山奥深くの人形

山奥深くの人形

山奥深くでゆっくりと自問自答する。
獣の声を聞きながら、宇宙の静けさに身を寄せ合い、生命の諸現象について観察する。不思議な生命現象が高く遠く久遠の静謐さに身をこらえている。
この夜生命の誕生が行われ蘇生されるのを、人間の肌は知っている。
周りには暗闇に静かに、人間が私の前を歩いている。この世には体験できない存在感。
宇宙の真っ黒い小道をそわそわと、人が感じる事のないペースで奥へと歩いて行く。
人間が歩く後ろを、少女がよたよたと追っていくと、人間はぱたんと足を止めた。
この人形は一体何を感じたのでしょうか。驚いているのか。
笑っているのか。死んでいるのか。一人の人形は横目の流し、私の方を冷たい視線で熱温を感じさせず、宙を浮いている。
この顔は殺されて死ぬその時の表情ではないでしょうか。
あなたは死んだ表情で宙をさまよい、三途の川を渡る水の冷たさよ。
人の気を発しないその悲しみにくれた、何とも言えない苦しい気持ちに生きるのをやめました。
人形の行き先に神社がありました。
廃神社はつたが伸びてからみつき、オーラを発しない人間の死に様に鞭を打ち、この世の冷たさを幾度にも積み重ねる。
神社の中には人が知ってはならない、この世の悲しみの充溢した底辺のプリズムが凝縮している。
この世の死んで亡くなった人間の血が蠢き、生きるのをやめた人間の死体が無造作に置かれている。
拝殿の中には神のみぞ知る教えを実践する、人形のけなげな哀しき現実の蠢きが、ひたむきに生きるのをやめていた。
死なせてくださいと、私は拝殿の中に人形と対面をはたした。
人形は一体何を考えているのか、無表情で私に全人生の神判を下そうと凝視する。
その眼はこの世の哀しき現実を見つめ、死の無表情を、まさに人間の死を、体に感覚をなれさせようとしている。
人生にそれはそれは哀しい情感に、どこまでも沈む命の水月花にそっと手を触れ、死んだ体の温度はまさに生きていない事を知ったのです。
人形は私を死なせてくれたようです。
こんなに死とは宇宙に一人孤独に浮かべ、りんごを美味しく頂く事なのでしょうか。
人形は私に生命の拍動を蘇生させ、蛍の原始温度がそっと温もりのアルペジオを奏でて、肩に人形の手が触れた。
人形は私に生命の発見されない可能性を残し、人間として復活を約束し、己の血は再び動き始めたのです。
人生に一つの物語を語るロンドは、一つのモティーフをこよなく愛し、人形の手で宙をさまよい爆発する。
その人形以外の人形が神社に無数に鎮座されている、己の薄弱した意識の中で無限に、かたかた人形が動き初め、月光に向けて手を差し伸べる。
行動原理で宙に蛍を泳がし、月光の青い光の中で私に手を向けて、復活せよと一斉に声を掛け、沈静な魂の帰結に世界が崩壊した。
神社に無数に星々の断片がばら撒かれ、この世の意識をそっとそらせ、天国への道がさわっと示された明けの明星。
人生で苦労してきた意味が、今の私には理解され、無数の人形が踊り始めた、全人生の記憶の夜明け。
人は星々の塵の言葉を、神様の形状で模写する事により、人体は可能な限り生かされていく。
人形の模写が神様の筆記による芸術作品だとすれば、物思いに我の意識が生きている事を思考し始める。
人形が人形の生き生きとした現象を模写し手形をとり、命の歳月にこの活気に満ちた人形ワンダーランドで、皆よ今夜は踊り明かそう。
歳月が人間を作り、人形を型取り、水月花は宙を舞う。人間は命の言葉に脈動が微かに、宙の御体に水面の揺らめきを伝搬する。
この人形を作り申して、感謝で魂は魂は青く生まれ直し汝は生き返ったのです。
生き返った時の気分はどんな情景ですか。
人形よ。踊れ、時を忘れとにかく生きよう。
私は人形として生まれ変わったのか。
私が生きた音譜の中に、幸せのエスプレッソを感じ、この一つ一つの人形の魂を手に取り、全ての心臓がエキスを伝え、この世は蓮の花で煌めき動き生まれ変わる。
人生でたった一つの事実に、宇宙が生まれ変わった。
生まれたばかりの青空。生まれたばかりの私は、人形に手を指し伸べられた。
ああ、復活する。

山奥深くの人形

山奥深くの人形

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2023-06-06

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