眼に見えるように、一つ一つ緊張から解れ聖物の救いへと、一つの濡れた花びらは枯れていたはずなのに、水々しく漲る元気の源を復活させて生き返った。
一輪の美しき花が蘇生して、虹色に輝く色彩で、歌を一つ天上に捧げる原始鼓動。
一つ一つのリズムが増幅して十字架が動き初め、ぱあーっと救いの光を鮮やかに放つ。
奇蹟のおまじないをひたすら唱える私に、キリストがそこにいたのです。
私の頭に手を触れて、一つの花が咲き誇り、洞窟一面に一斉に明彩色の花びらが開く、全面淡き救いのオーラで虹が咲き、ふわーっと浮遊し始める私の青春は、おねんねの寝言で救われていく。
私はこの花を手に取りキリストに見せると、全人生のほころびで微笑する平明な神秘が、丹念に生命を一つ新しく生まれ変わらせたのです。
キリストはその花を手に取り、憧憬の淡くもの悲しい秘めた心で泣き出すのです。
ああ、あなたも一人の普通の人間として、人生に苦労してきたのです。
あなたの意味が二面性のモノトリアムで自己完結して語る姿勢に、もう一つ新しい光が天井から指して、洞窟の上の一面に青空が顔を出したのです。
こんな美しい青空を見させてくれたあなたは、不可思議な設計図を描く事を許された初めての人間。
私の可能性が、キリストの頭を触った感触に解き放たれた。
一つ人の情熱の魂の拠り所で、全ての青空へとキリストと一緒に浮き始めた人生レクイエム。
この最高潮の満月に、意思の物語は全て完結し昇天する事を許され、生命はなぜ生まれて来たのかわかり始めた、生きている。
これからも生命があります。
この洞窟はキリストの生涯を写し出し、受難の時代は私一人の問題ではなく、皆が感じた共通の指針となり、運命が人間として生まれて夢を持ってパッションをしていく。
さあ、青空へと飛んで行きましょう。全ての生き様が頑張った人に、救いの光を投げ掛け、一つの人生が毎日の積み重ねで完成していくのです。
一日一日の青空が我の完成へと、さあ、飛びましょう。
生命